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チームを変えたLillebelt、選手と指導者の違い、そして「次」は?【Rascal Jesterインタビュー・後編】

League of Legends Japan League(LJL)」で唯一の日本人コーチとして、Rascal Jester(以下、RJ)を率いて『League of Legends(LoL)』を戦うLillebelt(リールベルト)コーチへのインタビュー。後編では、プロゲーマーとして、コーチとして、そして今後のキャリアについて、前編に引き続きお話を伺いました。

コーチング技術は本やマンガから学んだ

――ここからはコーチの仕事について聞いてみたいと思うんですが、リールさんにとってコーチって、一言でいうとどんな仕事ですか?

Lillebelt:プレイヤーひとりひとりに常に次のステップを提示しつづけられる人、というのが理想です。遠すぎる目標を設定してもダメだし、かといって現状に留まってもダメ。ちょうどいい距離の目標を順序だてて作ってあげられるといいなと思っています。

――確かに、それをしてもらえたら選手は伸びそうです。選手の時とコーチになってからで、必要な能力ってやっぱり違うものですか?

Lillebelt:選手もコーチも、チームの改善点を見つけるっていう意味では同じ能力が大事だと思います。ただプレイヤーは試合中に即座に修正しないといけませんけど、コーチは時間は使ってもいい分、より正確に、選手が理解しやすい伝え方をする必要がありますよね。

――ということは、選手が自分たちですべてを修正できるならコーチはいらない?

Lillebelt:究極的にはそう思っています。ただ、選手にはエゴもプライドもあって、選手同士という対等な関係での話し合いは絶対うまくいかないんですよね(笑)。自分も選手だったからそういう部分は見てすぐわかるんで、一番最初に調整するポイントです。
写真提供:スイニャン

――コーチングの技術はどうやって勉強したんですか?

Lillebelt:他のスポーツで監督やコーチをしてる人の本を結構探して読みました。あと自分の中で結構大きいのがマンガで、特に「capeta」「GIANT KILLING」「ベイビーステップ」の3つからは、考え方とかの部分で結構影響を受けています。コーチだけじゃなくて、プロゲーマーはみんな読む価値があると思います。

――確かに、マンガの名ゼリフとかって妙に頭に残りますよね。

選手の意識のズレをすり合わせるのもコーチの仕事

――これはぜひお聞きしたかったんですが、『LoL』って情報量も判断の数も多いゲームで、それがうまいということはかなり「頭がいい」ということだと思っているんです。でもじゃあ選手たちが話し合いを上手にできるかと想像すると、どうもそうは思えない(笑)。これってどうしてなんでしょう?

Lillebelt:うーん、難しいところですね。たぶんゲームがうまい人はセンスというか、物事の「ここをどうにかすればなんとかなる」というポイントを見つけるのが速いし正確なんですよ。でも、それが論理的じゃない(笑)。

感覚とか経験でキーとなるポイントは見つけられる、そこへの解決策も見つけられる。だけどロジックで考えてるわけじゃないから、チームメイトに説明できないし、後から再現できないケースが多い。もしかしたら、そこを一緒に言語化してあげるのもコーチの仕事かもしれませんね。

――感覚で見つけてるんですねぇ、かなわないわけです。でも、ということは、コーチが選手の技術や判断力そのものを伸ばすことって難しいんですか?

Lillebelt:練習方法とかチェックシートとか、いま何が足りなくてこうやって練習しようっていう考え方は伝えられますよね。でもそれを実行したり精度を上げるっていう部分は、最終的には本人の能力になっちゃうのかなと思います。

――選手が伸ばしてきた力を、リールさんがチームの理想の形にまとめるわけですね。

Lillebelt:プロになる選手っていうのは技術的には元々うまいんです。だからコーチの一番大切な仕事は、そのポテンシャルは高いけどクセも強い選手たちの意識のズレをなくして、きれいにすり合わせることだと思ってます。まぁこれは、僕も本で読んだ受け売りなんですけど(笑)、本当にそうだなと思って。

――聞いているとリールさんはかなり優しいコーチなのかなと想像しますが、実際はどうでしょう?

Lillebelt:これも昔自分が習った韓国人コーチから学んだことなんですけど、練習中とオフでは意識的に接し方を変えています。練習の時間はきっちりコーチとして振舞って、それが終わったらフレンドリーに。
まぁ当時のコーチはみっちり練習した直後に「一緒にゲームしようよ」とか言ってくる人で、選手がそれを拒否するわけにもいかないんで大変だったんですけどね(笑)。でも今も仲良くさせてもらってるし関係性は悪くなかったと思うので、その方法は参考にしています。


――リールさんとRJの選手たちは、いま年齢的にはどのくらい違うんですか?

