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2019年の自分を覆した瞬間に見えたものは!?【ストーム久保の「プロ格闘ゲーマーのゲンバから!」第14回】

ALIENWEAR ZONE様をご覧の皆さま、どうも。TEAM iXA所属 ストーム久保です。

今回は、2019年最初で最後の勝利を経験した「Red Bull Kumite 2019 Last Chance Qualifier」(以下、LCQ)について語らせていただきます。


LCQとは、2019年12月22日(日)に愛知県にて開催された「Red Bull Kumite 2019」本戦への出場権を賭けたトーナメントで、本戦前日の21日(土)に行われました。本戦である「Red Bull Kumite 2019」に出場できるのは、招待選手15人と前日開催のLCQで優勝した1人、計16人です。名誉あるイベントに入り込むべく、1日を通してLCQを戦いました。

その結果……、なんと私ことストーム久保がLCQ優勝を果たしました!


2019年は全く勝つことができなくて、ALIENWEAR ZONE様に掲載させていただいたコラムの内容もほとんど反省と挫折でした……。ですが、最後の最後に勝利の経験を執筆できる嬉しさで心がいっぱいです。

LCQでは多くの強豪プレイヤーと対戦して、どれも接戦でした。板橋ザンギエフ選手、どぐら選手、けんぴ選手にどうやって勝つか対戦前に入念に練って臨んだので、どの組み合わせを話しても面白い内容になる自信があります。

そのすべてをここに書きたいのですが、そうするとあまりに膨大な量になってしまうので、一番印象に残った対戦をピックアップして執筆させていただきます。

2019年最後のコラムはLCQ、年明けは「Red Bull Kumite 2019」本戦について執筆したものを公開する流れでやらせていただきますので、よろしくお願い致します。

大きな壁に押しつぶされる

やはり一番印象に残っているのは、LCQグランドファイナルでのInfiltration選手との試合です。それはグランドファイナルという大事な場面だから、だけではありません。私が格闘ゲーマーとして、必要だったものを手に入れた瞬間だったからです。

私はウィナーズ側でグランドファイナルに進んでいました。グランドファイナルのウィナーズ側は3回勝てば優勝、6回負けで敗退なのでルーザーズ側と比べて、余裕も情報を集める時間もある有利な状況で対戦ができます。

そんな状況が有利と感じさせない相手がルーザーズ側で私の前に現れます。韓国最強のプレイヤー、Infiltration選手です。独自のプレイスタイルと練習方法で、これまでに複数のタイトルと大会を制してきたトッププレイヤーの1人です。


Infiltration選手は多くのキャラクターをトップレベルで使いこなす器用さを持ち、今大会もエド、ジュリ、メナトと3キャラクターを使い分けながら勝ち進んでいました。

ウィナーズではケン使いのけんぴ選手に敗れることになりましたが、ルーザーズを破竹の勢いで駆け抜けていき、並みいる強豪を倒してグランドファイナルへと進んできました。

ウィナーズ側で残っている私のほうが状況的に有利なのは理解していますが、ルーザーズでのInfiltration選手の動きを見ていた会場の人達からは「Infiltrationが優勝するだろう」といった雰囲気を感じました。


正直に言うと、私は怯えていました。ウィナーズ側ですが、相手はあのInfiltration選手。リスペクトしている超一流プレイヤーのオーラに思わず気圧されます。会場と私の雰囲気を察した、稲葉、もけさん、どぐらさん、板橋ザンギエフさんたちが「大丈夫大丈夫」「いける」と励ましの言葉をかけてくれます。

「期待に応えなくては」
「ここで勝たないと……」


恐怖心を抑え込みグランドファイナルの試合へと挑みます。

複数キャラクターを使用するInfiltration選手は、的確に私の使用キャラクターに対してアンチピックをしてきます。こちらも負けじとアビゲイルとGを使用してInfiltration選手に対抗しますが、キャラクターの読み合いも、攻防の駆け引きも負けてしまって、終始Infiltration選手のペースで動かされて、あっという間に1-3のスコアでリセットされます。

次に3本負けたら終わり?

