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【プロゲーマーという仕事を学ぶには 連載01】教育分野から見るeSportsの問題点

皆さん初めまして、鈴木悠太と申します。
私は今、プロゲーミングチーム"SunSister"の『Alliance of Valiant Arms』部門の選手として活動をしながら、東京アニメ・声優専門学校 e-sportsプロフェッショナルゲーマーワールド、OCA大阪デザイン&IT専門学校e-sportsWORLDの講師をしております。

「プロゲーマー専門学校」として世間を賑わせた東京アニメ・声優専門学校e-sportsプロフェッショナルゲーマーワールドの設立から携わり、もうすぐ3年が経とうとしております。教育分野に携わるプロゲーマーとして、現状の日本eSports業界が抱える問題点を整理し、未来ある業界を作り上げるにはどうしたらよいか、持論を述べていきたいと思います。

今回は、eSports認知の拡大と問題点、というテーマで執筆させて頂きます。

昨今のeSports報道ブーム

「対戦型ゲームがスポーツに! その名もeSports!」

最近、様々なメディアでこのような報道がされています。このような報道を見て、皆さんはどのように感じられるでしょうか?

ようやく世間にeSportsの世界が知られるようになったか!でしょうか?
お、今年こそeSports元年だ!でしょうか?

確かに、今まで日本ではあまり知られてこなかった対戦型ゲームの世界が世間一般に認知されることは、大変喜ばしいことです。私も過去、『Alliance of Valiant Arms』の日本代表決定戦を観戦し、試合会場の熱気や選手の一挙一動に感動した人間ですので、この世界をもっと世間に知ってほしいと願っております。

しかし、昨今のeSportsに対する報道には、とても危機感を感じています。


「eSports」とは、何を意味するのか?

まずは、大前提の話からしていきたいと思います。

「eSports」とは、何を意味するのか?

多くの記事媒体では、概ねこのように表現されているのではないでしょうか?

"「eスポーツ(eSports)」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。"

もはや定型文といっていいほどよく見かけるこの文章。この文章を簡単に表現すると、以下となります。

"対戦型ゲーム=スポーツ"

ここまでは、まったく問題ありません。問題は、ここから先です。

で、対戦型ゲームって実際どんな中身なの?

皆さんも知ってのとおり、対戦型ゲームには様々なジャンルがあります。MOBA、RTS、FPS格闘、スポーツ、カードゲーム、最近ではバトルロワイヤルなど……。そして、その中に様々なタイトルがあります。



"対戦型ゲーム=スポーツ"

この文章をそのまま受け取れば、従来のスポーツも以下のように区分されます。


それぞれの区分としては、構造がまったく同じといってもよい形となります。ここまでを皆さんにきちんと理解して頂いたうえで、もう一度、メディアの報道に話を戻しましょう。

「対戦型ゲームがスポーツに! その名もeSports!」という報道に対する違和感

あなたが「対戦型ゲームがスポーツに! その名もeSports!」という報道を見たとき、どのような想像をするでしょうか? あまりゲームの世界に詳しくない方は、

「昔はストリートファイター2が流行ってたな」

かもしれません。ゲームの世界に詳しい方ならば、

「最近は『PUBG』が流行ってて、同時接続300万人を突破したし、日本でプロリーグも開催される見込みだ」
「『LoL』は安定して人気で、プロリーグがある。コミュニティイベントも盛んだな」
「『CS: GO』は昔からあるタイトルで海外では人気が高いが、日本ではそこまで人口が多くないなあ」

などでしょうか。「eSports」という単語が持つ範囲が広すぎて、各々が違うゲームタイトルを想像するかと思います。

さて、では対戦型ゲームと同じ仕分けであるスポーツは、どのような報道がされているでしょうか?

「ドラフト会議、競合に次ぐ競合 清宮は7球団重複」
「指揮官不在のアーセナル、敵地でボーンマスに逆転負け/プレミアリーグ第23節」
「稀勢の里は初日に土、白鵬、鶴竜は白星発進 初場所」

……いかがでしょう。スポーツは、各タイトルごとに報道されています。それも詳細に。間違っても「ボールを扱う競技がスポーツに! その名も球技!」のような報道はされないわけです。

eSports業界は各タイトルごとの認知拡大を推奨すべき

eSports業界が目指すものは、まさにスポーツの報道の姿です。各タイトルごとに注目が集まる。プロの試合の結果を知り、一喜一憂する。自分の好きな選手の活躍を知る。

では、この姿に行くまでの道筋を、eSports業界は構築しているのでしょうか? 本当に各タイトルを一般に認知してもらう活動ができているのでしょうか? eSports業界を盛り上げたいという声はたくさんあがっていますが、各タイトルの認知拡大はメーカーにお任せしていないでしょうか?

ゲームをする楽しさ、仲間と盛り上がる楽しさ、スーパープレイを共有する楽しさ、うまい人のプレイを見る楽しさ……。

若いころにパソコンゲームや家庭用ゲーム機に張り付いていない人たちには、その価値はわかりません。これを提供する努力は、できているでしょうか?

テレビや新聞で「対戦型ゲームがスポーツに! その名もeSports!」といった報道がされることは、ほんの入り口に過ぎません。本当に目指すものは、eSports業界の存在の認知ではなく、その中にあるたくさんのゲームが持つ楽しさの認知です。

「eSports」としてではなく、その中の各タイトルに注目が集まる世の中にeSports業界全体として持っていかなければ、無限に「eSports元年」を繰り返すことになります。

教育人として思うこと

eSportsの認知が拡大するにつれて、この業界を目指したいという若者は増えてきます。プロ選手を目指したい、大会運営をしたい、キャスターになりたい……などです。

そんなeSportsに熱のある若者が、未来を感じられる業界にしていかなければなりません。

「ゲームという、言葉も必要ないツールの持つ素晴らしさを、たくさんの人に伝えられる」

そういう未来を作り上げていかなければ、これからeSports業界を盛り上げたいと思う若者はいなくなってしまいます。それには、整備されたスキームが必要です。

「eSportsが盛り上がってます!」と声高に叫ぶことも大切ですが、その先の、eSportsに興味を持ってくれた方々がもっと楽しめる、もっと参加しやすい形の仕組みを構築する必要があります。

それは、小さなイベントかもしれません。お金も必要ないかもしれません。業界全体が各タイトルに寄り添い、そのゲームが好きな人たちを最大限喜ばせる。そんな活動が、これからは必要になってくるのではないでしょうか。


■鈴木悠太氏のプロフィール
プロゲーミングチーム"SunSister"の『Alliance of Valiant Arms』部門の選手として活躍。東京アニメ・声優専門学校e-sportsプロフェッショナルゲーマーワールド、OCA大阪デザイン&IT専門学校e-sportsWORLDの講師も行っており、日本のeSportsを教育の現場から支える人物のひとり。
Twitterアカウント:https://twitter.com/suzuki_afo

■関連リンク
SunSister
http://www.sunsister.net/