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『ロンリー・マウンテン・ダウンヒル』なぜ画面の下にむかって進むゲームは少ないのか?【インディーゲームレビュー 第64回】

自転車のダウンヒル競技をテーマとしたユニークなゲーム『ロンリー・マウンテン・ダウンヒル(Lonely Mountains: Downhill)』。本作はまた、画面の下に向かって進むゲームという点でも異色の存在だ。3Dゲームならではの奥行きの概念をふまえて考察すると、本作の優れたゲームデザインが浮き上がってくる。


下向きに進むゲームが少ない理由

世の中には星の数ほどのゲームが存在するが、画面の下に向かって進むゲームは少ない。自分の知る範囲でいえば、井戸の底に落下しながらモンスターを退治していくアクションシューティング『Downwell』程度だ。

なぜ画面の上方に向かって進むゲームばかりなのか。理由の一つに人間は「上方向」に対して、未来や可能性を感じる点があげられるだろう。これからどうなっていくか不明だからこそ、その先を知りたい、到達してみたいというわけだ。これに対して「下方向」には過去や大地といったイメージがつきまとう。わざわざ遊ばなくても結末が予想できるというわけだ。

ただし、このことは「画面の下方向に向かって進むゲーム」を作れば、差別化が図れるということでもある。もっとも、そのためには適切な配慮が欠かせない。こうした中、マウンテンバイクを操って山中を駆け回り、タイムを競うダウンヒル競技をテーマとした『ロンリー・マウンテン・ダウンヒル』は、目のつけどころが素晴らしいタイトルだといえる。山頂からふもとに下りる行為は、不安定な場所から安定した場所に移動することと同義語だからだ。実際、本作で無事ゴールすると、どこか我が家にたどり着いたような安堵感が得られる。これは理由があってのことなのだ。

『Downwell』

ジェットコースターライクなプレイ体験

もっとも、ただ下に向かって進めば良いというものではない。本作が非凡なのは、3Dゲームならではの見せ方にこだわっている点だ。同じように山の頂きからふもとに向かって移動するゲームといえば、スキーゲームがあげられる。しかし、これらの多くでは、カメラがプレイヤーキャラクターの背後にあり、追従して移動する。これに対して本作では、自転車の向きにかかわらずカメラの向きが一定だ。自転車を少し離れた場所から、ラジコンを操作するように操るスタイルを採用しているのだ。

この意味はゲームを遊ぶと、すぐに明らかになる。自転車がカメラに正対している時は、必ず勾配がきつくなる。コースの先が見えにくくなることも相まって、スピード感は抜群だ(そのぶんミスの危険性も高まる)。これに対してカメラが自転車の後を追従する(=自転車が手前から奥に向かって移動する)時は、勾配が必ず緩やかになる。その結果、自転車の速度も自然と緩やかになり、ミスのリスクも低くなる。自転車が画面の左右に向かって移動する時は、この中間になる。

つまり本作は3Dゲームならではの多彩なカメラワークとコースレイアウトの組み合わせで、オフロードを走り抜けるリズミカルな体験を自然と生み出しているのだ。これはジェットコースターで得られる体験に近い。ジェットコースターでは、ただコースを滑り落ちるだけでなく、適度に速くなったり、遅くなったりと、緩急を意識したコースレイアウトが行われている。同じ速度で滑り落ちるだけでは、感覚が麻痺してしまうからだ。本作でも、これと同じテクニックが用いられている。

カメラが自転車に正対している状態。下り坂を一気に駆け下りる一方で、画面下の状況がわからず、スリルは満点だ

カメラが自転車を横から捉えている状態。速度は低下するが奥行きがわかりにくく、気を抜くと激突してしまう

カメラが自転車を追従している状態。いわゆるビハインドビューだ。誇張された被写界深度とあいまって、奥行きがもっとも感じられる

スピードコントロールとの関係性

もっとも、ジェットコースターと異なり、本作ではプレイヤーが自転車の速度を自在にコントロールできる。加速とブレーキ、そして一定時間だけ急加速できるスプリントだ。そのうえ、決められたルートを通らずに、コースをショートカットできる自由度も持ち合わせている。これらのテクニックを駆使して、少しでも短いタイムでゴールをめざすことがゲームの目的だ。操作が独特で最初は慣れが必要だが、すぐに自由自在に自転車を操れるようになる。その頃にはすっかりハマっているだろう。

この時、自転車の速度調節とショートカットがゲームの難易度を動的に調節している点にも注目して欲しい。実際、本作はコースをクリアするだけなら、それほど難しいゲームではない。ブレーキをかけながら、ゆっくり走行すれば良いからだ。もっとも、実績を解除するためには、より短いタイムでクリアする必要がある。ただし、スピードを上げすぎたり、道なき道を走ろうとしたりすると、その分だけミスするリスクが高まる。適切なバランスはどこか? それはプレイヤーの技量次第というわけだ。

このように本作は実際のダウンヒル競技をベースとしつつ、巧みなコースレイアウトとカメラワーク、そして車体の速度調節で、唯一無二のゲーム体験を創り出すことに成功している。というより、この3要素が本作の根幹だと言えるだろう。ローポリ風味のグラフィックで豊かな自然を描き出すビジュアルワークも素晴らしく、コーナーにあわせて画面がクルクルと回転する演出と相まって、見ているだけで楽しい。ムダな装飾を極限まで落とした、インディーならではのゲームだといえるだろう。

コースは全4種類で、それぞれ4つのレベルがある

実績を解除するにつれて、車体を新しくしたり、カラーリングを変えたりできる

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■関連リンク
Steam『ロンリー・マウンテン・ダウンヒル』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/711540/Lonely_Mountains_Downhill/
『ロンリー・マウンテン・ダウンヒル』公式サイト
https://lonelymountains.com/
Steam『Downwell』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/360740/Downwell/
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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