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「プロゲーミングチームを企業が持つって、どういうこと?」中学生がRush Gamingオーナーに話を聴く

左が西谷麗氏、右が山渕君

年を追うごとに日本でも大きく盛り上がりを見せるeSports。興味を持つキッカケはさまざまだが、東京の進学校に在籍する中学生の山渕君の場合は、動画配信などを通じて『コール オブ デューティ』(以下、『CoD』)シリーズのプロチーム、Rush Gamingに興味を持った。さっそくRush Gamingのオーナー、Wekidsの西谷麗氏にコンタクトを取り、学校の課題も兼ねて対談を申し入れたのだという。

今回、ALIENWARE ZONE編集部として対談に同席させていただくことができたので、そのときの模様をお届けする。

(対談収録日:2018年1月某日。東京・秋葉原のALIENWARE STORE AKIBAにて)



山渕君(以下、山渕): WekidsとGreedZz選手との出会いについて教えてください。

西谷麗氏(以下、西谷): GreedZz選手とは約1年半前、彼が大学3年生のときに出会いました。ゲームイベントなどを運営する仲の良い会社さんがあるのですが、その会社に勤めている友人が、GreedZz選手の兄貴分だったんです。その友人は『Halo』のプレイヤーとして国内でとても有名で、ご本人もオーストラリアにてチームとスポンサー契約をしたことがあるすごいプレイヤーでした。


その方が引退後、ゲームイベント等を運営している会社に勤めることになり、そこへ大学3年生だったGreedZz選手が「就職を考えているのでお話を聞かせて下さい」と先にそちらの会社を訪ねたんです。しかし、そこの社長に「Wekidsという女社長がやっている会社があるからそちらへ行ったら?」と勧められ、ある日私のTwitterのダイレクトメッセージにその社長から「GreedZzっていうゲーマーが行くからよろしく」と、メッセージとともにTwitterとYouTubeのリンクが送られてきました(笑)。
とりあえずまず動画を見たんですが、その視聴数にすごいなと驚きました。当時は『CoD』を知りませんでしたが、こんなに人気のゲームがあるのか、と興味を持ちました。


山渕: Rush Gamingを設立しようと思ったのは?

西谷:彼と出会ってから1年以上経った後ですね。出会ったその日はまだ、「なんかこの子面白いなぁ、興味あるなぁ」と思っただけだったのですが、とりあえず本人もインターンとして働いてみたいとのことだったので、「一緒に働いてみる?」と。私はゲームを知らなかったので彼のすごさがよくわからなかったんですけれど、彼に入ってもらって『CoD :Black Ops III』がどういうゲームか教えてもらいました。それからすぐにアジア大会があったんですね。その試合映像はリアルタイムで見てたんですが、信じられないくらいとても熱くなれて、「やべー! これはすごすぎる!」みたいになり(笑)。

「うちでバイトさせてる場合じゃない!」ということでGreedZz選手を個人的にスポンサードすることになりました。

スポンサードについては、あくまで「『CoD』を競技的にやる選手として、個人的にWekidsが後援をします」という形にしました。逆に言えば「アルバイトをしなくても、アルバイトするくらいのお金をバックアップしてあげます」ということです。その代わり私たちが思う、「企業の後援を受けるべき人間」のちゃんとしたゲーマーとして、今後もYouTubeもやってほしいし、Twitterでの発言も全部含めて皆に夢を語れるような活動をしてねと。もちろん本人は、今までもずっとやっていることだからすごく自然に続けていました。そして1年はGreedZz選手だけを支援しつづけました。


当然、Rush CLANのeSports部門はGreedZz選手がやっているチームですし、ちゃんと調べたりもしていました。私、実はすさまじくいろいろ調べるんですよ。バレないように、GreedZz選手以外のメンバーのTwitterから動画、生放送まで見られるものは長い時間をかけてウォッチしてますし、交流戦での会話内容もめちゃくちゃ聞いていました。しかし、本当にチームとして契約をしようと、本気で一緒になにごとかを成し遂げようと思ったのは、CyACのオフライン大会と東京ゲームショウ(TGS)2017の後です。

私の中で一回検討フェーズに入ったタイミングで、「このチームを本当にバックアップしてあげるべきか」、「私が本当にバックアップしたいのか」、「この子たちとともに歩むのが私の会社として良いことなのかどうか」という判断をするためにTGS 2017へ行きました。


TGSでは、1日目はホテルが用意されているのですが、当然ながら帰りというか解散の日にはない。うちは遠方の人も多かったので、TGS最終日には宿泊施設を借り、打ち上げも私が全部やってあげて、一緒に時間を過ごしたんです。

