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【インタビュー】「有機ELはクリエイターには危険な画質です!」『鉄拳』シリーズプロデューサー原田勝弘氏

「バンダイナムコエンターテインメント」は6月2日に格闘ゲーム『鉄拳』シリーズの最新作『鉄拳7』をSteamにて発売する(PS4/Xbox One版は6月1日発売)。

この『鉄拳』シリーズのプロデューサーを務める原田勝弘氏に、有機ELディスプレイを搭載した「New ALIENWARE 13」(2017年1月20日発売)を使って頂く機会を得た。原田氏はゲームクリエイターとして数々の名作を世に送り出してきたが、その一方で大のゲーム好きのプレイヤーであり、またPCに関しても見識が高い。その原田氏に「New ALIENWARE 13」はどんなPCなのかインタビューを行った。

「New ALIENWARE 13」について

――「New ALIENWARE 13」を最初に見た印象を教えてください。

原田氏:第一印象は良い意味で「小さいな」と思いました。僕は元々デスクトップPCユーザーなので、性能のためにはPCのサイズなんて良くも悪くも気にしません。性能のためには大きい筐体であっても構わないと思っています。ですので、普段僕は水冷ユニットを搭載した大型の自作PCを使っています。もちろん、CPUやグラフィックボードはハイエンドの物を搭載していますし、電源も1200Whクラス。水冷システムもCPUとGPUで別々のユニットで、更にそれぞれのポンプを外部の独立した電源で駆動させたりと、これでもかというほど色々なパーツをゴテゴテと設置・搭載し、消費電力は正直エコロジーとは程遠い仕様です。快適なゲーム環境という観点しかなかったので、PCの見かけとかスタイリッシュさには、普段は鈍感なんですよ。

そういう意味で言うと、「New ALIENWARE 13」はパッと見たときに、「ハイエンドノートPCなのに、なんてコンパクトなんだろう」と珍しくパッケージを開けて思いました。また印象的で斬新だったのが、液晶が開くヒンジの位置ですね。普通のノートのように2つに折れるタイプではなく、冷却ユニットを背にして液晶が立つような機構は凄く合理的です。

ノートPCというより、平たいPCの上に液晶タブレットが立っているようなデザインだと思いました。そして、ディスプレイ部分が凄く薄くて驚きました。

「New ALIENWARE 13」は液晶の背面部分に冷却ユニットが突起するようにデザインされている

僕が以前個人で買ったノートPCは、かなり古くてWindows 7の時代です。この頃は、ちょうど企業でも本格的にデスクトップPCからノートPCへ切り換えようというタイミングだったと記憶しています。それもあって、会社に高性能なゲームにも使えるハイエンドノートPCが何台か置いてあったり、僕個人でも検証用に複数のノートPCを持っていたりもしました。

その頃のハイエンドノートPCといえば、とにかく大きくて分厚くて、デザインが無骨だったなという印象でした。もちろん高性能なパーツを搭載していれば、廃熱の問題がありますし、それを考えれば当然なんですけどね。



――ALIENWARE自体のデザインの変化にも驚かれたということですか?

原田氏:僕自身のALIENWAREのイメージも凄く昔のモデルで止まっていたんだなと実感しました。ALIENWAREを初めて見たのはWindows XPより前の時代ですね。僕はPC洋ゲーマニアだったのと、元々海外出張が多く世界中駆けずり回っています。そんな中、北米のPCショップなどでよく見かけた昔のALIENWAREは、無骨で“大きい事は良いことだ”という古典的なアメリカの考えを地で行っている印象がありましたね。

小型化とかデザインよりもハイスペックに命を賭けている。ALIENWAREはそんなイメージでした。

しかし、この「New ALIENWARE 13」を見て、昔よりも一気にコンパクトでかつスタイリッシュになったもんだなあと思いました。もちろん、デザインとして一貫したALIENWAREとしてのDNAというか雰囲気、特に前面の斜めの筐体カットなんかは残ってるのですが、まず全体が薄くなってて、トレードマークのエイリアンのロゴが控えめになったりと、とにかく高級そうなデザインになりましたね。

――実際にPCとして操作してみた感触はどうでしょうか?

