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【プロゲーマー・gappo3のメタゲームへの適応力】第4回 『オーバーウォッチ』における良質なコミュニケーションとは

文●gappo3

第1回記事では「メタゲーム」について、第2回記事では「アルティメット」、第3回記事では「マップ」について扱ってきた。これらどれもが『オーバーウォッチ』において大変重要な要素となっているが、特に扱いたかったテーマが残っている。それは「コミュニケーション」である。

e-sportsにおけるボイスチャットの重要性

コミュニケーション、つまり『オーバーウォッチ』のゲーム内でいうとラジオチャット・ボイスチャット・テキストチャットのことを指しているが、これがいかにゲームの進行・ゲームプレイヤーのパフォーマンスに影響を与えるかは想像に難くなく、また学会誌・論文等でも明らかになっている。

今回は戦術的局面におけるボイスチャット(以下:VC)について語らせてもらおう。まず『オーバーウォッチ』は1人でプレイするゲームではない。チームメイトだけで6人、相手のプレイヤーも含めると12人となり、12人分の視点・思考が混在しているゲームである。誰が何を見ているか、誰が何を考えているのか。その情報を一切チームメイト同士で共有せず、流れるままに漫然とゲームを進めてしまった場合、見えてくる景色は大分違うものになってしまう。

VCでしっかり意思疎通を行えば、戦況を一変させることも

一例を出そう。自分が使用しているヒーローがラインハルトだとする。あなたは最前線で相手の攻撃を抑えるために盾を張っていて、スキルクールダウンの合間に盾を休めようとする。その瞬間、盾裏にいたルシオがスパムを喰らって倒されてしまった。結果、人数の差によって味方は崩壊、あえなくカートを押されてしまった……。

このとき、もしVCなどで「盾を休める」ことを伝えていれば、味方は死ななかったかもしれない。そんなのスパムを喰らった味方が悪い、と考える方もいるだろう。しかし盾のHP管理はラインハルトがもっとも正確に把握しており、また「盾のHPが○○を切ったら盾を休める」なんて判断基準は個々人であまりにも違いがある。そんな複雑な盾を休めるタイミングを「雰囲気で察せ」で片づけ、負けてしまうくらいなら、VCをしたほうが手早くかつ確実な解答となる。

ほかの例として、ゲンジがウルトを使って攻撃を仕掛けるタイミングで、アナのナノ・ブーストをゲンジに使用することがある。このときにありがちなのが、アナがナノ・ブーストを付けられず、ゲンジ単体でウルトを使ってしまうことだ。ナノ・ブーストを貰った状態のゲンジのウルトは非常に強力なため、多くの地域・広いレート帯で使われているお決まりのコンボではあるが、アナとゲンジの立ち位置によっては物理的にコンボが成立しない場合もある。これに関しても、事前にVCで打ち合わせをしていれば成功確率はグッとあがる。段取り8割ということだ。

既存のスポーツと比べると、e-sportsと呼ばれるPCゲームなどによる競技はかなり様式の違うコミュニケーションの形を取っている。たとえば、サッカーではゴールキーパーがフォワードの選手に対して細かい指示出しをすることはできない。大声で意思を伝えるので精いっぱいだ。野球ではベンチからグラウンド内の選手に対して指示出しをする際、ブロックサインなどを使う。敵側に作戦が伝わってしまうリスクがあるため、声で直接やり取りをすることは難しいからだ。だが『オーバーウォッチ』などゲームの場合は、どんなタイミングでも隣の人間と喋るように意思疎通を図ることができる。明確に報告できるし、作戦も伝えられるし、相談もできる。

VCを使わず放棄するというのは、『オーバーウォッチ』では途轍もなく手痛い。このゲームはスタンドプレイで覆る領域が非常に狭いからだ。1人で6人倒しているように見えている場面でも、実際は味方の協力でその場面は成立している。そのような状況は洗練された個人の力量と、柔軟なコミュニケーションによって生み出されているのだ。

パフォーマンスをあげるためのコミュニケーション

6人分の視野と思考の共有。非常に難しいテーマではある。VCに専念しすぎてプレイが雑になっては元も子もなく、かと言って黙っていては味方にとってマイナスになってしまうかもしれない。どのようなVCをするべきかは場面によって多種多様であり、そのバランスを追い求めるのはかなりシビアな戦いだ。だが、追い求める価値はある。

VCは、多くの場面で活かすことのできる重要な手段である。チームプレーの礎であり、最低限の能力であり、最高峰の連携力を生み出す核なのだ。そしてVCが大きな影響を与える重要な点として、チームのパフォーマンス管理というものがある。これが第2のテーマだ。