面接ではないですが、本当にこの人たちが好きかなとか、この人たちに将来はあるかなとか一緒にいていろいろ考えていました。未来がなかったら、下手に期待を持たせるのは良くないと思ったからです。当たり前だけどテニスやボクシングなどの世界は皆厳しいのがわかっていますが、ゲームの世界も厳しいので。

余談ですが、打ち上げが終わった後に、膝が悪くて歩けなくなってしまったNgt選手をチームみんなで交代でおんぶしながら宿泊先に運んだんです。30メートルくらいで交代しあって。そのときもずっと、このことを考えてました。この子たちの人生に、覚悟を持てるかな、って。

家に帰ってしばらく考えて、他のやり方もいろいろ検討したのですが、結論として「このチームだったらやりきりたい!」と決心できたので、Rush Gaming by Wekidsを新たに設立し、活動をともにすることにしたんです。

山渕: ゲームは好きな人が多いぶん、本気で職業にまでしてやる人って難しいですよね。その中でゲームをスポンサードする会社を立ち上げようとした理由はなんですか?

西谷: それで言えば、スポンサーをする会社にしたいから起業したわけではないんですけどね。起業したキッカケは、当時前の会社に一緒にいた仲間と、「自分たちなら社会に役立つ何かをできるんじゃない?」と。ロックバンドみたいな理由から始めたんです。


親が元々起業家であるため、子供のころからずっと雇われ人でいる気がなく、辞めることは既定路線でしたね。もともと「こいつと一緒にやりたい」という仲間が見つかったら、会社を辞めて起業しようと思っていました。他には、当時働いていた会社に学ぶことはもうなくなったし、その会社で本当に恩がある人たちがそれぞれ独立していって前の会社に残る理由が全部なくなり、条件が全部揃ってたので、気持ちよくスパッとやめました。


私、とにかく「才能」が大好きなんですよ。「すげーこいつ!」みたいな、すごい才能が活躍できるというか、才能が開花することに関わる仕事がしたいな、と漠然と思っていたのです。漠然としていますが、資金を稼がないと我々は死んでしまいます。元々外資系のゲーム会社で、プロデューサーとかデータアナリスト(ゲーム内のユーザー行動分析やゲームバランス分析、設計)とかをしていたので、起業してからその経験を活用していろんな仕事をやっていたんです。

あるとき、とあるゲームがうまい人と、それと類似のゲームのゲームバランスやプロモーションのお仕事をしたんですが、経験したことのない価値を感じたんです。これは突き詰めたら素晴らしい価値を生む働き方、仕事になるなって。

そしてその文脈の中で、このゲームというものに並々ならぬ能力を持った人たちが評価される社会にするためには、この働き方、仕事を確立させたい、という気持ちと、同時にアスリートとしての側面を持つ競技的な世界があるということを、GreedZz選手との出会いや、様々な出会いから学び、元々子供の頃からアスリートのスポンサーになることがひとつの目標だったので、スポンサーになろう、と思ったんです。

ちなみにGreedZz選手の他にも、NAGON選手という『ハースストーン』がうまい人が4月に新卒社員として入ってくるんですけれど、彼もすごく頭がいいんですよ。小学生のころにオセロ日本1位になってたりするボードゲームや戦略ゲームの申し子みたいな子で、いまから彼の入社が本当に楽しみです。Wekidsのゲーム分析部門の強化に本腰が入れられるので。


山渕: 今度、自分の学校でeSportsのオリンピック導入の是非についてディベートがあるのですけれど、eSportsがオリンピック種目になるべきか否かについてはどうでしょうか?

西谷: 私としては、とてもひねくれたことを言うと、そもそも「eSportsがオリンピック種目になるべきですか?」という質問自体はあんまりピンときません。私自身はeSportsという言葉自体に若干の拒否感を持っていて、嫌いではないものの、なんだか変な使われ方をしているなと思っています。

たとえば『CoD』と『ストリートファイター』の話では全然違いますし、この人は『CoD』の話をしているのか、それとも『ストリートファイター』の話をしているのか、もしくは『リーグ・オブ・レジェンド』の話をしているのかわからないじゃないですか。eSportsっていっても競技によってぜんぜん違うものだし。


まあ、それはそれとして、オリンピック競技の是非については……そうですね、Twitterとかでよく見るリプライの飛ばし合いを見ると、FPSや人を撃つタイプのゲームはおそらくオリンピック種目にならないと思うんですよ。これについては、「仕方がないんじゃない?」と思ったりはします。