原田氏:僕はそもそも自分が使うキーボードにこだわりがあって、この7年ぐらいは「Key Tronic」製のキーごとにストロークが違うものを会社でも家でも使っています。ノートPCを使うときにも、基本的にこのキーボードを接続して使います。

だからノートPCのキーボードって、僕にとっては緊急事態用としか思っていなかったんですよ。なぜかというと、キーを押す度にパチャパチャと音がするあの感触が好きではなくて。

でも「New ALIENWARE 13」を使って良いと思ったのは、ストロークがちゃんとあるところです。キーストロークがしっかり感じれて、押している場所も分かるし指へのフィードバックもしっかりと伝わってくる。これは良いなと思いましたね。

この薄さのノートPCで、よくこのストロークを確保しているなと。他の機種のキーボードをそんなに触っていないですが、「New ALIENWARE 13」は明らかに異質なキータッチだと思いました。キートップにバックライトもちゃんと付いていますし、タッチパッドも触ると色が点灯します。

これは思わず人に見せたくなりますね。「これすごくない?色が変わるんだよ」って(笑)。この色に関しては、僕は青か白が好きですね。暖色系にもできますが、熱を持っていると錯覚するようで好きではなくて。
 
――今回は「New ALIENWARE 13」の有機ELディスプレイモデルを使って頂いておりますが、画質や、格闘ゲームに大切な応答速度はどうでしょうか?

原田氏
:まず応答速度から言うと、今の最新ビルドのPC版『鉄拳7』でテストしても応答速度は問題ないです。昔の有機ELは応答速度が遅いというのが欠点でしたが、この有機ELは格闘ゲームでも十分な応答速度ですね。

2010年以前までの液晶ディスプレイだと、画質向上エンジンやチップの影響なんかで下手すると5フレームも遅れてしまう製品さえありました。5フレームも遅れるとコンボなんか入らないですよ。なので、ディスプレイの応答速度は格闘ゲームにとってとても重要です。ですが、「New ALIENWARE 13」の有機ELディスプレイであればコンボとかも遅延なく技が決められます。

画質に関しては、ちょっと他人とは違う観点が頭に浮かびました。「このディスプレイは“危険”だ」と。どういうことかというと、普段一番見慣れているもので画質を比較しようと『鉄拳7』で画質を見たんです。今まで様々なディスプレイで画質を見てきていますが、有機ELで見たのは初めてでした。それで見たらまず最初に「ギョッ、これはイカン」と思いました。

なぜかって、開発中で映像が未調整な段階でも綺麗に見えすぎてしまうんです。映像全体がすごく艶っぽい。黒色の締まりが良くて、金属のスクラッチのあるような絵とか、きめの細かい明暗がしっかりした絵とか凄く綺麗に出るんですよ。本当の黒色が出ている感じです。液晶ディスプレイのように遮光して黒を作っていないので、白っちゃけていない。3Dのプリレンダリングだろうがリアルタイムだろうが、2DのUIだろうが関係なく全部綺麗に見えちゃうんですよ。

例えば、黒地に表示される『鉄拳7』のロゴは浮き上がって見えるんです。これを逆に現場のデザイナーとかに与えると、見た目が高画質なので「よしよし、これで良い」となってしまって、元素材をそれ以上作り込まなくなります。つまり早々に“大リーグボール養成ギプス”を外している状態になってしまいます。

『鉄拳7』のロゴ。有機ELで見ると浮き上がって見えると原田氏は語る

やっぱり素材を作っているとき、ゲーム開発中はギプスをつけていないと。外した瞬間に体が軽いと錯覚するのは、本来の実力とは違いますからね。なので、この有機ELディスプレイでプレビューする時は、全部ゲームの映像が出来上がったあとに“ご褒美”として見るものだ、と思いました。開発中にチェック用ディスプレイとして使用してはダメなディスプレイです。こんなのを検証に使用すると、絵の部分はどんなデバッカーでも高得点を付けてしまいます。


