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ソーシャルゲーム市場からの転身は成功するか?『DIMENSION REIGN』がめざす新たな挑戦【インディーゲームレビュー 第72回】

ソーシャルゲーム市場の競争が熾烈を極める中、新天地を求めてインディーゲーム市場に挑戦するタイトルが出始めた。RPGローグライクゲーム『DIMENSION REIGN』もその一つで、アーリーアクセスの強みを生かしたユニークな開発を進めている。


ゆでガエルになる前に新天地に移行する

ソーシャルゲーム市場が踊り場を迎えている。株式会社ディー・エヌ・エーは筆頭で、2019年10~12月期の決算で492億円の営業赤字に転落した。株式会社ミクシィ、KLab株式会社など11社も赤字計上だ。もっとも、これらは直近の話ではなく、2017年1~3月期から9社以上の会社が四半期決算で赤字計上を続けている。

背景にあるのが、市場の成熟に伴う競争の激化だ。開発運営費が高騰し、利益率が低下しているため、大手ほど「売れるゲーム」作りに邁進するしかない。その結果、似たようなゲームばかりになってしまい、『荒野行動』などの海外勢に市場を喰われているのだ。

こうした中、インディーゲーム市場に新天地を求める会社が現れ始めた。SteamでローグライクRPG『DIMENSION REIGN』のアーリーアクセス版をリリースした株式会社ScopeNextは好例だ。ソーシャルゲームの開発者が集まり、2019年5月に発足したスタジオで、経緯はブログ「かえるDのゲームデザインマガジン」に詳しい。それによると開発にあたり、下記の勝利目標を定めたという。

「8人で1年開発で開発費5000万円、定価2000円で5万販売で1億円。プラットフォーム手数料は差し引いての会社利益は2000万円」

日本のゲーム開発で、こうした数値目標を外部に公開する例は、極めて珍しい。失敗すれば会社の信用低下につながるからだ。失うものが何もない、スタートアップだからこそできる戦略だろう。

これに限らず、同ブログでは本作でディレクターをつとめる「かえるD」氏のゲームデザインに関する知見が惜しみなく共有されている。本連載の読者であれば興味深い内容になっていると思われるので、拝読することをオススメする。

かえるDのゲームデザインマガジンhttps://note.com/kaerusanu/n/n0039e52cc26a

『Slay the Spire』と似て非なるゲーム体験

さて、このような背景でリリースされた『DIMENSION REIGN』は、どういったゲームなのだろうか。

すでにSteamのユーザーレビューで異口同音に指摘されている通り、本作は過去にレビューした『Slay the Spire』のフォロアー的なタイトルだ。「MAPの構成が毎回変わる」「トレーディングカードゲームにおけるデッキ構築に似たメカニクスがある」「ターン制ゲームで、手札を消費して攻撃する」「アイテムや相性などで敵味方のパラメータが複雑に増減する」など、類似点は多い。

しかし、実際に遊んでみると、ゲーム体験が大きく異なることがわかるだろう。これを生みだしているのが、「ブレイクチェイン攻撃」というメカニクスだ。一定以上のダメージを与え続ければ、反撃を受ける前に敵を全滅させられるというもの。味方の攻撃値が上昇していく点や、ド派手なエフェクトと相まって、オラオラ感あふれるバトルが楽しめる。

もっとも、そのためには攻撃や手札の消費順に頭をひねる必要がある。詰め将棋にも似たパズル性をバトルに持たせているのだ。『Slay the Spire』では、操作するキャラクターが1人だったが、本作ではタイプの異なる2人のキャラクターを操作する点も、このパズルをより複雑に、そして楽しいものにしている。キャラクターの成長自由度が高い点も特徴で、プレイするたびに違った体験が得られる。

その一方で自分だけのカードデッキを構築し、磨き上げていく感覚は薄まっている。『Slay the Spire』がオーソドックスなトレーディングカードゲームの発展系だとすれば、本作はカードゲーム『ソリティア』の進化形のようにも感じられる。

ゲームの流れ

MAP上で次に進むエリアを決める

イベントが発生する。バトルや遺跡ではモンスターが出現するので、カードを出して攻撃する

バトルに勝利するとアイテムやゴールドがもらえる

経験値がたまるとジョブレベルが上がる。ただし、途中で1人でも体力がゼロになるとゲームオーバーで、スタート地点に逆戻りだ。ジョブレベルも1に戻る

「狭く深いゲーム体験」は狙い通りだが……

ただし、それだけに本作はルールが複雑で、人を選ぶゲームになっている点は否めない。開発陣はこれをUI/UXの工夫で乗りきろうとしているが、アーリーアクセス版だけあって、限界がある点は否定できない。

