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引退後は地元徳島で女子プロゲーマーを育成したい【CYCLOPS athlete gaming/Redbull athlete たぬかな選手インタビュー】

3D対戦格闘ゲーム、『鉄拳』シリーズを代表する強豪レディースプレイヤーとして広く知られ、競技シーンの存在感が大きくなった『鉄拳7』時代に入るといち早くCYCLOPS athlete gamingとスポンサード契約を獲得、現在はレッドブルアスリートとしても活躍する、たぬかな選手。新型コロナウイルスの影響により、『鉄拳』プレイヤーに限らず多くのジャンルのプロゲーマーが活動の場を制限される中、たぬかな選手はゲーム配信にeスポーツ界隈に留まらない幅広いメディアへの出演、1000人以上の『鉄拳』プレイヤーが集い情報交換や初中級者へのコーチングなどを行うDiscord Server「鉄学(仮)」を起ち上げるなど、精力的に活動していた。

本記事ではたぬかな選手に『鉄拳』デビューからプロゲーマーに至るまでの流れを振り返ってもらいつつ、自身の(プロプレイヤーとしての)引退後まで見据えた、中~長期的な展望についても語ってもらった。


インタビューは2020年8月6日にビデオ会議アプリにて収録

プロゲーマーになったきっかけは大阪遠征のついで?

──今回のインタビューは『鉄拳』プレイヤーとしてのキャリアを振り返ってもらいつつ、今後の展望についても語っていただければと思います。まずはいろいろなメディアで話されていると思いますが、あらためて『鉄拳』デビューを果たした徳島時代の話からお願いします。

たぬかな:始めたのは『鉄拳6 BLOODLINE REBELLION』からです。高校で男の子たちのあいだで『鉄拳』が流行っていて学校帰りにみんなゲームセンターに行って『鉄拳』をやっていたので、そこに混じってやり始めたのがきっかけです。

▲『鉄拳6』(写真はXbox 360版)

──格闘ゲーム、それもシリーズものだと友だちの中はともかくゲーセンにいる他のプレイヤーにな勝つのはなかなか難しいかなと思うんですけど、その辺はどういう風に乗り越えたのでしょうか? また、勝てるようになったきっかけみたいなものはありましたか?

たぬかな:もちろん実力的には全然勝てなかったんですけど、女子高生が『鉄拳』をやっているということで、 けっこう接待プレイをしてくれましたね(笑)。最後は向こうがわざと負けてくれて、コインを入れずに続けて遊ばせてくれるみたいな感じだったので。そこは性別で得をしたというか、楽しんで対戦できてたかなと思います。とはいえ台を変えてもずっと乱入され続けて、修羅から4段まで落とされる、みたいなこともありました(苦笑)。

勝てるようになった、なにか殻を破れたきっかけというと、地元の店に「必殺前歯さん」というおじさんプレイヤーがいて、その人はいろいろ教えてはくれるんですけど、初心者を殺す立ち回りみたいなのを延々やってくるんですよ。その地元の門番みたいな人を倒したときかなと思います。あとは負けず嫌いだったのもよかったのかも。四段に落とされたときも、最後まで私の方が連コインしてましたし。絶対〇す!って(笑)。

──なるほど(笑)。そうやってゲームを続けて上手くなってくると、アーケードゲームだともっと強くて人のいるゲーセンに行きたくなる、いわゆる遠征をしに行くノリになるかと思うんですが……。

たぬかな:当時は高校生だったので、自分だけで遠征するのは金銭的に厳しくて、周りの人に連れて行ってもらうことが多かったですね。それで香川にはよく行きました。当時はまだ「戦-IKUSA-」という大きなゲーセンがあったので。徳島と香川の人はみんな仲がよかったのもあり、遠征の前には「いまこっち(徳島)にはこれぐらいの段位が〇人ぐらいいるけど、そっち(香川)には段位戦やれる奴おる?」みたいな話が通ってて、同じぐらいの実力の子と対戦できたし、帰りにみんなで食べるごはん……だいたいラーメンでしたけど、それも楽しかったですね、段位戦もふくめて部活の対抗戦みたいなノリで。

──そういう遠征で活動範囲が広がり、実力もついたことで強豪プレイヤーとして名が知られるようになった、という流れでしょうか?