最近のディスプレイやテレビは、色やディテールに補正が掛かるようになっている機能を保有しているものが多いので、クリエイターが想定している映像よりも色が鮮やかに出ている場合もあります。例えば赤色などは補正エンジンのせいで本来の色の深みが消えて、鮮やかすぎるキツい発色をしてしまうケースがありますが、この有機ELは元色の良い発色を失わずに画質の全体にブーストが掛かるのが凄いですね。

『鉄拳』シリーズは特に黒と赤をイメージカラーとしてよく使うので、その分、この有機ELで色々な人に『鉄拳7』を見せると「鉄拳、凄く綺麗に仕上がりましたね」とか、「前に見たときよりも綺麗になりました」と言って貰えます。実はディスプレイが違うだけなんですけどね。

たまたまアメリカから出張してきていたPR担当に見せたら、「これはPRに使える!」と言っていました。イベントなんかではこの有機EL搭載のALIENWARE 13を並べて展示すればインパクトが大きいだろうなと。ただ、アメリカ人らしく「もっと大きいサイズはないのか?」とも言っていましたよ。

確かにもっと大きい17インチモデルとかにも有機ELが欲しいところです。あと、「New ALIENWARE 13」の最上位機種にしか有機ELが搭載されていないので、もっと下のモデルにも付けて欲しいですね。

これだけ綺麗だと、色々と試したくなってやってみたんですが、他のゲームも綺麗なのは案の定でしたが、普通の映画とかドラマを再生するだけでもとても良かったんですよ。僕は、アメリカのテレビドラマ『ブレイキング・バッド』が大好きなんですが、このドラマは映像の背景がもの凄く綺麗なドラマなんですよ。

砂漠や天気が移り変わる昼夜の空とか凄く綺麗に見せるんです。で、ただでさえ綺麗なのにこの有機ELで見たときには目を奪われましたね。1度見て内容を知っていても、映像だけでずっと見ていられるレベルです。新鮮な体験でしたね。

実際にゲームをプレイしてみて

――実際に様々なゲームをプレイされてみていかがでしたでしょうか?

原田氏
:一番最初にやってみたのは、VRゾンビシューター『Arizona Sunshine』です。これで処理能力を見ていたのですが、普通のノートPCだとVRなんで割と処理が重たい、フレームレートが安定しないことが多いですが、「New ALIENWARE 13」はかなり処理に余裕がありました。サクサクとか、そういうレベルではなくて「相当余っている」という感じです。

『Arizona Sunshine』は、比較的完成度の高いVRでフィールド内に遠景とかも写っていますが、これでかなり余裕のある処理でしたから、恐らく他のゲームでも大丈夫だと思います。他にも、Steamで配信されているゲームや「Google Earth」とかもやってみましたが、相当余っている感じでした。

現在、Steamで配信されているゲームは殆ど問題なく動くと思います。

Steamで配信されているVR用アクション『Arizona Sunshine』。遠景もしっかり描かれている http://store.steampowered.com/app/342180/ 

個人的にはFPSの『コール オブ デューティ』が好きなゲームのシリーズのひとつなので、最新作の『コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア』を試してみました。僕の家の自作PCは4Kモニターと「GeForce GTX TITAN X」をSLIの2枚刺しの環境でやっているので、「New ALIENWARE 13」のQHD 2560x1440ドットとは解像度が違うので純粋な比較ではないのですが、「New ALIENWARE 13」で自動最適化してプレイしてみると、ヌルヌルと動いたのでこれも驚きましたね。

しかし、「New ALIENWARE 13」で自動最適化してからプレイしてみると、同じシーンでヌルヌルと動いてくれました。

『コール オブ デューティ』シリーズは『コール オブ デューティ ゴースト』まではそんなに処理が重いゲームではなかったのです。3年間買い替えていないようなPCでも動いてくれました。しかし、ゴースト以降は必要なグラフィックの処理性能が急に上がりました。丁度これは、「PlayStation 4」と「Xbox One」が出たタイミングで、マルチプラットフォーム化に合わせ、ゲームのデベロッパーがPCもグラフィックの処理レベルを1段階あげたという状況があります。

