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RIZeSTの縁の下の力持ち、現場スタッフから見たeSportsシーンとは <後編>ーeSportsを支える人々ー

ゲーマーたちのコミュニティスペースである「e-sports SQUARE」が千葉県・市川市から秋葉原に場所を移して「e-sports SQUARE AKIHABARA」となったのは2014年1月のことだ。進出によって「集まる」「遊ぶ」という要素に「食べる(飲む)」という文化が加わったことや、秋葉原という立地によってイベントスペースとしての規模がさらに拡大した。

また、イベントの持ち込み企画に対してはレンタル代の回収を見越した宣伝やお客さんへのアピール、そして誰もが楽しめるように当日の進行や演出を店とスタッフが全面的にバックアップする「イベント制作支援」は、コミュニティとプレイヤーを尊重する「RIZeST(ライゼスト)」らしい試みといえるだろう。

「RIZeST」の古澤明仁社長は今後のビジョンとして、「eSportsの認知」「スタープレイヤーの輩出と大会・放送を裏で支える現場スタッフの拡充と育成」「eSportsの世界でご飯を食べていけるという道作り」を挙げていたが、現場に立ってeSportsに関わるスタッフたちはどんな経験をし、そしてどのような目標をそれぞれが持っているのだろうか? 「e-sports SQUARE AKIHABARA」の店長を務める高橋晃平氏と、ゲームカメラマンを担当するスタッフとして活躍する橘氏にお話を伺った。

コミュニティがやりたいことを具現化させるために

もともとは渋谷にあるライブハウスの店長をしていたという高橋氏が「e-sports SQUARE AKIHABARA」に移ったきっかけは、広告代理店のSANKOにてeSports事業に携わっていたフランス人の友人からの「イベントに対する情熱でeSports業界に貢献してほしい」という申し出だった。音楽であれeSportsであれ、小さいころからエンタメ業界に憧れていた高橋氏は、「人を喜ばせるものの素晴らしさ」を誰よりも大事にしているが、音楽ファンとゲーマーでの共通項をお店で感じたという。


「e-sports SQUARE AKIHABARAに入って面白いなと気付かされたのは、配信に映っている演者や選手の方に視聴者さんが飲食をおごるシステム(通称・おごられくん)ですね。
ライブハウスで働いていたときは『店長も飲めよ』と一杯おごっていただくこともあったので、プロプレイヤーへの憧れや頑張っている演者に対する労いと同じなんだなと思いました。音楽ファンであれゲーマーであれ、その形がちょっと違うというだけで、根っこの部分は共通するものを感じましたね」

飲食店としても機能していることから、「e-sports SQUARE AKIHABARA」は「ホットペッパーグルメ」にも掲載されている。ゲームを熱中して遊んでいると二の次になりがちな「食べる」ことの大事さをアピールすることも、お店としては大事な役割であると高橋氏は話す。

「友達と交わすお酒の楽しさや美味しいものを食べたときの満足度を得られるスペースにするというのが、我々の目指すビジョンですね。唐揚げやフライドポテトといった一般的なホットスナックが人気ですが、私は唐揚げ丼をおすすめ商品としておりますので、お越しの際はぜひともご賞味ください(笑)。
イベントに合わせたオリジナルメニューをご用意することも可能で、『鉄拳7』の家庭用がリリースされたときにコラボレーションカフェをやらせていただいたのですが、そのときは「鉄拳ラテ」やキャラクターをイメージしたメニューを創作いたしました」

移転直後は市川時代と同じく韓国式のPCバンのようなスペースとシステムを提供していたのだが、コミュニティの拡充によって平日のイベントが増えたという。また、企業による発表会や先行体験会などイベントスペースとしての役割も果たすようになっているが、ゲーマーたちの受け皿であるという根の部分は変わらないという。

「サラリーマンや学生の方が帰りに寄って遊べるスペース、かつイベントで特別感を出せるのが当店の強みですので、これからもいろんなコミュニティを支援していきたいですね。毎週水曜日に『ストリートファイターV』の定例大会として開催されている「Fighter's Crossover -AKIBA-」はまさにコミュニティのあるべき姿だと思います。対戦格闘ゲーム以外にもFPSMMOMOBAのコミュニティにも多くご利用いただいておりますね」

マイナータイトルであっても高い熱量を持つファンや、有名タイトルであっても自分が何かしらの応援をしたいというプレイヤーがイベントを企画するのは容易なことではないが、eSportsのさらなる発展のために「e-sports SQUARE AKIHABARA」は「イベント制作支援」というプランも用意している。その手応えはどのようなものなのだろうか。