たぬかな:いえ、大阪とか東京みたいな場所まで遠征しだすのは社会人になってからしばらく経ってから、『TAG2』(『鉄拳タッグトーナメント2』)の頃ですね。高校の頃は門限が謎に厳しくて、バイトって言わないと19時以降にゲーセンに行けなかったりして。だからバイト3つをかけもちしつつ、バイトがない日は「今日もバイト~」って言ってゲーセンに行ったり。社会人になってからは仕事が忙しくて、ゲームをする時間がほとんど取れなかった。遠征とかができる時間が取れるようになったのは、最初に就職した設計の事務所が倒産して転職したユニクロ時代からですね。

▲たぬかな選手のTwitterより

──会社が倒産という話がサラッと出ましたが、そこでプロゲーマーだったりゲームに関わる仕事に就こうと思ったりはしなかった?

たぬかな:まったくなかったです。会社がつぶれたときはまだまだプロゲーマーっていう言葉すら世間には認知されてなかったし、私もウメハラさんを知らないぐらいだったので。その頃は『TAG2』で対戦するのがただただ楽しいっていう時期でした。『TAG2』はシステム的に難しかったりして徳島でやってる人はほとんどいなかったので、東京まで遠征してました。『鉄拳』界隈ってオフ会も盛んだったので、そこで仲良くなった人たちとご飯に行ったりカラオケに行くのも楽しかったですね。

CYCLOPS athlete gaming(以下CAG)に入るきっかけになったオーディションも「面白そう!」「ちょっと話聞いてみたい」ぐらいの気持ちで大会に出てる動画を送ったら1次審査に受かって。そのあとの面接も大阪まで行くのはダルイな~と思ってたんですけど、交通費は出してくれるってことだったんで、遠征のついでに行こうかな?という感じでした。面接でも浮いてましたね。「具体的にはなにやるんですか?」とか、「お給料っていくらもらえるんですか?」って私から質問して。ヤバい奴が来たなと思われてたと思います(笑)。

──いやでも、疑問に思ったことを聞くのは重要だと思いますよ。

たぬかな:そうかもしれないですね。それで契約に大阪在住っていう条件が入っていたので、24歳にして初めて徳島県外に住むことになりました。都会に住んでみたいっていうのもあったし、大阪は遠征で行ってけっこうボコボコにされた場所なので、その中に入って挑むことで『鉄拳』へのモチベーションも上がりました。やっぱり人が多いってことはモチベーションにもなるんですよね、ライバルとか友達と思える人がいると。

──CAGに所属した約1年後には、レッドブルアスリートにも選ばれますよね。

たぬかな:CAGは2016年で、レッドブルの方は2018年の1月にEVO JAPANでお披露目されたのかな? レッドブルアスリートは(プロゲーマーになって)1年目で運よく海外で結果を残せた(「Combo Breaker 2017」『鉄拳7』部門3位)のが大きかったですね。Yahoo!ニュースにも載せていただいたりしましたし。さらに運がよかったのが、当時レッドブルさんが女性の地位向上みたいな目標を掲げてeスポーツ界に目を向け始めたところで、女性のプロゲーマーということで声をかけていただけた。私はけっこう、自分で言ったらあれなんですけど、明るくてしゃべるタイプではあるので、そこがレッドブルのイメージコンセプトみたいなのに合致する部分があったみたいです。

──契約更新は年1回ぐらいのタイミングでやって来る感じでしょうか?