ですので、その1段階処理が重い『コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア』でヌルヌルに動くということは、殆どのゲームのグラフィック処理をカバーできるということです。

「New ALIENWARE 13」がノートPCで、このヌルヌルなプレイ環境を実現できたこと、僕としては「出張先でFPSができる」ことなので嬉しいですね。

あと、僕が家で使っている1200Whの電源を搭載した自作PCと比べると、「New ALIENWARE 13」の方がゲームをプレイするコストパフォーマンスも格段に高いです。わずか76Whですから(笑)。

ちなみに、僕の家は新作ゲームが出た1〜2カ月は実際に電気代が上がるんです。普通の家庭は、夏や冬にクーラーや暖房で電気代が上がりますが、僕の家で一番電気代が上がるのは秋です。なぜって秋口に新作ゲームが出るからです。1200Whの電源を搭載したPCでゲームするってドライヤーをずっと回してるようなものですよ。

無論1200W電源も常にフル電力を使っているわけではありませんが、それでもノートPCに比べるとかなりの電力消費です。 いつも嫁は不思議がってます。「何故秋に電気代がこんなに上がるんだろう」って。これを考えると相当無駄なことをしていますよね。僕の家のPCはあんなにでかい筐体で水冷システムまで回しているのに、やっていることは「New ALIENWARE 13」にある程度収まるっていうのはちょっと納得いかないですよ(笑)。ノートPCの性能の向上は排熱問題と電力供給がネックって言われていたので、頭打ちすると昔はよく言われていました。その観点からするとよくここまできましたよね。10年前だと考えられない。

――長時間プレイでの安定性はどうでしょうか?

原田氏:5時間連続でプレイしてみましたが、プレイ時のラグなどは出ずとても安定していました。

他のノートPCは、温度が上がるといきなりシューッとファンが回り始めることがありますよね。これがあると、ラグが出てくるかなと身構えますが、そういうのは全くありませんでした。

確かに「New ALIENWARE 13」も連続でプレイしているとファンの回転数は上がってきますが、いきなり回転数を上げることはなくて、熱が常時ちゃんと排出されているんだなと思いました。

VR用のPCとしては?

――クリエイターの視点として、VRのゲームをプレイするPCとしてはどうでしょうか?

原田氏:VRの必要な性能に丁度追いついたという感じです。オキュラスが最初に出たときに、多くのノートPCではスペックが足りなくて60フレームが出せませんでした。

しかし、「New ALIENWARE 13」であれば、ちゃんと60フレームが出せるのでVRをやって全然良いと思います。デスクトップPCだとケーブルの取り回しや設置場所に制約を受けますが、その点ノートPCの方が設置しやすいので、むしろノートPCでやる方がVRは快適です。

ゲームの開発者として、VRのデモンストレーションをやりやすくなりました。こういったとりまわしの点も含め非常にバランスはいいでしょうね。

今のVRの課題は「いかにユーザーに体験させるか」という点です。例えば、映画版『FINAL FANTASY XV』である『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』の映像美を伝えたいと思ったら、テレビで放送とかすれば、何百万人もの人が「わぁ綺麗!」ってなりますよね。

でもVRはいくらテレビで「映像の臨場感が凄いです」と流しても大抵の人はキョトンとしてしまいます。ですから、凄いと伝えるのはやはり体験してもらうしかない。

しかし「New ALIENWARE 13」でVRがちゃんと動いてくれるので、VRゴーグルとのセットでどこへでも持っていって、ポンと置いて試せる。こういった高性能ノートPCは業界としてもありがたい存在ですね。

――いまゲームをするには様々なプラットフォームがありますが、ユーザーがPCでゲームをすることの利点はありますでしょうか?