これに関しては多くの追求をする必要もないだろう。経験則から理解している読者の方々もいるだろうし、直観的にわかる方も多いはず。ジョージタウン大学の教授クリスティーン・ポラス氏によると、以下のとおりである。

1.直接暴言を吐かれた人は処理能力が61%、創造性が58%低下する
2.自分の所属しているグループに暴言を吐かれた人は、処理能力が33%、創造性が39%低下する
3.他人が暴言を吐かれるのを目撃しただけで、処理能力が25%、創造性が45%低下する

このようにマッチングに暴言が関わってくるだけで、個々の能力は目に見えて落ちるということがデータとして表れているのだ。

暴言が敵・味方のチームに与える影響は決して低くない

暴言だけではない。人と人との関係性において、その関係性をねじ曲げてしまうような言動というのは、チームにおいてマイナスでしかないのである。

勝利を目指すあまり、悪辣なコミュニケーションを取ってしまうのは、競技プレイヤーにおいては珍しくない。勝利に本気だからこそ言動が荒れてしまうのは、確かに理解できなくはない。しかしその悪辣なコミュニケーションがチーム内の許容量を超えてしまえば、それはただの害である。本気のプレイヤーであればあるほど「チームの許容量」と「自分の言動」を天秤にかけ、バランスをとる。チームのパフォーマンス管理の視点で考えるならば、やはりレイジやティルトというのは極力減らすことが理想的であり「本気の証」なのだ。

さらに、上記はマイナス面におけるパフォーマンス管理だが、プラス面におけるパフォーマンス管理、つまり士気を高めるようなVCを行うことも同様に重要となる。特に士気を高めるのは形式的、義務的な決まり文句では一切務まらない。心を込めてコミュニケーションを取らなければ、相手にはなかなか伝わらないものだ。人と人との関係性で論理というツールは影を潜める。相手への思いやりや自分の内面を伝える真摯なコミュニケーション等が、チームの士気をより良いものにしていくのである。

さすがにランクマッチなどの一期一会の場面でそこまで本気でコミュニケーションを取るのもどうかとは思うが、このようなメンタル面に対する影響はランクマッチでも十全に発揮されてくるので、少なくともマイナス面のコミュニケーションは取らないように心掛けていきたい。

コミュニケーションはあまりにも重要すぎて、もはやゲームの枠には収まり切らない要素である。その影響たるやウルト管理やマップ把握度に匹敵するものがあるのだ。正直、今回の記事だけではまったく語りつくせておらず、要点をまとめたに過ぎない。語れることはまだまだ大量にある。

最後にこれだけは伝えておきたい。ウルト管理やマップ把握というのは、チームで誰かしらが行っていたらある程度共有できる事柄だ。ハッキリ言ってしまえば知識でしかない。正確な情報を言える人が1人でもいれば、それで事足りることが多いのである。
だが、コミュニケーションというのは知識ではない。人の性質であり、良いコミュニケーションというのは習得するのが非常に難しい。またコミュニケーションには悪貨と良貨の関係性とよく似た特質があり、良質なコミュニケーションよりも悪辣なコミュニケーションのほうが影響力が高く、悪辣なコミュニケーションは多くの良質なコミュニケーションを潰してしまう場合が多い。これがチーム単位でのコミュニケーションの難しさである。

だからこそ、良質なコミュニケーションを持つ人はそれだけで、途轍もない価値があるということだ。知識では得られない性質である。チームによっては、もしかしたらあなたにしかない能力かもしれない。それがチームを形作る要になりうるのだ。

まだ語り足りないがそれはそれでキリがないので、以上で今回の記事を終えようと思う。

それでは、よいオーバーウォッチ・Lifeを!

■プロゲーマー・gappo3のメタゲームへの適応力
第1回 『オーバーウォッチ』のメタゲーム適応の難しさ
第2回 『オーバーウォッチ』はメタの変化に左右されない「アルティメット」を使いこなせ
第3回 『オーバーウォッチ』におけるマップ理解度の重要性

■gappo3選手のプロフィール
創設メンバーにして優れた戦術家。常に各国の試合を研究する分析家であり、敵の視線の動きから導く独自の判断基準と、卓越した洞察力を持ち合わせている。タンクプレイヤーとしてこれまでに多くの最善手を打ち出し、何度もチームを窮地から救い出してきた。リーダーNoanoa曰く「Green Leavesの精神的支柱」と言うほど、メンバーの誰からも頼られ慕われているもう一人のリーダー。

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