たぬかな:そうですね、レッドブルは年に1回ですね。でもCAGは半年に1回更新があるんですよ。半年で更新がなかった人もいたので、最初の年は私もけっこう怖かったですね。私には言ってしまえば女性って言うアドバンテージはあるんですけど、でも私はメンタルも強くないですし、表立って文句というか思ったことも言っていたので。

──確かに(笑)。契約する際に具体的にこういうことをしてくれ、みたいな指示が明文化されてたりするのですか?

たぬかな:もちろんあります。例えばレッドブルだと週に何回 Instagramを更新したりして情報を発信する、CAGだったら大会の時にはユニフォームを着て、指定されたデバイスを使う、配信の時にスポンサーさんのロゴを乗せるとか、そういうことは決まってます。まあ普段の生活に関しては……最初は言われてたんですけど、最近はそれも私のよさっていうのを認めてくださったみたいで。 SNS でしょうもないケンカをしても、あんまり怒られないですね(笑)。私はよく Twitterでアンチと戦ってたりするんですけど、いまはよさとして取ってもらえています。

──オンライン対戦のラグに関して怒ってらっしゃるつぶやきは何度がお見かけしました(笑)。

たぬかな:まあまあそんな感じです(笑)。目に見えるとムカついて戦いたくなっちゃうんですよね。それでみんなから「たぬかなってやっぱり頭悪いなー、煽り耐性ゼロやな」って思われてるところもあるんでしょうけど、みんなが真面目でいい子ちゃんっていうのも面白くないかなと思っているので。文句を言っても許される立ち位置になってからは、みんなの気持ちを代弁する気持ちで、いろいろなものと戦っていこうと思ってたりします(笑)。

アスリートではなくあくまでゲーマー
たぬかな選手の『鉄拳』観

──ここ最近の『鉄拳』への取り組み方やプレイスタイルに関しても聞かせてください。たぬかなさんはシャオユウ使いというイメージが強いのですが、昨年12月に行われた女性プレイヤー限定の大会(鉄拳最強女王決定戦“STARGAMERS COMMUNITY FESTIVAL GIRLS ONLY BATTLE”)では……。


https://www.openrec.tv/live/e5rklojq6zv

たぬかな:リロイでしたね。じつはキャラ愛とかはあまりないんですよ(笑)。『鉄拳』を始めたときはニーナだったし、「ニーナはホンマに難しいキャラだからやめとけ」って言われたらアンナに変えましたし。そこからいろいろ触っていった中で、シャオユウが一番段位が高くなった。で、段位が一番高いキャラがメインキャラだろうみたいな感じで。勝てるから使ってたというのが一番ですね。ただ男キャラを使うのは初めてかな。でも女、子ども、あと老人キャラは同じ枠ってことで(笑)。お爺ちゃんは許してねって。

──わかりました(笑)。

たぬかな:それにあの大会って去年の12月、リロイが出てから2週間後の大会だったんですよ。いまよりもめちゃくちゃ強い時期で。なので使うしかないだろうと。でも2週間しかなかったので、大会前のその期間は1日8時間以上はリロイを使ってましたね。

▲配信直後からその強さが猛威を振るったリロイ

──リロイはだいぶ調整されましたが、いま大会が開かれるとしてもシャオユウではなくリロイで出る感じですか?

たぬかな:相手に合わせて両方を使いわけますね。調整された後のリロイであっても、いままで勝てなかったような防御が硬いトッププレイヤーには、シャオユウよりもリロイを出したほうが勝てるんですよ。自分が確実に勝てると思っている相手だったり、相手キャラとの相性がよかったり、自分の中で対策を立てられてる場合ならシャオユウを出しますね。ずっと使っているから何かあったときにアドリブが効きますし。

──対策といえば、たぬかなさんはフレームや技相性を調べて知識を積み重ねて戦うタイプですか? それとも感覚で勝負する派?