Lillebelt:2人の韓国人は5歳くらい違うんですが、実はMeronとalleycatは僕より歳上なんですよ。

――それはなかなか複雑ですね。年上の選手を教えるやりづらさ、みたいなものはありませんでしたか?

Lillebelt:2人ともキャリアのある選手ですし、最初はやっぱり気になったんですけど、alleycatが率先して僕のことをコーチとして扱ってくれて、それを見た他のメンバーとも「選手とコーチ」の関係性を作ることができました。alleycatはオブラートをお母さんのおなかの中に忘れてきたヤツで、物言いがキツイ瞬間もあるんですけど(笑)、本当にそういう気が利く選手なんですよ。

最大の目標は「日本から世界で活躍するチームを出すこと」

――チームの形もできて、今シーズンのRJも急速に成長しているように見えます。いまはどんなステップを目指しているか、言える範囲でいいので教えてもらえますか。

Lillebelt:いまだと、選手のクリエイティビティというのが課題の一つです。たとえば動画を見たり誰かにやられたり、きっかけはなんでもいいんですけど、何か有効なプレイが見つかったとするじゃないですか。その真似はできるんです。でも「そのプレーがどうして有効なのか」という本質の部分まで理解していないと、他の場面で応用が利かない。そうやってプレーの本質を掘り下げてとっさのクリエイティビティを上げるのがうちのチームの課題です。

――それが達成された瞬間は気持ちよさそうですね。

Lillebelt:やっぱりコーチをやっていて楽しいのは、選手の成長を実感した瞬間ですよね。いまのチームでいえばWyverNとか、BotレーンコンビのNoaとYukiも、大きなステップを1個クリアしたなっていう瞬間があったんですよ。しかもそういう時は大体いいサイクルが回っているので、トントンと2、3段上がれちゃったりして。

――クセになりそうです(笑)。リールさんがコーチという仕事を楽しんでいること、やることが無限にあるというやりがいが伝わってきます 。でもだからこそお聞きしたいのですが、リールさんにとってコーチという仕事は「一生の仕事」ですか?

Lillebelt:結論から言うと、実は一生の仕事だとは思ってないんですよ。僕の一番大きな目標は「日本から世界で活躍するチームを出すこと」なんですよね。選手の時はもちろん、自分のチームがそうなること、でも指導者がいないと成功しないと思ってコーチになりました。今はようやく全チームにコーチが揃って、ここから確実にリーグとしての基礎力が上がってくる、という段階です。

そしたら次は何かっていうと、下の世代の選手たちじゃないですか。若い選手がいまいる選手を突き上げて競争が激しくなれば、確実にまた一段レベルが上がると思うんです。そのユース組織みたいなところをやりたいっていう気持ちは選手の頃からずっと思っていました。いまはRJも自分もまだそんなことができる段階ではないですけど、将来的にはそういう気持ちがあります。
 

『LoL』の日本人プロ第1世代から真っ先に指導者になり、いまもシーンの先頭を走っているLillbeltコーチ。『LoL』との出会いから始まった話は、「コーチの後」までたどり着いたところで終わりました。

元トップ選手だったLillebeltがコーチとしてチームを率いているという状況は、ファンにしてみればすでに結構グッとくる事態なわけですが、今後もしかすると「Lillebeltさんが育てた選手」が競技シーンに登場する可能性がある、ということです。

そして2017年、Lillebeltコーチが就任してからのRJの激変ぶりを見れば、その教育者としての能力はすでに実証済みと言えます。

その夢が実現すると、Lillebeltコーチを表舞台で見られなくなるのは寂しいことですが、彼が送り出した選手が世界大会に出るようになったら……と想像したら最高にテンションが上がりませんか?

とはいえ、まだまだしばらくはRJのコーチとして見る人を楽しませてくれるはずです。その両方を楽しみに、リールさんをこれからも追いかけさせてもらおうと思います。


■関連リンク
Rascal Jester
http://rascaljester.com/
Rascal Jester Lillebelt プロフィール
http://rascaljester.com/teams/lillebelt/
League of Legends
https://jp.leagueoflegends.com/ja/
League of Legends Japan League(LJL)
https://jp.lolesports.com/