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『BomberCrew』なぜB-17ではなくランカスターなのか、「マジックナンバー7」の真の意味を十二分に生かしたゲーム【インディーゲームレビュー 第26回】

人間は短期的に7桁の数字を認識できるという「マジックナンバー7」。しかし、実際には多すぎるとして否定されている。この問題を逆手に取ったゲームが、英爆撃機が主役の『BomberCrew』だ。ゲームを子細にプレイするうちに、制作陣が「7」にこだわった理由が見えてくる。

「7」は人間が直感的に認識するには多すぎる

「マジックナンバー7±2」という有名な誤解がある。アメリカの認知心理学者ジョージ・ミラーが1956年に提唱したもので、人間は短期的に7個くらいの情報を記憶できるというものだ。しかし、ミラー自身も論文中で「7±2」という数字に疑問を示していた。実際、この数字は2001年にネルソン・コーワンによって否定され、今は「4±1」が定説となっている。早い話が「7」という数字は、人間がパッと認識するには多すぎるのだ(実際に7桁の郵便番号は数字が多すぎて記憶しづらい)。

もっとも、だからこそゲームに応用することで、ユニークな体験が生まれることもある。第二次世界大戦が舞台の『BomberCrew』は好例だ。プレイヤーは英空軍の爆撃機、アブロ ランカスターのクルー7名を管理し、敵基地の偵察から戦略爆撃まで、多彩な任務に挑戦していく。7名というクルーは史実どおりで、ゲームで扱うには若干多く、操作に混乱しがちであることが、逆におもしろさを生む源泉になっているのだ。英語版のみだが、比較的シンプルな内容なので、ゲーム好きなら十分に楽しめるだろう。

ゲームの流れ(1) クルーの選定から出撃まで
搭乗員を選定するところからゲームはスタートする

搭乗員の装備もアップグレードできる。装備を強化すれば生存率が向上する

機体は装備をアップグレードするだけでなく、ペインティングもできる

ミッションを選んで出撃。チャリオット作戦やオーバーロード作戦(ノルマンディー上陸作戦)など、史実をモデルにしたミッションもある

ゲームメカニクスは過去のレビューで紹介した『FTL: Faster Than Light』と同じ、RPGとRTSの融合系だ。プレイヤーは個々の任務を繰り返しながらクルーの育成を機体の強化を繰り返しつつ、より困難な任務に挑戦していく。各々の任務は目的地に接近し、爆撃を敢行し、基地に帰投する過程で、敵機と遭遇し、戦闘を行うという繰り返しで進行する。そして、その過程で発生するさまざまなイベントやトラブルに対して、的確に指示を行いながら、対応していくことになる。

本作の最大の特徴は、プレイヤーが直接機体を操作せず、各々のクルーに役割に応じた指示を与えることで、間接的に任務をこなしていくことだ。機体の進路を変える場合も、航法士を選択し、画面上のナビゲートマーカーを選択すれば、パイロットが自動的に進路を変えるスタイルをとる。迎撃時も敵機にタグをつければ、機銃手が自動的に迎撃してくれるといった具合だ。ただし爆弾投下だけはプレイヤーが直接行う。そのため爆撃手はプレイヤーにとって、もっとも身近な存在かもしれない。

一方でフライト中にはさまざまな問題が発生する。敵機による攻撃で機体が破損したり、機銃座が弾切れを起こしたり、クルーが負傷して応急手当が必要になったりといった具合だ。これらの対応は自動化されず、プレイヤーが一つずつ指示を与えてやる必要がある。各々のクルーはショートカットキーで選択できるが、パッと見には見分けがつきにくい。実際、慣れないうちは混乱しがちで、クルーの人数も5人くらいが適切ではないかと思えてくる。ここに本作の絶妙なゲームバランスがある。

ゲームの流れ(2) 爆撃目標にアプローチ
ナビゲーションマーカーに沿ってフライトしなければ生還はおぼつかないため、途中で不時着することになる

メッサーシュミットと交戦。敵機にタグをつければ自動的に攻撃してくれるが、弾切れの際には手動で再装填する必要がある

ゲームに慣れていっても、この状況は変わらない。プレイヤーがゲーム中に取り得る選択肢が増えていくからだ。クルーが成長することで得られる特殊スキルが相当し、「照準」「不時着」「応急手当」「友軍機による支援」など役割ごとに様々で、プレイヤーが任意のタイミングで発動させる必要がある。キャンペーン後半では、このスキルがなければ任務成功がおぼつかない。そのため状況を適切に判断し、リソースを振り分けて事態に対応するかという、RTSのおもしろさがクローズアップされていくのだ。

実際に本作では「敵機の襲来を受けているが、爆撃コースに乗っているため、手が離せない」といったジレンマが頻繁に発生する。映画『メンフィス・ベル』の世界だ。それだけに爆弾を落下して、みごと命中させた時の爽快感は、他に類を見ないものがある。また単に攻撃するだけでなく、無事に基地に帰還するまでがミッションだ。敵機はイギリス本土まで執拗に追いかけてくるので、最後まで緊張が持続する点もゲームならではのおもしろさだ。

ゲームの流れ(3) 爆弾投下、そしてボロボロになりながら帰還
爆撃目標にコースをあわせた状態。照準器をのぞきながら目測で爆弾を落下させる

敵戦闘機の襲撃を受けてボロボロの機体。エンジニアが機外に出て、左翼の上で修理している点に注意。こういったゲーム的な演出もある

出撃の度に搭乗員は経験値を貯めてレベルアップしていく。新たなスキルも習得していくので、生存率を高めることが重要だ

ただし、複数の野菜を煮込むとあくが出るように、本作にもストレスがある。パイロットと航法士の役割分担だ。本作では航法士が低レベルのうちは、飛行経路が自由に設定できず、燃料切れで墜落しやすい。任務中に航法士が戦死すると万事休すだ。その一方でパイロットが自由に機体を操れると、航法士の存在意義が低下する。そこはわかるのだが、序盤の遊びやすさにも繋がるため、何らかの回避策があっても良かっただろう。裏を返すとツッコミどころはその程度で、総じて良作に仕上がっている。

ちなみに本作のクルー構成は史実とは若干異なる。本作では「パイロット」「航法士」「機関士」「無線士」「爆撃手兼機首銃手」「背部兼腹部銃手」「尾部銃手」で構成されるが、実際は爆撃手が独立し、無線士が機首銃手を兼ねていた。また実機の銃座は機首・背部・尾部のみで、腹部には存在しない(低空からの攻撃に対応するため、あえて加えたのだと思われる)。このように本作にはゲームならではの誇張がある。

きわめつけは、ゲームのような昼間爆撃は爆弾の搭載量に劣るが、高速で防御性能に勝り、高性能な照準器も搭載した米軍機のB-17が担当していたことだ。これに対してランカスターが夜間爆撃が中心だった。ただし、B-17の搭乗員数は9名で、ゲームで再現するには少々多すぎる。開発が英Runner Duck Gamesで、英空軍びいきという点を差し引いても、本作では7名というクルーにこだわったのではないか……そう思えるのだ。


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◆関連リンク
【おすすめDLゲーム】見た目はポップでゲームはガチのSLG『Bomber Crew』をレビュー。入門ガイド付き
http://dengekionline.com/elem/000/001/616/1616782/
『BomberCrew』公式サイト
http://bombercrewgame.com/
Steam『BomberCrew』のページ
http://store.steampowered.com/app/537800/Bomber_Crew/


【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー