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信念と肯定。全てが叶ったRed Bull Kumite 2019 【ストーム久保の「プロ格闘ゲーマーのゲンバから!」第15回】

ALIENWEAR ZONE様をご覧の皆さま、あけましておめでとうございます! TEAM iXA所属 続投!ストーム久保です。

2020年もプロゲーマーとして生きて行くことになりました。

前回のコラムでは、「Red Bull Kumite LCQ」(Last Chance Qualifier)を抜けて、本戦へと進み始めたときの心境から執筆させていただきました。今回はその続きとなります。


LCQ優勝という出来事は、久保史上最高の瞬間でした。目映いフラッシュの嵐に、かけ続けられる祝い言葉の数々はいい思い出です。あまりにも嬉しくて、余韻にいつまでも浸っていたかったので、翌日の本戦に出るのを少しためらったくらいです。しかし、選ばれたプレイヤーしか出場できない名誉ある舞台に、単身予選から乗り込んでいくシチュエーションから得られる高揚感は「優勝」という甘い余韻をも軽く上回って私を奮い立たせました。

2019年12月22日(日) 日本・愛知にて開催された「ストリートファイターV チャンピオンエディション」(以下、『ストV CE』)の招待制トーナメント「Red Bull Kumite 2019」(以下、Kumite)は、格闘ゲームイベントの中でも類を見ない大舞台です。その開幕から、去り行く瞬間までのあいだにゲンバで経験した数々の試合や感情をお伝えしていきたいと思います。





それでは皆さま、2020年もよろしくお願い致します!

オープニング

Kumite本戦では様々な不安がありました。LCQで燃え尽きていないか? 本戦でも良いところを見せられるのか? 試合に関する不安はもちろん、選手入場の段階から不安で一杯です。

まず、私が入場一番なのが不安でした。本当に? ウメハラさんやときどさんではなく、ストーム久保? イベントの開幕が盛り上がるのか、心配でした。LCQ突破者が一番手と決まっていましたので、何とかパフォーマンスをしながら入場しようとだけ決めました。

そして、呼び出しの時間です。


不安ながらも、いざ入場してみると会場は拍手に包まれていたので、心の底から安心しました。とりあえずの不安は花道を歩いている道中、左右にある観客席の方から拍手よりも響く声で届いた応援のおかげで無くなりました。

金網リングに着いた頃には、誇り高い気持ちにすらなっていました。どんな結果になろうとも、今回のイベントは精一杯盛り上げようと決めた瞬間です。

兵どもが夢のあと

ここからは試合の前後の心境を綴ります。

ウィナーズ 1戦目vs Punk選手

ウィナーズ1戦目、あまりの強さに「ストV星人」と称されるPunk選手。


私の初戦の相手がPunk選手に決まった時の会場の雰囲気は、何となくですが「久保、運がないな~」という感じがしました。反して、当の私は運が良いと思いました。なぜなら、Punk選手はアビゲイルに対して苦手意識を持っていそうなうえに、Kumite開催の一週間ほどまえのアップデートでPunk選手の使用キャラクターのかりんの弱体化がされていた状況でした。

対して、私の使用キャラクターのアビゲイルの強化とLCQ優勝の経験を経て、自信に満ちあふれている状態になっています。

実際の試合も自信を持って強気な選択肢を選び続けたのが上手くかみ合って、大金星。Punk選手に勝利をしました。やはり格闘ゲームはメンタル、そしてキャラパワー。タイミングに感謝しつつ、次の試合の準備をします。

ウイナーズ 2戦目vs Problem X選手

次、ウィナーズ2戦目は、「EVO 2018」チャンピオンのベガ使い、Problem X選手。


Problem X選手はベガをメインキャラクターとして使いながら、サブキャラクターとしてアビゲイルも非常に高いレベルで使いこなしているプレイヤーです。アビゲイルの長所と短所をしっかり理解しているので、こちらの狙いを噛み合わせない動きは非常にやり辛く、立ち回りは終始Problem X選手のペースで進んで行きました。何度か勝ち筋に繋がるチャンスはあったのですが、Problem X選手が焦らず崩れません。自分のプレイを続ける姿に、逆に私が焦ってしまって肝心な場面でチャンスを掴めませんでした。

