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『Rugby Champions』ゲームだから理解できるラグビーのリスクとリターンの本質【インディーゲームレビュー 第62回】

ラグビーワールドカップ2019で盛りあがった日本列島。一方でルールの理解不足で十分に楽しめなかった人もいるだろう。そもそもラグビーのリスクとリターンとは、どこにあるのか。『Rugby Champions』をプレーすると、一見複雑にみえるラグビーのルールにかくされた本質的な要素がよくわかる。


毎年最新版が発売されるサッカーゲームに比べて、長年不遇をかこってきたのがラグビーゲームだ。もっとも、これにはサッカーとラグビーの競技人口の違いに加えて(=ゲームの見込み販売数に直結する)、選手AIを開発するための難易度の違いがある。サッカーもラグビーも、ゲーム体験の鍵を握るのはCOM選手の動きだ。しかし、サッカーのチームが11名で構成されるのに比べて、ラグビーは15名におよび、ゴールキーパーも存在しない。そのため本格的なスポーツゲームの発売事例は少なかった。

しかし、こうした状況も徐々に過去の話になりつつある。2019年9月にリリースされた『Rugby Champions』は好例で、ラグビーの魅力をかなり高いレベルで体験させてくれる。そのため、ラグビーワールドカップ2019日本大会を今ひとつ楽しめなかった人にお勧めしたい。ルールに隠れて見えにくい、競技としてのラグビーの本質が、ゲームを遊ぶことで良く理解できるからだ。これこそが、体験型メディアであるゲームならではの魅力だろう。

パスとキック、それぞれのメリットとデメリット

陣取り合戦というラグビーの本質が良くわかる画面レイアウトだ

ラグビーの目的は制限時間内に相手より多く点数を上げることだ。点数を得るにはトライ(=敵陣インゴール内の地面にボールをつけること/5点)、ゴールキック(トライ後に攻撃側の選手がボールをキックし、ゴールポストの内側をクロスバーの高さを超えて通過させること/2点)、ドロップゴール(プレー中にボールを地面に落とし、跳ね返ったボールを蹴ることでゴールキックを成功させること/3点)などがある。そのためにはボールを敵陣奥深くまで移動させなければならないのは、あきらかだろう。

その一方でラグビーには、キック以外でボールを前に移動させてはいけない、というルールがある。選手がボールを前方にパスするだけでなく(=スローフォワード)、前方に落とすだけで(=ノックオン)反則なのだ。また、ボールより前方にいる選手がプレーに参加すると、オフサイドの対象になる。これに対して守備側はボールを持っている選手以外にタックルをしてはいけない。つまり、上空から見るとボールを持っている選手を先頭に、互いに陣取り合戦を行うスタイルとなる。

アングルなどを調整しつつ、名場面をリプレイで振り返ることもできる

それでは、この状況下で攻撃側が取り得る効果的な戦術はなんだろうか。まず、ボールを自分より後方の選手にパスしながら前進することがあげられる。ボールを保持する選手を切り替えつつ、守備の穴を抜いて一気にトライをめざすのだ。ボールを手で直接投げるため、相手に奪われるリスクもおさえられる。しかし、敵側もそれにあわせて対処してくるため、実際には前進するのが難しい。つまり、パスはローリスク/ローリターンの戦術なのだ。

これに対して一気に距離を稼ぐ方法もある。それがボールを前方にキックすることだ。パスするより、はるかにボールを効果的に移動させられる。ボールを高く蹴り上げ、いち早く落下地点にたどり着いたり、ボールを低く蹴り転がしたりして、ボールを再びキャッチして前方に進むやり方だ。しかし、ボールの移動距離が伸びれば伸びるほど、相手にボールがわたるリスクが高まる。つまり、キックはハイリスク/ハイリターンの戦術となる。

もっとも、実際にはこれ以外にさまざまな戦術やフォーメーションが存在し、複雑なゲームが組み立てられていく。しかし、ラグビーのルールの本質は「ローリスク/ローリターンのパスと、ハイリスク/ハイリターンのキックを状況に応じて切り替えながら、ボールを敵陣インゴールまで運ぶこと」にあるといえるだろう。少なくとも、このことを知っているだけで、ラグビー観戦はぐっとおもしろくなるはずだ。そして、このことをラグビー初心者に手軽に理解させられることが、本作の存在意義なのだ。

ゲームと競技との理想的な関係をめざして

ゲームの途中で終了し、その後の展開を自動演算させて結果だけをみることもできる

このラグビーというスポーツをゲーム化するにあたり、『Rugby Champions』ではさまざまな工夫がなされている。すぐに目につくのが、フィールドがサッカーゲームのように左右ではなく、アメフトゲームのように前後に分かれていることだろう。陣取り合戦というラグビーの本質を表現する上で、優れたやりかただ。もっとも、フィールドを前後に分けると、対戦プレーには適さなくなる。そのため、本作も一人用に特化した作りで、大会を通してチームを強化していく遊びがメインになっている。

また、ゲーム中にワンボタンで、一時的にスローモードになる機能も備えた。ボールをキックする際にスローモードにして狙いを定めたり、強さを調整したりして、ボールを蹴り出すことができるのだ。これにより、キックの戦術性がより高められている。パントキック(高く蹴り上げる)だけでなく、グラバーキック(ゴロで転がす)など4種類のキックも切り分けられる。これに対してパスでは、隣の選手にパスするだけでなく、一人飛ばして遠方にパスすることも可能だ。

もっとも、こうした複雑な操作を可能にするため、本作はゲームコントローラー必須のタイトルとなっており、操作もかなり複雑だ。そのため初心者にはハードルが高かったが、アップデートでコントローラー操作のガイドが画面上に表示されるようになり、一気に遊びやすくなった(必要がなければ非表示に切り替えられる)。日本語に対応していないが、ストーリー要素に乏しいため、メッセージの意味がわからなくても十分に楽しめるだろう。

1995年と2019年のラグビーワールドカップ大会に準じた選手が収録されているが、ワールドラグビー公認タイトルではないため、実名選手は存在しない

試合で勝利するともらえる成長ポイントを使用し、選手のスキルを伸ばすことができる

ただし、改善点が残されている点も確かだ。最大のポイントは選手AIの強化で、まだまだ非現実的な動作をする選手が見受けられる。プレイヤーが操作する部分と、COMによるシミュレーション部分との切り分けも今ひとつだ。ゴールキックは好例で、アクション要素はあまり介在せず、ゴールポストまでの距離と角度、そして選手の能力で成功率が変化する。プレイヤーのスキル度合いを調整できても良かったように思える。

もっとも、これまで進化の歩みが乏しかったラグビーゲームで、一定レベルの遊べるゲームが登場してきたことは高く評価したい。「ラグビーに興味があるけれど、ルールが良くわからない」という層に対して、最適なソリューションになるからだ。ゲームで疑似体験できることが、ルールの理解につながり、競技人口やファンのすそ野が広がる。それによってさらにゲームがヒットして、内容がグレードアップしていく。こうした好循環が生まれていくことに期待したい。

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■関連リンク
Steam『Rugby Championship』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/939350/Rugby_Champions/
Alternative Software公式サイト
http://www.alternativesoft.co.uk/
絵でわかるラグビー基本編:日本経済新聞
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/rugby-rules/
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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