本作でプレイヤーがなすべきことはシンプルで、戦闘時に攻撃し続けることだ。「ブレイクチェイン状態を続けること」と「相手を気絶させること」が重要で、敵のHPゲージを破壊し続けることが求められる。そのためには、一撃で倒せる敵を優先するのが早道だ。ボスを率先して狙うことも勝利への近道となる。成長では攻撃の手数が増えるようなアイテムを優先するのがオススメだ。

もっとも、それだけではルートを制覇することは難しい。攻略のためには、カードやアイテムの文面を読み込み、パラメータの増減などを頭に入れて、最適な行動を取る必要があるからだ。そのため、大半のプレイヤーはラスボスに遭遇する前に、全滅を繰り返すことになる。

このように本作は再プレイを重ねながら、徐々にルールを理解し、最適な行動を学習していくことを魅力の源泉としている。ゲームには多かれ少なかれこうした要素があるが、本作はアーリーアクセス版だけあって、この魅力がむき出しになってプレイヤーに提示されている印象を受ける。

実際、こうしたゲームが楽しめる人であれば、本作にたまらない魅力を感じるだろう。Steam上で高い評価を得ているのも、本作の特性をきちんと理解したプレイヤーが購入している点が大きいと思われる。

つまり本作はアーリーアクセスの強みを生かして「狭く深いゲーム体験」を作ることに専念し、その範囲内で一定の成功を収めたと言える。開発陣がこれまで主戦場としてきた基本プレイ無料のスマホゲームではできない、売り切り型ゲームならではの販売戦略だ。


MAPをクリアするには大量の情報を読みこなすことが必要だ

アップデートの軸をどこに置くか

それでは、今後開発陣はどのようなアップデートを行っていくべきだろうか。大きく3つの方向性が考えられる。第一に「今のまま主要顧客層に向けてボリュームアップを続けていく」、第二に「海外の主要顧客層に向けてローカライズを行う」、そして第三に「より顧客層を広げるために、UI/UXを改善したり、ストーリー仕立てのチュートリアルを導入したりする」ことだ。

もちろん資金が潤沢であれば、すべてを並行して行った方が良いのは明らかだ。しかし、実際には優先順位をつけることが求められる。そして、それによって取るべき選択が変わってくる。このうち筆者のオススメは3番だ。現状の「間口が狭く、奥が深い」ゲームよりも、「間口が広く、奥が深い」ゲームの方が、自分の好みに合っているからだ。

誤解の無いように補足しておくと、本作においても直感的に遊べるように、UI/UXのさまざまな工夫がなされている。しかし、それでも不足していることは明らかだろう。実際、本作の画面上に表示される文字量は他を圧倒しており、さらなる改善が必要だ。ただし、それには少なくない開発工数と予算が必要になる。

それよりも既存ユーザーにしてみれば、ゲームバランスを調整しつつ、より多くのキャラクター、より多くのルート、より強大なモンスター、より多くの武器やアイテム……などを期待したいところだろう。今後のアップデートを期待して、いち早く投資したユーザーの声は、尊重されるべきだ。本作のようなコアユーザー向けのゲームがヒットする土壌も、Steamにはある。

開発陣はSNSなどで意見を吸い上げつつ、1年間かけてアーリーアクセスを続け、ゲームをブラッシュアップしていくという。その上で、どのような改良を続けていくかは、開発陣の自由だ。ただし、一点だけお願いしたいのは、どのような結果になっても、ブログなどで情報発信を続けて欲しいということだ。

実際、インディーゲームで開発状況の公開をマーケティングに活用する例は多いが、最後まで更新し続ける例は少ない。ゲームがヒットすると開発に追われてブログなどを更新する暇がなくなり、ゲームが失敗すると情報公開が恥の上塗りになってしまうからだ。ソーシャルゲームからいち早く転身を決めたスタートアップだからこそ、後に続くものの指針となることを期待したい。

■関連サイト
Steam『DIMENSION REIGN』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/1162480/DIMENSION_REIGN/
ScopeNext
https://www.scopenext.co.jp/
ゲーム開発の「規模と発明のトレードオフ」とどう戦うか?インディーゲームでローグライクを作ってみた|かえるD|note
https://note.com/kaerusanu/n/n0039e52cc26a

【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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