結果は0-2のストレート負け、完敗です。対策、立ち回り、メンタルの差が大きく出た試合でしたが、良い経験ができました。Problem X選手には、2020年の海外大会のどこかで必ずリベンジしたい選手です。

ルーザーズ 1戦目 vs Luffy選手



ルーザーズ1戦目、フランスのミカ使いのLuffy選手と対戦となりました。正直に言わせていただきますが、普通にやったら私の今のレベルだと勝てないと考えていました。しかし、当時はアップデート直後という特殊な環境だったので、急遽策を練ってみました。

新たに追加されたアビゲイルのVスキル2「カモンスペアタイヤ」は、その名の通りアビゲイルの後方から攻撃判定を持ったタイヤを召喚する技です。呼び出している最中は隙だらけで、ガードはできません。しかし、呼び出せば、その最中に攻撃をくらってもタイヤは転がってきます。ミカ相手なら、遠くでタイヤを呼び出せばそうそう咎めるのは難しいと考えて、実戦で使用しました。

予想は的中して、多少攻撃はくらっても良いので、呼び出したタイヤと波状攻撃を仕掛けることでLuffy選手を翻弄。対策をする時間がない、2先というルールと知識不足を突いた戦法で勝利しました。

後日談ですが、イベント終了後にタイヤ対策済みのLuffy選手と対戦しました。実は、タイヤ呼び出しモーションが見えたら、遠くからでも前ダッシュ2回から投げが確定します。投げを食らうと投げ演出中の相手にはタイヤがぶつからずに通り過ぎてしまうので、タイヤが機能しなくなります。結果、Luffy選手には見事ボッコボコにされました。本当、試合中に気づかれなくて助かりました……。

ルーザーズ 2戦目 vs ときど選手



ルーザーズ2戦目は、日本のスタープレイヤーときど選手です。ときど選手とは、オープニングが始まる前に選手控室で一度対戦していました。その際にアップデート後のアビゲイルの強みを見せていたので、対策を講じてくるはずです。過去の大会でウィナーズでときど選手に勝利したものの、その後ルーザーズで当たった時に動きを変えてきたときど選手にリベンジされた経験があります。

今回もそのパターンになる予感はしましたが、昔と違って今は自分ができることをやり切れば勝てる自信もありました。ときど選手の使用キャラクターは豪鬼。新バージョンでは、立ち回りは強化されたアビゲイル側に分があると考えています。しかし豪鬼の攻撃力と攻め継続は相変わらずあるので、一度流れを掴まれるとあっさり負けてしまう危険性がありました。

そこで、攻め側でも守り側でもリターンが高い選択肢を取り続けることにしました。アビゲイルの体力が増えたので、選択ミスを1度しても後半巻き返せるので相手のチャンスになる場面はこちらもチャンスとなるように、貪欲にリターンを求めて動きました。その結果、負け続けた相手にようやく勝つことができました。

LCQ決勝のINFILTRATION選手との対戦時に、何となく掴んだ集中力を発揮できたと思います。いろんな経験があったからこそ勝てた試合だったので、Kumite中で一番思い出深い試合でした。

ルーザーズ 3戦目 vs 801 Strider選手



ルーザーズ3試合目は、世界最強のG使いと名高い801 Strider選手との対戦となりました。前日のLCQ優勝後、「Kumite本戦で対戦したい相手は?」という質問に、同じくGを使用している私にとって、心の師匠と勝手に尊敬している801 Strider選手とKumiteの様なビックイベントで対戦してみたいです!と答えました。その翌日に叶うとは、私は幸せ者です。

801 Strider選手との試合は、私もGを使用しているのでGの長所・短所を理解しています。ウィナーズで対戦したProblem X選手の立場に私がいる状態なので、同じように有利な状況だと考えました。しかし、私と違って801 Strider選手はそれを含めて動きを変えてきました。

普段の801 Strider選手は、丁寧な立ち回り、驚異のガード力で攻めを凌ぎ、チャンスがあればGの爆破力で一気に倒しに来るスタイルです。しかし、私がそれを知って動いているのを読んでいたのかもしれません。倒せるチャンスがあったので起き攻めを仕掛けると、801 Strider選手は起き上がりにCAを撃ちました。801 Strider選手が固いプレイスタイルだからこそ、安心して起き攻めをしてしまい、CAが直撃して1試合落としました。


