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『FTL: Faster Than Light』における「発掘的デザイン」の意味【インディーゲームレビュー 第10回】

 
宇宙船の船長となって銀河を旅する『FTL: Faster Than Light』はアナログゲームのプレイ体験を思い起こさせる「発掘的デザイン」ゲームだ。そこには、ただ懐かしいだけではない、デジタルゲームならではの工夫がある。そして、こうしたデザイン手法はますます重要になってきている。

発掘的デザインとは何か

出典が定かではないので恐縮だが、プロダクトデザインの世界には3つの潮流があるという。社会や生活を変え、デザイナーの名前も明記された「発明的デザイン」。デザインという概念がなかった時代から存在し、生活に浸透している「伝統的デザイン」。そして何らかの理由で途絶えたものに、現在の技術や視点を加えて甦らせた「発掘的デザイン」だ。

『FTL: Faster Than Light』もまた、発掘的デザインの好例だろう。ストラテジー要素が加わったローグライクゲームで、プレイヤーの任務は連邦の主力艦隊に重要機密を届けること。タイトルにもなっている「FTLドライブ」で宇宙船を星から星へとワープさせつつ、道中で戦闘・売買・救援といった、さまざまなイベントをこなしていく。

画面左が自分の宇宙船、右側が敵宇宙船だ。転送装置で乗船してきた敵兵士と激しい白兵戦が行われている

すべてが確率でデザインされたシンプルで美しい世界

中でも最も重要なイベントが戦闘だ。時には問答無用で襲撃してくる宇宙船もあるが、状況によっては交渉をしたり、やりすごしたりできる。戦闘時には敵味方の双方がミサイルやレーザーなどを繰り出しながら、船体の削りあいを行う。相手を撃破すると弾薬やエネルギーなどが入手でき、船体を強化させられる。銀河の全体像やイベントはランダムなので、何度でも新鮮な気持ちでプレイできる。

このように本作はすべてが確率で支配された数学的世界の中で、プレイヤーが(ルールの範囲内で)自由意志で行動していき、結果の積み重ねが一つの物語体験に結実する点に特徴がある。戦闘以外はターンベースで進行するため、『ウィザードリィ』のような古典的RPGのプレイ体験を思い出す人も多いだろう。中にはテーブルトークRPGや、ボードゲームとの相似形を見いだす人がいるかもしれない。

戦闘中に降伏の申し入れを受けることもある。受諾するか否かはプレイヤー次第だ(日本語化パッチ導入済みの画面)

リアルタイムストラテジー風のバトルシステム

もっとも本作は古典的なRPGのフレームワークを流用し、世界観を変えて現代風に仕立てあげただけの凡庸なタイトルではない。最大の理由がリアルタイムで進行する戦闘システムにある。本作の戦闘は敵宇宙船と1対1の状況下で行われ、宇宙船という共通のリソースの削りあいで進行する。この「敵味方の地続き感」が本作のプレイ体験を一層ユニークなものにしているのだ。

一例をあげると、すべての宇宙船にはエンジンが搭載され、武装・シールド装置・レーダーなどにエネルギーを供給している。攻撃時には各部位を狙い撃ちでき、先にエンジンを破壊すれば逃走される恐れがなくなる。船内で火災が発生しても、エアロックを開けて火災区域を真空にすれば自然に鎮火できる。レーダーを強化して敵船内がスキャン可能になれば、この事実がより明確に感じられるだろう。

ただし、こうした複雑な処理ができるのもコンピュータならではだ。プレイ感覚はアナログゲームに近くても、本作のシステムをすべてアナログゲームに移植しようとすると、プレイアビリティが非常に悪化してしまい、商品価値がなくなることは目に見えている。その意味で本作はデジタル技術によって過去のゲーム体験を復活させた「発掘的デザイン」の好例というわけだ。

画面左側から反乱軍勢力が迫り来る中、プレイヤーは味方の主力艦隊に向けて航行を続けていく。画面右上の「EXIT」ポイントに到達すれば次のエリアに移動できる

発掘的デザインに眠る可能性

PCゲームらしく多数のMODが配布されているのも本作ならではだ。公式掲示板では『スター・ウォーズ』『スタートレック』などの艦船データでにぎわっている。いわゆるリプレイ小説の投稿もあり、本作がプレイヤーの想像力を大いに刺激していることがわかる。有志の手で日本語化パッチも配布されているので、プレイ時にはぜひインストールをお勧めしたい。

ゲームの大作化が進展するに伴い、タイトル数の減少が続く一方で、ゲームを開発する技術自体は飛躍的に進化している。こうした中で商業的な理由から途絶えたままになっているゲームデザインの系譜が増加中だ。本作のような発掘的デザインは、インディーゲーム開発者にとって、ますます重要な視点になっていると言えるだろう。

公式掲示板で配布されている宇宙船エンタープライズ号のMODデータ。他にミレニアム・ファルコン号なども使用できる

■関連リンク
SUBSET GAMES
http://www.subsetgames.com/
Steam『FTL: Faster Than Light』のページ
http://store.steampowered.com/app/212680/FTL_Faster_Than_Light/?l=japanese
FTL (漢字あり)日本語化MOD配布ページ
https://sites.google.com/a/arutta.com/ftl_kanji_mod/

【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー