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『RUINER』自由度の高い成長システムと、その果てにある究極の「ゲーム」像とは【インディゲームレビュー】

行為における難易度とスキルのバランスが取れている時、人は行為に熱中する。しかし、世の中にはスキルに長けた人も、そうでない人もいる。世界観に即したかたちで、各々のプレイヤーに最適な難易度を提供するにはどうしたらいいか……。『RUINER』の成長システムには、そのための試行錯誤が感じられる。

ゲームは手軽なフロー体験装置

ミハイ・チクセントミハイのフロー理論によれば、能力の水準と難易度のバランスが取れているとき、人はその好意に没頭する(フロー状態に陥る)。あえて説明されるまでもなく、多くの人が日常的に体験している事柄だろう。このことはまた、人間は好んでフロー状態に身を置こうとする傾向にあることを示している。スキーで急斜面を滑降するのも、難解なパズルに挑戦するのも、一つにはこうしたフロー状態を求めてのことだといえる。

ゲームもまた、このフロー状態を手軽に体験できる装置の一つだと言える。その上でゲームが優れているのは、個々のプレイヤーに最適な難易度を提供できるように、フロー状態を動的に保つ仕組みを採用したことだ。『スーパーマリオブラザーズ』のBダッシュは好例で、上級者ほどBダッシュを活用する傾向が見られる。マリオが走る速度を無意識のうちに調整することで、プレイヤーは自分に最適な難易度を自ら選び取っているのだ。

日本アニメに影響を受けたサイバーパンクアクション

2091年の巨大サイバー都市「レンゴクシティ」が舞台のアクションシューティング『RUINER』も、そのユニークな成長システムを通して、プレイヤーに最適な難易度設定を提供しようとしているタイトルの一つだ。主人公は誘拐された兄を救うため、謎の女ハッカーの力を借りながら、街に巣くうカルト集団などと戦っていく。その過程で「ヴァーチャリティ」を世に広めようとする巨大企業ヘヴン社の陰謀に挑んでいくことになる。

ゲームシステムはツインスティックシューターで、遠距離攻撃・近距離攻撃・アビリティなどを使い分けながら、周囲の敵をなぎ倒していく。アクションRPGライクな成長要素もあり、敵キャラクターを倒すと得られるカルマポイントが一定数貯まれば、新たなアビリティがアンロックされる仕組みだ。アビリティにはエネルギーシールド、ダッシュ、知覚力向上、敵のハッキングなどがあり、ゲーム中で任意に付け替えができる。

本作のもう一つの魅力は、『攻殻機動隊』などの日本アニメに影響を受けたと思われる世界観だ。街の名前が「レンゴク(煉獄)」で、登場する女性キャラクターはいずれもアニメ顔、街のあちこちに漢字のテクスチャが張られているといった具合だ。極めつけはBGMに平沢進の楽曲を2曲(トビラ島(パラネシアン・サークル)・Recall)、公式ライセンスしている点で、いずれも世界観に良くマッチしている。

ちなみに本作の開発スタジオはポーランドのREIKON GAMESで、パブリッシャーはアメリカのDevolver Digitalだ。そのため本作にはアメリカで生まれたサイバーパンクが日本のマンガ・アニメ文化を経て欧州に伝わり、ポーランドのゲーム開発者に影響を与えたという、非常にユニークな文脈が見られる。また、本作の日本語ローカライズには、テキストに顔文字が用いられるなど、日本語ならではの工夫がほどこされている。



その上で本作のキモとなるのが、アビリティとアップグレードを中核とした、自由度の高い成長システムだ。これらはレベルアップで得られるスキルポイントを割り振ることで、成長させていける。しかも多くのゲームと異なり、本作では一度割り振ったスキルポイントを回収し、自由に再設定できる。つまり状況やボスに合わせて、プレイヤーキャラクターを最適な状態に適合させられるのだ。

これによって本作は「各々のプレイヤーに対して最適な難易度設定を、自分自身で行わせる」ことに成功している。一度割り振ったスキルポイントを自由に修正できる仕組みも、サイバーパンクという世界観に良くマッチしている。上級者向けに、アビリティやアップグレードを使用しない「縛りプレイ」もできる。つまり成長要素という名の初心者対策を、プレイヤーのプライドを傷つけることなく、自然に行わせているというわけだ。

操作しないゲームはゲームなのか?

ただし、難易度設定がEASY・NORMAL・HARDから選べるという、従来のゲーム文法が無批判に継承されている(ように見える)点が玉に瑕だ。せっかく成長要素を持たせているのだから、ここは難易度設定自体も成長システムに組みこんでほしかった。NORMALで遊び始めて途中で行き詰まり、難易度をEASYに切り替える瞬間ほど、プレイヤーにとって屈辱的なことはないからだ。

ゲームの難易度は本来、プレイヤーごとに違ってしかるべきだ。映像作品と異なり、ゲームの体験は人によって違う。そして、そこには難易度の設定も含まれるからだ。実際、難易度の自動調整を核とした、統合的なゲームのプレイ体験向上における研究開発は、メタAIなどを中心に進められている。ゲームの理想型の一つに「フロー状態の手軽な体験装置」という意味合いがあるなら、それこそが到達点だからだ。

ちなみにゲームの実況動画を見る楽しみは、ゲームの難易度を極限まで減少させた結果、ゲームから操作する要素を喪失した状態だと言える。それでも人間はゲームキャラクターに感情移入し、まるで自分が操作しているかのような感覚で、ゲーム映像を楽しむことができる。であれば、そうした楽しみをゲーム内に取り込むアイデアもあり得るだろう。インディゲームにこそ、そうした挑戦的な取り組みを期待したい。



Copyright(C)REIKON GAMES 2017.


◆関連リンク
『RUINER』公式ページ
http://ruinergame.com/
Steam『RUINER』のページ
http://store.steampowered.com/app/464060/RUINER/
REIKON GAMES(開発スタジオ)
http://ruinergame.com/presskit/
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