『リーグ・オブ・レジェンド』がオリンピック種目になったとして、日本代表が決まるのは面白いことが起きるかもしれないし、なったことがないからわからない。だから「いいんじゃない?」と思いますし、見てみたい気持ちもあります。

FPS側からすると、実は我々のメンバーにも「オリンピックに出たい?」と聞いたことあるんですけれど、皆口をそろえて「とくに……」と。オリンピックがあるからやりたいわけではないし、そもそもオリンピックがどうとか賞金が出るか出ないかを気にしてやっているわけじゃないので。


プロはいろんな意味で厳しいです。勝者は一人、ないしは1チームしかいないし、それを常に争い続けることって、サラリーマンとしてそこそこの承認欲求を得るより1000倍くらい大変。倍率に変えられないくらいに大変だと思う。負けたら負けたで自尊心を傷つけられるわけだけど嫌でも毎日やんなきゃいけない。すごく大変な世界なのにそれでもやる。とくにRushの人たちって、我々がスポンサードを行うまえからガチで毎日6時間以上練習して、さらに発信活動もしているんですよ。

それってありえないくらいすごいことで、皆「ゲームだからできるでしょ」と思うかもしれないですけれど、全然そんなことはなくて。よく皆「俺たち勝利を目指して頑張ります」とか言うんですけれど、よく休むし、遅刻するし、辞めるし、解散するし、暴言も吐くし、全然自覚ないというか、しょうがないんですよね。企業スポンサーが付いていなかったら「俺たち仲間内で集まっているだけだもん」みたいなそういう言い訳が許される世界なんですよ。スポンサーが付いている人でさえそういう人がいっぱいいるし。


それでもRushって、1年間GreedZz選手を通して見ていたんですけれど、後ろに組織が何もついていないのに、本当に皆毎日負けようが何しようがずーっと必ず練習時間をとっていて、なおかつYouTubeの投稿も「俺たち、ちゃんと発信していかないと、いつまでたってもこのシーンが発展していかないから、俺たちだけでもがんばろう」と皆毎日撮っているんです。しかも一定のクオリティに満たなかったら取り下げちゃうから、とにかく時間がかかる。毎日は出ないにせよ、毎日出そうという気合で、それくらい死ぬ気でやっています。

長くなりましたが、オリンピックになるかどうかは、少なくともうちの選手は何とも思っていないと思います。強いて言うなら、オリンピックになったらなったらで興味を持ってくれる人もきっと増えると思うし、私はいいこともあるんじゃないかなと思います。

山渕: オリンピック種目になるデメリットってなかなか思いつかないですよね。

西谷: 強いて言うなら、今でもすでに「プロゲーマーになったらゲームだけしてお金をもらえるらしい」みたいに思う人が結構いて、それを利用して騙してくる悪い大人もいるから、騙される若者たちがきっと増えるだろうなと思います。「すごい! オリンピック種目だ、ゲームで生きていけそう」みたいな。


プロゲーマーになることによる、機会損失や将来の可能性について、ちゃんと説明してくれる大人ばかりじゃないのが現状です。

そういう世界で、しっかりプロの厳しさや、現実を発信してくれる人たちが増えてくれたらいいなと思います。


山渕: CyACとかの大会とかには賞金は出ていますか?

西谷: あれには賞金は出ていません。今のところ、『CoD』に関する日本の大会で賞金が出ているものはありません(※編注: 闘会議2018の『CoD』大会は賞金付きとなり、Rush Gamingはこれに優勝して賞金500万円と世界大会への切符を手に入れた)。そして日本人は、「Call of Duty World League」という世界大会に出場できません。「いつか変わるといいな」と信じながら皆が頑張っています。


山渕: 海外チームに入れば解決しますか?

西谷:『CoD』のこのリーグに関しては、海外に在住資格がないとダメなんです。たとえばですけれど、海外チーム「Mindfreak」の選手になったとしましょう。Mindfreakの選手としてリーグに出場するとなると、オーストラリアやアメリカなどの在住の資格がないといけないので、学校に無理やり入学して学生ビザを取得するなどしないといけないのです。日本在住の日本人では出られないので。

山渕: それは日本の『CoD』がeSportsとして発展しない理由にもなるんですかね?