思わぬリバーサル行動に驚きながらも、私は試合中にブレることはしないようにしました。ここで次に同じ場面が訪れたとして、ビビッて起き攻めをせずに逃げられるくらいなら、CAをくらって負けほうがマシだと考えて試合を続けました。そして、1-1のフルラウンドフルセット。この起き攻めがもし通ったら勝利が決まる場面で、先ほどと同じ状況になりました。

光るEXゲージ、もし再びCAを撃たれたら流れが変わるかもしれない。ここで弱気な攻めをして、もし凌がれたとしたら温存したゲージを使って逆転される危険がある。チャンスかピンチかわからなくなりながらも、考える時間は無い。最終的に自分を通すしかない、ここまできてブレるのはナイ!と打撃を重ねに行きました。

「power to the earth 弾けろ」

画面は暗転して、Gの指先からビームが飛び出してアビゲイルが吹き飛ばされます。そこから一気に試合の流れが変わりました。気がつけばお互いに1発当てたら倒せる体力。あと1発で負ける。だから、焦るはず。そこで私がとった選択肢は、下大PキャンセルEXナイトロでした。

ここからややこしいのですが、ちょっと説明させてください。下大Pは、地上の相手にも、飛ぼうとした相手にも当たる広範囲の通常技です。これはほぼガードされますが、ここからEXナイトロをキャンセルで出します。EXナイトロは走りながら打撃と投げに派生できる技なので、走ってきたアビゲイルを見てから対処しようとすると、受ける側は面倒な読み合いを強いられます。


801 Strider選手は反応と読みも優れているので、派生前にジャンプすることで打撃と投げの択を回避してくると考えました。なので、EXナイトロからすぐに派生しないことにしました。お互いに後がない状況では、咄嗟に出してきたEXナイトロに対してバックジャンプをしてしまうのが私の経験則です。そこで、すぐに派生をしないで801 Strider選手がバックジャンプをしたのを確認してから、打撃派生を出すことでバックジャンプを狩る選択肢をしました。

……と長々と書きましたが、今思い返すと私も焦っていたんだと思います。本来ならば、そんな博打気味な行動をせずにリーチが長い通常技を振っておけば良かったです。当時の私が出した答え、下大PキャンセルEXナイトロ~バックジャンプ狩り~は801 Strider選手には当たりませんでした。801 Strider選手はEXナイトロが見えた瞬間に、前ジャンプですぐさま読み合いを回避。前ジャンプされたので、私もすぐに打撃派生を出して距離を取ろうとしましたが、隙にしっかりGの突進技を合せられて敗北しました。


Problem X選手に負けたときもそうでした。最後まで焦らずに、崩れないのが本当に強いプレイヤーなんだと。1日に2回わからせられました。

最後に

負け惜しみになってしまいますが、悔いはありません。自分のキャラクターと考えを信じて、その時に勝てる選択肢を実行したのですから。それに、負けても得たものが多いイベントでした。家紋を歌広場さんに渡して会場から去るとき、入場した時以上の拍手と声援を送っていただいたこと、生涯忘れません。格闘ゲームをやっているだけの、社会経験も無い、生産性もない人間が、あそこまで大勢の人に肯定される場に立てたことを嬉しく思います。

そして、チャンスをくださったTEAM iXA並びにスポンサーの皆さま。ずっと応援を続けてくれたファンの皆さまにも、心から感謝致します。おかげで私は生きてこられました。

LCQ、Kumite本戦の2日間は夢の様でした。イベントが終わってしばらく経った今でも、お祝いの言葉をかけてもらえることがあります。ありがたい限りです。しかし、いつまでも過去の栄光にしがみ付いているわけにはいきません。2020年のプロツアーにも参加していくので、今回のコラムにて輝かしい思い出は一度胸にしまい、改めて地に足を付けてプロゲーマーを頑張っていきます!

今後とも、私ストーム久保をよろしくお願い致します!

以上、ゲンバからお伝えしました。

写真:Takanori Yoshida

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