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『Untitled Goose Game ~いたずらガチョウがやって来た!~』予告動画とガチョウにまつわるコンテキストの違い【インディーゲームレビュー 第84回】

2019年に発売された数あるゲームの中でも、ゲーム開発者からもっとも高い評価を得たタイトルが『Untitled Goose Game ~いたずらガチョウがやって来た!~』だ。動画共有サイトで大きなバイラル効果を見せた本作は、ゲームの地域性と開発手法について大きな示唆を与えている。


GDCAとDICEアワードのダブル受賞

毎年3月に米GDC会場で行われるIGF(Independent Games Festival)とGDCA(Game Developers Choice Awards)の発表授与式。ゲーム開発者の投票ベースで顕彰される点が特徴で、良くも悪くもその年の業界トレンドを反映した内容だ。コロナ禍でオンライン開催された2020年度は、擬人化された小鳥となってトレッキングを楽しむ『A Short Hike』がIGFの大賞に輝いた。

では、GDCAで大賞に輝いたのは何だったか。答えはガチョウとなって小さなコミュニティを歩き回り、たわいもない悪戯をくりひろげる『Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜』だ。『デス・ストランディング』『CONTROL』『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』『Outer Wilds』といったライバルを押しのけて、わずか4人のチームが作ったインディーゲームが受賞したことに驚かされた。

ちなみにGDCAの前哨戦となったのが、2月にゲーム開発者会議のD.I.C.E.サミットで発表されるDICEアワードで、ここでも本作は大賞に輝いた。非営利団体のAIAS(Academy of Interactive Arts & Sciences)に所属する2万2000人の会員によって選出される賞で、興味深いのはインディーゲーム部門でも部門賞を獲得したことだ。つまり本作はインディーゲームとしても、ゲーム全体としても評価されたことになる。

GDCAとDICEアワードのダブル受賞は過去11作あるが、インディーゲームに限れば『風ノ旅ビト』に続く2作目となる。また、本作はIGFで大賞とオーディオ部門、GDCAでオーディオ部門、ゲームデザイン部門、イノベーション部門にノミネートされたが、受賞は逃がしている。それだけにGDCAで大賞を受賞したことに、素直に驚いた。もっとも、一番驚いたのは開発メンバーだったのではないだろうか。

受賞コメントを動画でよせる開発元のHouse Houseのメンバー(https://youtu.be/7LU0h2mJEtc?t=4471

社会現象を巻き起こした予告動画

本作は発売に先立つ2017年10月、開発中のプレイ動画を編集したトレーラービデオが作成され、YouTube上で公開された。トレーラーは大好評をよび、ネット民によってさまざまに弄られた。こうして高い前評判を得た結果、本作の売上は驚異的なスピードで増加し、ミリオンソフトとなった。この過程はYouTubeビデオ『How Untitled Goose Game Was Made and Became an Internet Sensation』に詳しくまとめられている。


本作の予告ビデオが高いバイラルを起こした理由として、開発チームはインタビュー記事「ガチョウが担うステルスゲームの未来」で「ガチョウの生息数が少ない地元オーストラリアよりも北半球の人々のほうがガチョウへの馴染みが深いことや、残酷すぎず、怖すぎない方法で悪戯をする内容が、多くのプレイヤーに支持されたのではないか」とコメントしている。

もっとも、これは欧米圏ならではの現象だろう。実際、本作は発売されるまで、日本では無名タイトルに近かったからだ。そこにはガチョウに対するコンテキストの違いがある。マザーグースをはじめ、古くから民話に登場する欧米圏と異なり、日本人のガチョウに対する歴史は浅く、思い入れも薄い。筆者もふくめて、ガチョウになって悪戯をしたいかと言われても、正直ピンとこないゲーマーが大半だと思われる。





ガチョウになって悪戯をしたい人がどれだけいるか?

ここで改めて本作の概要について紹介すると、「プレイヤーはガチョウを操り、畑や商店街といったステージを歩き回って、アイテムを移動させたり、鳴き声をあげたりして特定のイベント(悪戯)を成功させ、事前に設定されたクエストを達成していく」アクションパズルとなる。イベントの中には周囲の目を盗んで行うものも多く、これがカジュアルなステルスゲームと呼ばれる所以だ。

もっとも、ヒントの出し方があまり洗練されているとは思えない。少なくとも筆者には難解すぎて、ネット上の攻略サイトのお世話になることが多かった。ステージ上でいろいろな悪戯を試しながら、偶然パズルがクリアできる、といった流れが理想だと思われるが、現状ではキャラクターの反応のバリエーションが限定的で、ゲームAIもそこまで複雑ではないので、期待薄だと思われる。

なお、本作は2020年9月のアップデートで2人協力プレイに対応した。また、満を持してPC版(Steam)がリリースされ、より多くのプレイヤーが遊べるようになった。2人で役割分担を行い、試行錯誤を重ねながらパズルをクリアしていけるようになったため、本作にとっては理想的なアップデートだろう。ただし、2人で遊ぶことを前提に本作を購入する層も少ないと思うので、あくまで付加的な要素に留まるとは思われる。


結局のところ本作の評価は「ガチョウにどれだけ思い入れがあるか」で変わる。その上でトレーラーがネット上で社会現象を巻き起こしたことが、本作の高い評価につながった。いわば「トレーラー駆動開発」とでも言える開発スタイルが、多くのゲーム開発者の共感を呼んだと推測される。そしてこのことは、開発負荷の上昇トレンドへの対抗策として、大きな示唆を与えているように感じられる。

ちなみに本作はラストにちょっとしたユーモアというか、オチが控えている。こうした要素もゲームのバイラルを回す上で重要だ。この点で本作はネット時代ならではのゲームだといえるだろう。もっとも、ガチョウという題材が日本に適していたのかは不明だ。個人的にはガチョウではなく、座敷わらしとなって家のトラブルを秘密裏に解決していくゲームの方が好みなのだが、どうだろうか?

© 2019–2020 House House

Steam『Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/837470/Untitled_Goose_Game/
『Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜』公式サイト
https://goose.game/
Road to the IGF: House House's Untitled Goose Game(米Gamasutra)
https://www.gamasutra.com/view/news/358217/Road_to_the_IGF_House_Houses_Untitled_Goose_Game.php
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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