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『911 Operator』〜ストレスループでつながる現実社会とゲーム【インディーゲームレビュー】

 
『スキタイのムスメ』レビューで取り上げた「ストレスループ」は、現実社会とゲームを結ぶ接点だ。このことはゲームが現実社会の映し鏡であることを示している。緊急電話を受けて車両を手配する『911 Operator』もまた、現実とゲームの関係性について考えさせられるタイトルだ。

ゲームと現実、両者を繋ぐ接点とは何か

『スキタイのムスメ』レビューでとりあげた「ストレスと解放」は、さまざまなエンタテインメントの分析に使える概念だ。「ストレス」が「特定の要因(=キーファクター)」で「解放」されると快感が発生するというもので、アクション映画やホラー映画などはすべてこのパターンだ。ゲームもまた、この循環構造で進んでいく。筆者はこれを「ストレスループ」と呼称している。

このストレスループは現実とゲームをつなぐ接点でもある。というのもゲームもまたエンタテイメントの一種だからだ。ゲームプレイは「現実のストレス」を「ゲームというキーファクター」で「解消」している状態だと言い換えられる。一方でゲーム内にも「ストレスをキーファクターで解消する」構造がみられる。つまり両者は入れ子構造にあり、キーファクターで接続されているのだ。

はじめに予算内で車両を購入し、警察官・消防士・救急隊員を雇うなどして、チームを編成する

地震やテロから人々の暮らしを守る

このことは「現実社会のストレスループを抽出し、キーファクターを明確にすれば、ゲームになる」ことを意味している。その代表例がシミュレーションゲームだ。緊急電話を受けて車両を手配する『911 Operator』もまた、こうしたコンセプトでデザインされているゲームである。911はアメリカの緊急電話番号のことで、日本の110番と119番の両方の役割を担っている。

任務が始まると、次々に事件が飛び込んでくる。状況に応じて緊急車両を手配し、事件を片付けていこう

時には電話をとり、会話のやりとりで内容を処理するか否か決めなければならない。いたずらや間違い電話もかかってくるので注意だ

ゲームの舞台はニューヨークやシカゴといったアメリカの6都市で、サンフランシスコで地震に見舞われたり、ワシントンD.C.を爆弾テロから救ったりと、その都市ならではのシナリオも含まれている。キャリアモードをプレイするだけでなく、インターネットから都市データをダウンロードすれば、世界中のさまざまな都市を舞台にゲームをすることも可能だ。

本作のユニークな点は電話口でのやりとりをフルボイスで再現している点だ。緊急処置のやりとりだけで十分な場合もあるし、いたずら電話の場合もある。かと思いきや、深刻な事件が隠されていたりもするので気が抜けない。「電話口に出られない場合はダイアルをプッシュして」など、実際の緊迫した状況を彷彿とさせる描写があり、アメリカの事情が垣間見える点も興味深い。

事件のアイコンをクリックすると状況がわかる。時には激しい撃ち合いなどが行われていることもある

現実のストレスループを誇張

本作をストレスループで分析すると、「同時多発的に発生する事件群」がストレス。「緊急車両の手配」がキーファクター。「緊急車両が到着し、事件が解決される」ことが解放となる。事件は交通事故に強盗、スピード違反、はたまた「ネコが木に登って降りられなくなった」など140種類以上にもおよび、この繰り返しでゲームは進んでいく。緊急車両はパトカー・消防車・ヘリコプターなど12種類が選べる。

実際にプレイすると、同時多発的におきる事件の内容をチェックして、それに適した緊急車両を手配するのは思った以上に集中力を消費する。その一方で1回の任務は10~15分程度で終わり、テンポ良く進めていけるなど、随所にゲームならではの誇張がほどこされている。ゲーム内の時間速度が自由に調整できる点も、プレイアビリティにつながっている。

ただし、個々の事件に関連性がなく、事件の発生頻度もランダムなので、次第にゲーム展開が作業的になっていく。キャリアモードでは事件解決に応じて予算が増え、緊急車両や装備が充実するなどの要素もあるが、アイテム数が少なく、やり込み要素に欠ける点は否めない。つまりストレスループの構造が単調なのだ。この点に絞って改善すれば、より完成度の高い内容になるだろう。

一日が終わると業務結果が表示される。自分の判断が正しかったかが問われる瞬間だ。メンバーの中には昇進したり、負傷したりする者もいる

本作のポイントは、緊急回線のオペレーター業務を疑似体験できる唯一無二のゲームだという点にある。同様にさまざまな仕事に内包されるストレスループを観察することで、さまざまな業種の仕事体験ゲームが開発できると考えられる。ただし、そのためにはストレスループを正しく観察する行為が欠かせない。それこそがゲームデザイナーの仕事というわけだ。本作をプレイして、その可能性を感じて欲しい。

■関連リンク
JUTSU GAMES
http://jutsugames.com/
『911 Operator』
http://jutsugames.com/911/
Steam『911 Operator』のページ
http://store.steampowered.com/app/503560/911_Operator/

小野憲史のインディーゲームレビュー