西谷: 必ずしもそうではないと思います。2年弱ほどメンバーと一緒にいるからわかるんですけれど、日本の『CoD』は盛り上がっていると思います。もちろん対戦格闘ゲームのように海外のリーグに出場して結果を残せていれば、もっともっと日本で流行っていたかもしれません。

それは「たられば」の話なので否定はできません。でも、国際大会に出場できるゲームが、全て日本で流行っているかと言ったら、そういうわけでもないですよね。


ただ信じていることがひとつあります。それは「人の魅力」と、それが生み出す「熱狂」です。

Rush Gamingって頑固に『CoD』だけなんですよ。『CoD』って国際大会にも出場できないですし賞金もない。

でもRush Gamingには、ものすごい熱狂的なファンの方々がたくさんいます。いま私が着ているパーカーはすごい数で売れましたし、TGSで開いたサイン会では、運営の人がビックリするくらい多くのファンの方々に集まっていただきました。

正直、TGSの時は多くの人が、『CoD』やRush Gamingの人気を疑ってたんじゃないかな(笑)。実際にRush Gamingは、そういう周囲の予想も関係なく、立ち見が出るくらいの多くのファンの方々が、MindfreakやWekidsのTシャツを着て、行列を作ってくれました。運営の方々のご厚意で、舞台をすぐ片付けずに、行列が出ているからセットそのままに急遽写真撮影会をさせてくれました。

この状況を見て……「ああ、これってスポーツだな」と思いましたね。ファンの人がいて、カッコいいと思う選手がいて、「写真を撮ると超嬉しい!」や「サインください!」みたいな熱狂こそがスポーツでありeSportsだと思っています。


山渕: この前の『CoD: WW2』の大会を見ましたが、4000人ほどの視聴者に驚きました。

西谷: 最高時で5000人ほどいきましたからすごいですよね。それに別に公式大会とかでもない、普通のオンライン大会ですからね。「何、『CoD』って?」と思っていた昔の私だったら、「このゲーム、こんなに人が見ているんだ!!」って驚くと思います。素晴らしい選手、チームがいるところに、盛り上がりは生まれると思います。人と人との化学反応による力、それが盛り上がりのなかで、一番大事なんじゃないかなって思います。

山渕: 最後にあらためて西谷さんに伝えておきたいのですが、ゲームでここまで盛り上がれるというのは本当にすごいと思っています。テニスやサッカーは実際に人が動いて、それに対して観客が歓声を上げますが、ゲームで画面の中のキャラクターを見て盛り上がれるということは、他の競技以上にすごいのではというのが興味を持ったきっかけでした。

西谷: 面白いですよね。私はどちら側といえば体育会系で、ゲームはあんまりうまくないです(笑)。格闘ゲームよりも自分が格闘技をするほうが圧倒的に得意なほう(笑)。GreedZz選手を初めて紹介されたときに彼のYouTubeを見たんですが、それがうまいのかヘタなのかさっぱりわからなかったんですよ。なので、『CoD』を買って遊んでみました。そしたら、まあ弾が当たらない(笑)。


GreedZz選手の動画って「70キル達成!」とか「今シーズン初100キル達成しました!」とかあるじゃないですか。普通は皆20~30キルくらいのなかで40キルできてスゴい!という話だと思ったのですが、自分でやってみたら1キルできるかどうかでした(笑)。100キルってなんなんだ!? みたいな。やってみて初めて理解する難しさ、テニスに近い何かを感じました。すごいですよね、本当にスポーツだなと思いました。

山渕: 今日はありがとうございました。



インタビュー後に山渕君に話を聞いたところ、eSportsを題材にしたレポートを作成しよう考えたのは、「今まで自分が好きなものを題材に論文を書いてこなかったから」だという。中学1年から論文提出はあったものの、ずっと自分の興味外から選んで書いてきたそうだ。最後は自分に好きな題材で書こうと思い、この題材になったという。

普段プレイしているゲームは、スマホでプレイできるFPSや音楽ゲームのほかに、ハイエンドPCを所持していないためプレイできるタイトルが制限されているものの『Getting Over It』を遊んでいる。『CoD』を知ったきっかけはYouTuberの赤髪のともさんによるプレイ動画で、いろいろ探したところ Rush CLAN のリーダー、ハセシン氏へと繋がったようだ。


今回の取材を通じて、「eSportsを観戦するファン」が日本でも確実に育ってきているのだな、ということを感じた。『CoD』を遊べるパソコンを持っていない山渕君だが、それでも観戦する楽しさを知っている。ふつうのスポーツ観戦にしても、必ずしもそのスポーツを経験していないと観戦が楽しめないなんてことはない。こうした世代の台頭により、日本のeSportsがさらに広がっていくことだろう。

■関連リンク
Rush Gaming
https://www.rushgaming.co/
Rush Gaming 公式Twitter
https://twitter.com/rushgamingjp
Wekids
https://www.wekids-inc.com/

■取材協力
ALIENWARE STORE AKIBA
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