たぬかな:どうだろう、大会で出てくるような使用率の高いキャラはちゃんと対策を立ててますけど、全然調べてないキャラもいますね。対策って調べただけではダメで、対策を立てたうえでその都度対戦もしていかないとダメなので……。使われないキャラを対策するよりは、みんなが使ってくるキャラをしっかり平均的に整える方向になりますね。対策ができていないキャラと当たったときは、もう殺られる前に殺るしかない! と思って攻め攻めで戦ってます。これが意外とうまくいってるので、ダメなところと思いつつもまだ直せてないですね。

──大会の形式や開催場所によって得意、不得意ってありますか? 海外大会のほうが勝ちやすいとか、ダブルエリミネーションよりじつは一発勝負のほうが好きだったりとか。

たぬかな:好きなのは圧倒的に2on2や3on3、マスターカップみたいな団体戦ですね。団体戦は個人個人の責任が軽くて楽しんで戦えて、プロじゃなかったころの気持ちでやれるのが好きです。でもプロの実績として認められるのは団体戦よりも個人戦、それもオンラインよりオフラインの大会なので、そこでの結果が一番大事だと思っています。

ただ私は、基本的に海外大会って好きではないんです。お金を出してもらって大会に行ってるからすぐに負けたら死にたくなるし、怖い。プロ同士のオフライン対戦ってやっぱり殺伐としてる部分もあるんですよ。私もちょくちょく男性のプロに勝つことがあるんですけど、向こうからしてみれば女に負けるということは、すごい叩かれることなんですよね。ちょっと差別的ではあるんですけど、女に男のプロが負けたら、周りから侮蔑の言葉まで投げられる。向こうはそれが嫌やから、私には絶対に負けたくないというのが伝わってくるんです。あとは私が勝ったときのほんまに辛そうな顔を見るのも嫌だし……しゃーないんですけどね、プロだから。

でもゲームはそうじゃないものであって欲しいと思っているんです。こんなこと言うとアスリートとしてどうかみたいなことを言われるんですけど、それはいいんです。私自身はアスリートとは思っていないので、いちゲーマーとして格ゲーが好きなだけなので。

──しかし去年の「EVO」や「鉄拳ワールドツアー」の参加者の数、あと質を考えると、もういまの『鉄拳』は、ある程度名のある人でも早期敗退があり得るレベルになっていると思いますけども。

たぬかな:そうなんですよ。海外の大会はプールを抜けるまでにかなり勝たないとダメだし、日本国内の大会はひとりひとりがマジで強い、強すぎる。好きじゃない、怖いとは言いつつ、大会の成績は国内より海外のほうがよかったりするんですよね。日本の大会のほうが好きですけど、勝ち上がれるのは海外って感じですね。

──戦う相手がわかっていて準備期間のある大会はどうですか? 「鉄拳最強女王決定戦」の決勝トーナメントがそういうタイプの試合だったと思うのですが。

たぬかな:これはちょっと偏見でもあるんですけど、女の子が使うキャラって、割と使用率が高くて簡単なキャラが多いんですよ。だからもともと対策ができていて、女性大会のときはキャラごとの対策はまったくしませんでした、元々自信があったので。でも私も使っていたリロイの対策だけはめちゃくちゃやりました。ゆうゆうさんが使ってくるだろうなと思っていたので、そこ一本に絞って対策しました。あの大会はそれがハマりましたね。

▲たぬかな選手のメインキャラでもあるシャオユウ

“引退”も見据えた未来への取り組み

──たぬかなさんはゲームメディア以外でのインタビューだったり、テレビ出演のようなゲーマー以外が目にする場で活動されることも多いと思うのですが、その際特別に意識していることはありますか?

たぬかな:一般の人向けの番組のときは、やっぱりお上品にいってますよ(笑)。ゲーマーというものに悪い印象を持ってほしくないので、そこは気をつけています。逆にゲームをしている人向けの番組だと、ちょっとくだけた感じで笑いを取ったりとか、言葉遣いもいつもの感じに寄せて、個性を出すようにしています。

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