「企画を持ち込んでくださるお客さまも多くいらっしゃるのですが、正直な話を申しますとタイトルによっては収益的に見てかなり厳しいものも中にはあるんですよね。ただ、お客さまから相当なゲーム愛が伝わってくると、私もやるしかないと判断すること多いです(笑)。
結果論にはなってしまいますが、収益目標も無事にクリアしているんですよ。
そういったドラマチックなイベントもあったりするのが面白いところですね。eSportsへの関わり方として、プロプレイヤーやオーガナイザーではないけど何か自分にできることがあるのかもしれないという若者たちの夢や情熱を、ぶつける場所でありたいです。もちろん、若い人だけじゃなくてもいいですけどね(笑)」


イベントを企画した場合、スペース側が利益を得るためにノルマを課すのが通例だが、この「イベント制作支援」は収益目標に達成しなくても差分を支払う必要はないという。若いプレイヤーやコミュニティからすると、これほど心強いものはないだろう。しかし、どんな持ち込み企画でも採用されるわけでなく、高橋氏による審査が必要という。

「当店もスタッフのアサインや電気代などを賄わなければならないので、売上が一円も立たないイベントというのはどうしてもできないんです。なので、最低限のラインとしての審査をさせていただいたうえで、それをクリアしてくださったお客さまにはイベント当日に思う存分楽しんでいただくというのを心がけています。去年は10名近くを審査しまして、そのうちで企画を達成したのは8名ですね。
イベントをやりたいと思ってくださる方はご自身でハードルを高く設定されているようで、かなり綿密に計画を練られている方も多いんです。となると、審査をするまでもなく、これだけ資料をご用意いただけたのであれば大丈夫ということもあったりしましたね」

ときには、イベントの企画や運営についてのノウハウがまったくないお客さんからの持ち込みもあるという。それに対して高橋氏は決して無下にはせず、オーガナイザーの先輩として一緒に企画を考えて練り上げるという後進育成への協力も惜しまない。これらを踏まえ、eSportsがこれから盛り上がりを見せていく中で「e-sports SQUARE AKIHABARA」はどういったスタンスを貫くのだろうか?

「イベント制作支援プロジェクトで、いろんなゲームタイトルのオーガナイザーが生まれてほしいというのがひとつありますね。eSportsに関係するタイトルはかなり限られている状況だとは思いますが、eSportsにはタイムアタックも含まれているように、定義化せずとも熱狂や競技性があればeSportsになり得ると思っていますので、お客さんを楽しませて喜びを与えたいという人が増えてくれればいいなと思っています。
そうやって、当店を知らない人たちでも『eSportsってこういうことなんだ』と気づいて楽しんでくれる世界が訪れるといいなと願っています」

ゲームのすべてを知るゲーム内カメラマンという仕事

続いてご紹介するのは、現在「東京アニメ・声優専門学校」に通いながら「e-sports SQUARE AKIHABARA」のスタッフを兼任し、さらにはRIZeSTが運営する大会にて放送用のゲーム内カメラマンを担当している橘氏だ。


もともと『LoL』が大好きということで、League of Legends Japan League (以下、LJL)の配信も欠かさずに見ていたという橘氏がeSports業界に憧れを持ったきっかけは、秋葉原のUDXで開催された「LJL 2015 Summer Split」の最終戦を観客で体験したことに感動し、eSportsの現場に裏方として関わってシーンを盛り上げたいと思ったことを発端としている。

その後、SANKOの鈴木社長が専門学校に講師として来られた際に「LJLに興味がある」と直談判したことによって、インターンという形で大会の様子を現場で見学。そこから「e-sports SQUARE AKIHABARA」でのアルバイトを申し出た橘氏が、初めて大会の現場に関わったのは去年のことだ。

「最初はeSports大会のハイライト担当としてアサインされました。ここは使えるかもしれないという場面のリスト化と優先順位を付け、決められた尺や曲の盛り上がりに合わせてシーンを入れるのが主な仕事です。ここでハイライトを3、4週ほど担当したのちゲーム内カメラマンになりました。カメラマンの経験はなかったのですが、国内外のeSports大会シーンをずっと見てきたので、もうちょっとこういうところを映せないのかなとか、こういう映し方がいいなど、一視聴者として持っていた感想を活かしました」

ゲーム内カメラマンの目線として、ここに注目すれば試合をさらに面白く観戦できるといったポイントがあるのかを伺ったところ、橘氏は「やはりチームの狙いが決まった瞬間と外れた瞬間ですね」と醍醐味を話す。eSportsを始めたての初心者プレイヤーへの配慮として、見るだけではなく聞くことの重要性も述べた。

「各チームの狙いについては必ず実況と解説をしてくださるので、ただぼーっと見るだけではなく実況・解説が巧みな話術で紡ぎ出す戦況を聞いていただくことも必要です。僕らもゲーム内カメラマンとしてチームの狙いがわかっているので、それが視聴者の方にもわかるようなカメラワークを重点的に映すようにしています」

