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新世代プロ格闘ゲーマー・竹内ジョンとはいかなる人物か【後編】「プロゲーマーとしての思考法、『ストV』への思い」

格闘ゲーム界の世代交代の先頭を走るひとり、竹内ジョン選手。

前編ではプロになる前の話、ゲームセンターで避けて通れない年上の人とのコミュニケーションの話、19歳で初めて持ったスマホの話などを聞かせてくれて、ようやく人物像がくっきりと見えてきました。

東京で育った20歳とは思えない素朴な一面と、実現までの道のりが見えていない段階でプロを目指す決意をする野心的な面と。

そして後編では、彼の「本業」であるプロゲーマーとしての思考法や『ストリートファイターV アーケードエディション』、そして今後のビジョンについて聞いていこうと思います。


今のラシードは“つむじ風”……でもキャラ変更は考えていない

──ジョンさんといえばラシード、というのはかなり定着してきましたが、ラシードにとって今の環境はどうですか?

ジョン:一瞬強くなったんですけどすぐに調整されて、つむじ風くらいになっちゃいましたね(笑)。なので、まだ今のラシードで何ができるのか、試行錯誤の時間が続くかなという段階です。

──プロになった途端にラシードが弱体化されるなんてひどい、とか思いませんでした?

ジョン:んー、そうでもないですね。今回の調整で弱くなったのは、無条件で画面端を拒否したり、一方的に有利フレームを押し付けるような“誰が使っても強い部分”でした。でも、ラシードっていうキャラの勝ち方というか根っこの部分は残っているので、悪くはないなって。

──キャラ変更は今のところ考えていない、と。

ジョン:キャラ変更も、複数キャラを使うのもあんまり考えてないですね。

──複数キャラを使うプレーヤーも増えていますよね。

ジョン:不利な相手にかぶせるキャラを用意するのはアリなんですけど、プロはやっぱり「魅せる」のも必要だなと思っていて、それには1キャラを詰めていった方がいいのかなって。

前にウメハラさんのインタビューで、「1キャラで攻略を詰めた人の方が最終的には強くなる」と言われていたことがあるんですよ。

──それは説得力があります。

ジョン:あと気になっているのは、お互いかぶせ合いになってふたりともサブキャラの試合になることってあるじゃないですか。「お前が相性で勝とうとするならこっちもやるよ」みたいな。でもそういう試合って内容が浅くなりがちだし、見てる人にも『ストリートファイターV』(以下『ストV』)って浅いゲームなんだなって思われちゃいそうで。

──以前のインタビューでウメハラさんを尊敬していると話されていましたが、ジョンさんにとってウメハラさんのどんなところが特別ですか?

ジョン:多分、あんなにゲームのことを考えている人、いませんよね。格闘ゲームをするために生まれてきた、って言ったら言い過ぎかもしれないけど、そういう人だと思ってます。


──最近は活動の幅も広がっていますよね。

ジョン:ウメハラさんのおかげで格闘ゲーム自体の露出が増えているのは、いちプレーヤーとしてありがたいです。配信とか講演とか。かといってプレイの質が変わったわけでもないし、ほんとすごい人です。

格闘ゲームで勝つためには、経験から来る読みや意識配分が重要

──ウメハラさんもリュウからガイルにキャラ変更したときは相当悩んだみたいなんですが、ジョンさんにとって「こうなったらさすがにラシードきついな」という基準はありますか?

ジョン:勝つことと魅せることは同じくらい大事だと思っているので、ラシードが本当に弱くなったらキャラは変えると思います。シーズン2のアレックスとかリュウとか、1本先取でもほとんど勝ちようがない、みたいな状態になったら厳しいですよね。

──上を見るとキャミィとか豪鬼とか、もう少し勝ちやすそうなキャラもいる中で、ラシードを続行する理由ってどういうものなんですか?

ジョン:それも「魅せる」っていうのとつながってくるんですけど、ひとつ前の調整の時にラシードを使う人が増えましたよね。でもその人たちを見て、自分が2年間使ってきた経験はやっぱり貴重だなって改めて気づきました。

みんなうまいのでもちろん強い人はいたんですけど、やっぱり詰め切れてないぶん浅さがあるというか。自分はラシードなら人と違うことができると思っているので、この経験値は大切にしたいなって。

──格ゲーはやっぱり経験のゲームなんですね。

ジョン:大きいですね。今の日本のトップ選手たちってみんな30代じゃないですか。あの人たちは20年とか格ゲーやってるわけで、自分みたいなひよっこが普通には勝てるわけないというか。なので、今はできるだけ対戦して、トップ選手たちが時間をかけて身につけてきたものを盗んでやろうと思ってます。

──たしかに他のeSportsタイトルと比べても、格ゲーは本当に上の世代が強いですよね。

ジョン:いつもボコられてます(笑)。

──あれって素朴に、なぜだと思います?

