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【インディゲームレビュー】ハイクオリティ個性派アクションシューター『CUPHEAD』は本当に個性的なのか?

文●小野憲史

1930年代のカートゥーンに影響を受けたアクションシューティング『CUPHEAD』。手描きのセル画で描かれたキャラクターアニメーションと、高難度なアクションの組み合わせが目をひきがちだが、その背後にあるのは基本に忠実なレベルデザインだった。


古典芸能の世界には「守破離(しゅはり)」という言葉がある。芸事を習う上での心構えを示したもので、それぞれ「師匠の型を忠実に守る」「師匠の型を破る」「師匠の型から離れ、オリジナルの型を創造する」の意味だ。暗黙知を効果的に伝承・学習する上で優れたモデルであり、現代でもしばしば使用される。

ゲームデザインにおいても、このことは同様だ。1930年代のカートゥーンに影響を受けたアクションシューター『CUPHEAD』も同様で、『魂斗羅』『超魔界村』『ガンスターヒーローズ』といった往年のゲームの型を守り、それらを破り、その上でオリジナルの型を作り上げようとした痕跡がいたるところに見いだせる。

中でも顕著なのがレベルデザインだ。一般的には手描きのセル画で描かれたリッチなキャラクターアニメーションや、水彩画で描かれた背景、撮り下ろしのジャズ楽曲、そして激ムズの高難度といった部分が取りだたされがちだ。しかし、本作は決して理不尽なゲームではない。むしろ基本に忠実だからこそ、再挑戦性の高い作品に仕上がったといえる。

チュートリアルを兼ねた序盤のボスステージ

例として序盤のステージ「BOTANIC PANIC!」における敵キャラクターの攻撃パターンを分析してみよう。ここでは合計で3体のボスキャラクターが登場する。はじめの敵は横方向からの攻撃、次の敵は上からの攻撃、そして最後の敵は四方八方からの攻撃と、特定方向からの斜め攻撃を繰り出してくる。

このステージはプレイヤーが最初に選択できる2つのステージのうちの1つになっている。実際にプレイすると、かなり難易度が高いことに驚かされるが、内容を分解してみると、このように段階的な難易度設計になっていることがわかる。つまり、本ステージはチュートリアルを兼ねた内容だといえる。

ポテトは横から障害物を転がしながら攻撃してくる

オニオンは上から涙の水滴を飛ばして攻撃してくる

キャロットは2つの攻撃を交互に繰り出してくる。その一つは四方八方から飛ばしてくるミニキャロットだ

もう一つは額にある第三の目から繰り出すビーム攻撃。それぞれはシンプルな内容だが、両方を組み合わせることで難易度が上昇している

レベルデザインにおける2つの基本テクニック

続いての例は「TREETOP TROUBLE」のレベルデザインだ。ここで開発者は「簡単な行為を2つ同時にさせる」「似たような系統の課題を、少しだけ難しくして再登場させる」という、レベルデザインにおける基本的なテクニックを数多く盛り込んでいる。この思想はゲーム全編において徹底されており、教科書的な内容になっていると言えるだろう。

ステージを進めていくと、「キツツキが上からつついてくる」「前から敵キャラクターが転がってくる」という、2つの障害物が登場してくる。いずれも単体ではシンプルな障害物だが、2つ同時に登場させている点がミソだ。各々の障害物はシンプルなため、たとえ失敗したとしても、もう一度挑戦してみようという意欲を保たせやすいのだ。

また、先に進むごとに床に開いた穴の数が増えていく(落下すると、当然ミスになる)。似たような系統の課題を、少しだけ難しくして再登場させている例だ。ふつうのジャンプでもギリギリ飛び越えられる長さだが、高速移動のテクニックと組み合わせると、楽にクリアできる。プレイヤーに操作の習熟を促しつつ、より困難な挑戦を提示しているのだ。

最初は床に穴が開いていない

次は穴をジャンプした後で、キツツキが上から攻撃してくる

次はキツツキの下に穴が1つ開いている

これを越えると、前から敵キャラクターが数多く迫ってくる。ただしまっすぐ進むと自動的に避けられる配置になっている。このことでプレイヤーに優越感を与えさせている

最後にキツツキの前後に穴を配置し、より複雑な操作を要求させる

個性的な世界観と基本的なレベルデザインの融合

本作はしばしば「異色のゲーム」だとレビューされている。たしかにグラフィックやサウンドなどは、これまでにないスタイルで、作り手の個性が十二分に発揮されている。まさにインディゲームならではだといえるだろう。しかし、これまで見てきたようにレベルデザインは教科書通りであり、ゲームデザインにいたっては古典的だともいえる。

教科書通りということは、攻略法が見つけやすいということだ。このことは本作の「協力プレイ可能なアクションシューター」というコンセプトとも合致している。モニターに向かって一緒にゲームを遊びながら、攻略法を教え合う姿が目に浮かぶようだ。逆にレベルデザインまで個性的では、ここまで高い評価は得られなかったはずだ。

本作は往年のアクションシューティングの世界観を破壊した一方で、ゲームデザインやレベルデザインは踏襲することで、唯一無二のタイトルとなった。このことは開発リソースに乏しいインディゲームにおいて、個性を発揮すべき点と、発揮してはいけない点があることを示している。この点においても教科書的な内容になったと言えるだろう。

Copyright © 2017 | Studio MDHR

<参考・参照元>
『ビジネスを変える「ゲームニクス」』サイトウ・アキヒロ著(日経BP社)


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■関連リンク
StudioMDHR Entertainment Inc.
http://studiomdhr.com/
Cupheadの生い立ちとインスピレーション、制作手法 | Made with Unity
https://madewithunity.jp/stories/cuphead/
Steam『CUPHEAD』のページ
http://store.steampowered.com/app/268910/Cuphead/