橘氏はMOBA以外にFPSのゲームカメラマンを行っているのだが、ジャンルの違いは見せ方にも工夫や考え方があるという。

MOBAの場合は試合に緩急があるのですが、FPSになるとずっと気が抜けないんですよ(笑)。なおかつプレイ人数も多いですし、展開の速さが段違いですし、マップも広く、かつ立体的じゃないですか。高さという概念もあるので、ゲームカメラとしてもどこから撮ればいいのかっていうことは考えますね。
最近は『PUBG』の大会を見ているのですが、決定的なシーンを撮るのはすごく難しいと思います。広いフィールドに100人が放り出されるので、どこで戦いが起きるのか常にアンテナを張り巡らせる必要があります。マップを見て判断して、こことここのチームが近いから当たるんじゃないかって思っていたら、違うところで当たっていたりするので(笑)。単純にこうすればいいじゃんって思っているものが反映できるかというと、それもまた難しいんだろうなと感じています」

大会をより面白く、よりカッコよく見せるために「観戦モード」の搭載が必要になることは前編でも古澤社長が仰っていたが、ゲーム内カメラマンという直接的な立場にいる橘氏もその必要性と利便性が大事であることを述べる。

「どんどん増えてほしいというのが本心ですね。『PUBG』のリプレイモードはいろんな機能が充実していて、たとえばこの角度でこの場所を映しておこうっていうのを保存しておくと、別の場所を映していてもボタンひとつで戻ってこれるんです。そういうのがオブザーバーにとっては優しいですね(笑)」


eSportsの盛り上がりとしてはプロプレイヤーや賞金ばかりに話が行きがちだが、橘氏と同じく裏方の現場スタッフとしてeSportsの関わりたいという人に向けて一言をいただいた。

「プレイしているゲームの裏方を目指そうとしたときに、お客さんとしてイベントや大会を見た経験というのは裏方に回ったときに役立つものです。ここをこうしてほしかった、あの映し方がカッコよくて感動した、という思いは自分のものにしていけるんです。なので、現場に携わるのを目標としている方にはそれを忘れないでほしいですね。必ず糧になります。
ただ、一度でも裏方を経験してしまうと、一視聴者として他の大会配信を見て不満点を感じたときに、『こうできなかったのは何か事情があったんだろうな』ってなんとなくわかってしまう、一種の職業病みたいなものは感じてしまいますね(笑)」

実際に大会運営を取材してみた

最後に、普段では見ることができない大会の現場から、カメラルームを含めた舞台裏をご紹介しよう。このとある大会は2月にRIZeSTが運営サポートし、都内だけではなく地方の複数会場でも実施されたもので、プレイヤー間の環境差をできるだけフェアにすることと同時にチートを未然に防ぐため、スタッフも各地に派遣するほどの大規模なものとなった。



▲放送スタジオ別室のサブルーム。放送の裏側を支えるスタッフは15名以上にも及ぶ。ゲーム内カメラマンはひとりあたり2台のモニタを使用して、それぞれの役割を分担している。銃撃戦がはじまれば、撃っている側と撃たれている側のそれぞれにカメラを配置し、どっちが映されてもいいように前もって準備をするという。今回ご紹介した橘氏も画面右奥にて仕事をこなしているのがご覧いただけるだろう

▲ずっと立ったまま各ゲームカメラマンに指示を出すのはゲーム内カメラディレクターの役目だ。「2番大丈夫です」「つぎ3番!」「3番、オーケーです」と、各カメラマンが担当しているシーンをどのように映し出すかを瞬時に判断しながらやりとりがずっと続けられる。いいシーンが出ると「ナイス!」と互いに盛り上がる光景は、ゲームと同じようなチームワークの一体感を感じずにはいられない

▲ゲーム内カメラディレクターと意思疎通しながら、スイッチャーが実際に映し出す画面を切り替えていく。分割された画面から目を話すことなく、的確にシーンを視聴者に届けているちなみにゲーム内カメラマン全員がゲームのプレイヤーであるのでゲームの理解が深く、どういうシーンを視聴者が見たがっているかをしっかりと理解している。また、事前に繰り返しシミュレーションと練習をしており、着実かつ綿密な下地があるからこそ我々が大会の配信を見て熱狂することができるのだろう

▲こちらは会場の片隅にはある実況・解説席。プレイヤーひとりひとりの画面を見ながら実況と解説を行うことは不可能なため、サブルームで切り替えられた映像を見ながら、視聴者にわかりやすい試合展開を的確にコメントしていく。各試合のハイライトが上がるまではトークで場をつなぐポイントは、まさに“あうんの呼吸”が取れている証だ

■関連リンク
RIZeST公式サイト
http://www.rizestinc.com/
「e-sports SQUARE AKIHABARA」公式サイト
http://e-sports-square.com/