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世界6位のeスポーツ先進国、デンマークのeスポーツ事情とは?【CEDEC2020レポート】

COVID-19の影響で、初のオンラインのみの開催となったゲーム開発に関わる知見交流のカンファレンス「CEDEC2020」。ゲーム開発に関わる技術交流がメインのイベントだが、取り扱うジャンルはさまざまだ。

今回はその中でも、北欧の国デンマークにおけるeスポーツ産業についてのセッション「デンマークのゲーム及びeスポーツ産業の現状とエコシステム形成への取り組み」をオンラインで取材した。登壇者は、デンマーク王国大使館商務部上席商務官の上郡明子氏だ。

日本より人口規模も国土も小さいデンマークから、日本のeスポーツ業界が学べる部分もありそうだ。

デンマーク王国大使館商務部上席商務官の上郡明子氏

デンマークの解説―ゲーム産業には何があるのか

デンマークは欧州ユトランド半島にある島国で九州と同じくらいの面積を持ち、人口は兵庫県と同じ約582万人。同国で生まれたサービスでは、SkypeやUnity、Google Mapのテクノロジー、そしてC++/C#やPHPなどがその筆頭にあたる。

デンマークでは、首都の一極集中だけでなく分散化へも注力し、オールボーやオーフス、ホルステブロー、フュン島のオーセンセ、シュラン島のコペンハーゲンなど各都市にAR/VRハブやサウンドハブなどが割り当てられている。



デンマークではスタートアップを生み出す活動が積極的に行われており、その施策の中で生まれたのがUnityエンジン採用の「Labster」と呼ばれる100以上の仮想実験コンテンツ。デンマーク工科大学やノボノルディスクなどが一緒に、科学実験の内容や実験の手順の成功性を上げることなどを行っている。

2018年以降で日本市場や日本語展開しているゲーム関連企業では、『Hitman』シリーズでお馴染みのIO interactiveがその筆頭だ。他にも、ヘッドセットやマウスのSteelSeriesやUnity Technologies、ゲーミングヘッドセットブランドの「EPOS」、ゲーミングマウスパッドメーカー「SkyPAD」、ライフスタイルスポーツブランド「hummel」(ヒュンメル)が挙げられる。またhummelはeスポーツメーカーへのユニフォーム提供などをスポンサーとして行っている。


北欧デンマークにおけるeスポーツ産業とは?

続いて本題であるデンマークにおけるeスポーツ産業の解説に入った。

2019年におけるeスポーツランキングでは、国としては第6位に、同国の一番強いチームとしてAstralisは16位にランキングしている。


またゲーム人口は60万人で、4人に1人が携帯やPC、またはコンソールでほぼ毎日ゲームを遊んでいる。eスポーツとゲームは特に若者に人気で、DR Media Researchの発表によれば13~19歳(人口約24万人)の少年の96%がPCゲームのプレイ経験があり、49%が毎日PCでゲームをしているという。ちなみに同年齢帯の女子では70%がPCゲームをしているが、毎日遊んでいるのは5%とのこと。


他にもデンマーク文化省は世界で初めて「eスポーツ政策」を発表している。成長の原動力と健全な環境、そしてコミュニティを作るためにサポートすることが目的だ。この政策の重要項目として、持続可能な組織構造の構築や、依存症と不正行為からスポーツとしてのビジョンの確立に加え、eスポーツへの女性参加などが挙げられている。


国としてのeスポーツへの取り組み


デンマークにおけるeスポーツ協会は2007年に設立された。3年から5年先を見据えた戦略の一つで、基本はアマチュアやセミプロの活動をメインにサポートを行う機関だ。通常のボードメンバーに加え、プロスポーツのチームや大学などのチームが参加するエデュケーションボードと、プロシーンに近いチームやTV関係などのアドバイザリーボードの産官民が一体となっているのが特徴だ。

デンマークのeスポーツ協会の取り組みでは、2020年上半期や2021年までの1.5年間で約7900万円を予算化。この項目のなかで注目なのは、「労働組合をさらに強化」していることや、「国内でのLANトーナメントにおいて主催者として大会を判断できるように審査委員会の訓練」といった育成に配慮が行き届いていることだ。


さらに「アマチュアからセミプロまで、チームの強化とサポートに投資」や、「eスポーツとあまり接点のない様々な分野に考慮を払うことが不可欠」など、eスポーツを持続させるための環境作りにまで手が及んでいることも挙げられている。デンマークには300校ほどeスポーツに関する学校があるが、施設/指導者/カリキュラム/社会教育/専門教育/事業や経営戦略に関するパラメーターで内容を規定し、エリート養成学校では7番目に追加の評価が行われている。

取り組み例としては、18歳以上を育てるアカデミー「KPG ESPORT」や、コペンハーゲンにある「Team Singularity」がeスポーツタレントのインキュベーションをしている。他にもNPF Eスポーツアカデミーでは、教育機関向けのイベントとして大規模な国際トーナメントを開催。さらに展示会を開催することで学生が教育機関やテクノロジー関連企業と直接出会い、将来の仕事や教育を知る機会を提供している。


eスポーツとフィジカルスポーツのトレーニングを融合


デンマークのトップチームの取り組みとして「Astralis」は、世界で初めてeスポーツとフィジカルスポーツの仕組みやトレーニングを融合させたチームとして説明された。スポーツディレクターのKasper Hvidt氏は、元々デンマークのハンドボールのナショナルチームに所属し、ゴールキーパーを務めた経験を持っている。

またチームにはコーチやスポーツの専門家、医者、心理学者、栄養士、理学療法士などが導入されている。これは、アマチュア層にまで活動を広く周知させ、継続的に業界の模範としての活動も行っている。


チームはスマートウォッチを常に装着し、最新の研究と技術を用いて常に身体や心をモニターして対応。選手のリクルートについては、eスポーツ以外における人材のリクルート手法を取り組んでいる。

プロ選手は身体や技術に関する様々なデータを取得している他にも、人々の模範となるようにチームメンバーと一緒に生活をせず、一日中トレーニングを行わず、12時間ノンストップでプレイもしない健康的な環境でeスポーツを行うように構築している。それでもAstralisはデータ解析を実施して、よくディスカッションを行っているようだ。


eスポーツのスタートアップについては、「Gaming Buddy」という会社がeスポーツの選手やコーチをマッチングするプラットフォームビジネスを展開している。ユーザーのプロファイルを入力してそれに合わせたマッチングでなく、チャットにおいて話している内容などの選手自体の個性を見分ける解析方法などを導入しているとのことだ。



Forbes誌が選ぶ、「世界を変える30歳未満の30人」(30 under 30 Europe 2020)では、スポーツとゲームが同じカテゴリに設定されており、デンマーク人がそのなかで3人選出されている。このことから、欧州においてeスポーツは世の中に広く浸透しているという証明になっているのではないか、と語ったところでセッションを終了した。


セッションの内容は基本説明に終始していたが、「健康的な環境」で「模範的」という単語が複数回出てきたことを見ると、2010年代における国内外含めてeスポーツ界隈でのトラブルや事件の影響を考慮してきた結果なのかと思い知らされた。このセッションはあくまでも北欧デンマークにおけるeスポーツ取り組みの紹介であるが、今後の方向性の1つとして参考になる内容ではないだろうか。

CEDEC2020
https://cedec.cesa.or.jp/2020/

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