2019年の最後にこうして決勝まで来れたのに、あとわずかのところで終わってしまう。ここまで上手くいっていただけに、怖くてたまりませんでした。

リセット後の初戦は、手ごたえがあったGをまず最初に出して、メナトとエドに対して先手を取ろうとしました。しかしInfiltration選手は私の考えを読んだのか、これまで出してこなかったジュリを初戦に出してきます。


Infiltration選手のジュリは、2018年に多くの大会で活躍した持ちキャラクターです。当然のように処理される形で負けてしまって、もはやサブキャラクターのGを出す自信すら無くなってしまいました。

メインキャラクターのアビゲイルでこの悪い流れを断ち切ろうとしますが、せっかく得た起き攻めのチャンスが毎回さばかれます。打撃を選んだらガード、投げを選んだらバックステップで逃げられる。こちらとしては選択肢を散らしているはずなのに当たりません。

絶望的な読み負けで2戦目も負け。リセット後、すぐにInfiltration選手が優勝にリーチをかけます。こんなにも巨大な壁にぶち当たる……、いえ、押しつぶされるとは思いませんでした。

世界が変わった瞬間

0-2となり、あと1本負けたら終わりです。

会場内はすでに「Infiltration選手おめでとう」というような雰囲気が漂っていました。そんな雰囲気を、私自身も出していたのかもしれません。

不思議なことに、ここまで実力負けを感じさせられると清々しく思えました。始まる前に私の中にあったはずの恐怖心は、いつの間にかInfiltration選手への尊敬へと変わっていて、こう考えるようになりました。

「こんなにも凄いプレイヤーが私に勝って優勝して『Red Bull Kumite 2019』に出場するなら、それはそれで良いかな。きっと心から応援できるプレイヤーだ」

「もう勝てる気はしないけど、まだ対戦できるなら悔いは残したくない。だから一番好きで、一番やり込んできたアビゲイルで最後まで出し切って楽しもう。それで帰り道に、『Infiltrationさん、強かったー』って言いながらひつまぶしでも食べよう」


悔いは残さないーーよく大会前に言われたり、自分に言い聞かせる言葉です。

しかし、実際に実行できたことは1、2回ほどです。ほとんどの場合は勝たないといけないプレッシャーに勝手に負けて、自ら動きが崩れていったり、勝ちに固執するあまり、1ラウンドしか取れないような戦法を使ってしまうことを、2019年は何度も経験しました。

Infiltration選手に0-2で追い込まれたとき、心の底から悔いは残したくない気持ちになった瞬間、私のあらゆる感覚がゲームの中に入った感じがしました。

言語化が難しくて意味不明だと思いますが、言うならゲームの画面内以外の世界は存在しない、対戦に関する情報以外完全にシャットアウトされるような、そんな普段味わったことが無い奇妙な感覚でした。

いつもと違う感覚を感じながらも、思考は止まりません。

これまで負けた5つの試合を全て思い出して、隙、癖、穴を探して、対戦中にいけると思いついた行動は、直感でOKを出して実行してみる。
それでも足らない時は、全力で事故らせて運に任せる。いつもなら躊躇する選択肢も、自分が納得しているから迷いなく選び続けられる。

常に負けても後悔しない選択肢を、おそらくあの時に全てやりました。

この日は運が良かった日だったのかもしれません。

調整でアビゲイルが強化されて、poolにいるはずだったプロプレイヤーが辞退していたり、会場にいる選手に協力してもらって対策を練れたり、励ましてくれる友人たちがいました。様々な要素が私の味方をしてくれたと言っていいでしょう。

もしも、もう一度同じ様に勝てるかと言われても正直自信はありません。なので今回ばかりは、声高らかに言わせて頂きます。

「LCQ、優勝しました!」

これまで結果を出すことができずに、長い間苦しんでいましたが、長い目で見てくれてサポートしてくださったTEAM iXA、スポンサー様、ファンのみなさまに良い報告ができて心から嬉しいです。


今回得たものは、本選出場権だけではありません。自信や悔いを残さない気持ち、集中力や心構えなど多くの目に見えないものを手に入れた気がします。今後の試合でも、あの感覚を忘れないようにこれからも精進していきます!

さて、今回はここまでにさせていただきます。続く「Red Bull Kumite 2019」本戦の話は、次回の2020年1月頃に掲載させていただきますので、それまでお待ち頂ければ幸いです。世界のトッププレイヤー達との試合を紹介しますので、お楽しみに。

それでは皆さま、来年もTEAM iXA ストーム久保を宜しくお願い致します! 良いお年を!

写真:Takanori Yoshida

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【コラム】ストーム久保の「プロ格闘ゲーマーのゲンバから」

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