ジョン:FPSとかだと純粋な反射神経が必要な場面も多いと思うんですけど、格ゲーは経験からくる読みとか意識配分が大事で、何が来るか予測できていれば反射神経自体はそこまで重要じゃないのかなって。

あとは、試合を組み立てる布石の打ち方がうまいですよね。「この技を出したから次はこうしたいでしょ?」みたいな。経験を重ねれば重ねるほど強くなるゲームです。

──そういう技術って、年上の人は教えてくれたりするんですか?

ジョン:結構教えてくれますよ。対策のしかたとか、練習方法とかは教えてもらうことも多いです。他のことはそうでもなくても、ゲーマーってゲームについてはめっちゃしゃべりたがりなんで(笑)。

純正のデュアルショック4が『ストV』で戦いやすい理由

──そういえば、ジョンさんは日本のベテランにはほとんどいないパッド勢じゃないですか。あれって何か理由があるんですか?

ジョン:最初アケコンを買うお金がなくてパッドでやっていたら慣れちゃって……(笑)。『ストリートファイターIV』のときはゲーセンでやっていたのでアケコンも使えるんですけど、『ストV』はなんというか、パッド向きのゲームだったっていうのもありますね。


──何か特殊なパッドを使っているんですか?

ジョン:PS4純正のデュアルショック4ですね。

──ちなみにパッド向き、というのはどんなところでしょう。

ジョン:まずアケコンは立ち回りの移動の細かい動きがやりやすいのと、『ストIV』のときの“エミリオ”とか“つじ式”みたいな複合入力がしやすいっていうメリットがあるんですよ。

──はい。

ジョン:で、パッドは複合入力はしづらいんですけど、右手の親指1本で4つのボタンを管理できるんですよね。『ストV』はジャンプも速いし、いかに素早く正確にボタンを押せるかが大切なゲーム性になっていて。それがパッドでも戦いやすい理由ですね。

若い世代の人気は必要。でも自分はトップランナーじゃなくていい

──ジョンさんのしゃべりたがりな面がさっそく見られて嬉しいです(笑)。えっと、何の話でしたっけ。

ジョン:経験と年齢、みたいな。

──そうでした。今トップを走っている世代との距離感って、ジョンさん的にはどんな感覚でいるんですか?

ジョン:んー、今まさに測っているところ、って感じですよね。近づいているような気もするし、まだ遠いような気もするし。あといくつか練習方法とか考え方に気づければ、結構いいところまでいけると思うんですけど……。

やっぱり今のトップ選手って、言い方は難しいですけど自分より上の世代が多いじゃないですか(笑)。だから若い人が人気にならないと、っていう気持ちもありますし。

──たしかに、他のゲームと比べても圧倒的に年齢層が高いです(笑)。ジョンさんは世代交代のトップランナーのひとりだと思うんですけど、そういう感覚ってありますか?

ジョン:あんまりないんですよねぇ。若い人が人気になったほうがいいんだろうなとは思うんですけど、それが自分じゃなくてもいいっていうか。若手の誰かに人気者になってもらって、その後をついていこうかなって(笑)。

──同世代に先に行かれるのは気にならない、と。

ジョン:気にならないです。あんまり人気とかそういうタイプじゃないのかなって……。

──そんなふうに思っているとは意外です。でも実感としては、注目されているなっていう感じはあんまりないんですか?

ジョン:北米とかだと割と応援されてるなって感じることはあるんですよ、Twitterのリプライも英語のものが多かったり。人気みたいな部分はまだまだこれからです。
今回のインタビューを行うまで、筆者は格闘ゲーム界の世代交代はいつ起きるのだろうと疑問を抱いていました。世界ではアメリカのPunk選手、NuckleDu選手を筆頭に、20歳前後のプレーヤーがトップレベルに登場している一方、日本ではいまだベテラン勢があまりにも強いからです。

それだけに「あといくつか気づきがあれば」という竹内ジョン選手の発言は新鮮に響きます。

筆者を含めてプロシーンを見ている人の頭の中には、ウメハラ選手やときど選手が築いてきた歴史の記憶が存在します。その記憶が、もし若手選手たちの力を実際よりも小さく見せているとしたら……。そんな想像をさせられる言葉でした。

そしてもうひとつ印象的だったのは、20歳の竹内ジョンは、ゲームの中での勝負に完全に集中し切っているということです。人気とか、存在感とか、お金とか、名誉とか、ほとんど彼の目には入っていないように見えました。本人には「ちゃんと考えてますよ」と反論されそうですが……。

何よりもただ、自分が選んだ『ストリートファイターV』という道で、強い人たちに追いつきたい、勝ちたい、うまくなりたい、という気持ちで頭がいっぱいなのでしょう。

いずれもっと多くのことを考えなければいけない日が来るのだとしても、今は前を走る人たちの背中をまっすぐ追いかけてほしい。そんなことを考えた1時間のインタビューでした。


■関連リンク
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竹内ジョン選手 Twitter
https://twitter.com/john_takeuchi
竹内ジョン選手 公式サイト
https://johntakeuchi.com/