原田氏:ゲーム機のコンソールは、値段的にも安価なうえで全員の性能が揃っているという点で非常に好ましいですよね。そこに差が出ないのでフェアな環境でプレイできるし、不安がない。その差が出ないのは、メーカーにとってもユーザーにとっても利点です。

一方で僕個人的な主観として「ちょっと人より良い物とか、人より先の未来を見てみたい」ってなったときには、やっぱり一歩先の未来の入り口はPCにある、という側面は否めないと思います。

ゲームに限らずですが「ああ、なるほどね、ここまで綺麗にできるようになったんだ」とか、「ここまで投資すればこのくらいのものが見られるんだ」というのは当然PCの方が実感できますね。

PCゲーマーどころかPCすら自作で色々やっちゃってる場合には、正直言うとそこらへんの知識がない人と比べて5、6年先の未来を覗いちゃってる可能性はありますよね。有機ELなんて明らかに未来の画質ですよね。それを垣間見れるのはPC業界の良いところだと思います。

しかも有機ELは「この絵が見たくてこのPCを買ったんだよ」って言っても嫁にも納得して貰えますね(笑)一度、「New ALIENWARE 13」を嫁に見せたところ、全然テクノロジーが分からないウチの嫁でも「画面が綺麗!」って言ってました。

僕の仕事の面では、ノートPCでこれだけの性能が出れば、出張で持っていく物が減って楽になりました。出張先で『鉄拳』のデモンストレーションをする場合、今まではコンソールごと持っていってました。

しかし「New ALIENWARE 13」なら、ディスプレイ込みでこのスペックを持ち出せる、これはコンパクトで便利だなあと思いましたね。過去に私にとってノートPCは、性能とコンパクトさのトレードオフが大きすぎて、ゲーマーにとってメリットがあまりないと思っていました。しかし、コンパクトになったことでこうした持ち運びメリットがあるうえで、ちゃんと性能がクロスしてきた時代になったんだな、と実感します。

『鉄拳』シリーズのこだわり

――ここからは『鉄拳』シリーズについて詳しく伺っていきたいと思います。先ほど有機ELの部分でも触れて頂きましたが、『鉄拳』シリーズの映像に関してのコダワリを教えてください。

原田氏:映像に介入要素がありプレイヤーがあくまで主体のゲームと、映画やドラマのような介入のない「見るだけの映像」は、絵作りに絶対的な違いが出てきます。もちろん、作品によってポリシーがあるとは思うのですが、僕らは“動いてナンボ”です。止め絵で見たときよりも、動いてるときにどれくらい迫力があるかという観点で作るんです。

昔のゲームはハード的にポリゴン数とか色数に制限があったので、それを上限まで使えるかどうか?が新世代のリアルタイムCG絵作りとしては正義だったんです。さらに、例えば「テクスチャ技術」をリアルタイムのゲームに導入する、「リフレクションマッピング」とか最新の技術が出たらそれを使う、「最新技術が盛り込まれている」という理由で価値が認められた時代がありました。

しかし、今はそうした制限がなくなったのである意味で自由になってしまったんです。どのメーカーさんも絵のクオリティで言えば差が出なくなった、出にくくなったとも言えます。特定のミドルウェアやエンジンを使えば、似たような絵が出せるってなったときに僕らがとった手段は、「自分たちのテイストにあった絵をどう出すか?最新技術を使いつつも個性をいかに出すか?」という方向でした。

僕らの良いライバルでもあり仲間でもある『ストリートファイター』シリーズは、昔のドット絵とは違って、どっちかっていうと水彩画のような絵の描き方を選択してましたよね。

『鉄拳』は、「色は上限まで使う」とか「できるだけ色のグラデーションを綺麗にする」とか先に述べたように技術ベースでできることはすべてやってきたんですけど、今回はライティングをクセのあるものにして「極端に色飛びするところは飛んでも良しとする」とか、「これまで避けてきた黒色の表現を恐れずに使う」など振り切ったものにしました。 割と知られていないんですけど、3D格闘ゲームはあまり手の先とか足の先に黒は使わないほうが良いというセオリーがあるんです。理由はテストするとわかることですが、動きが映えないんですよ。潜在的な評価で低くなる傾向があることがわかっています。

手先と足先は3D格闘の場合は、常になめらかに動き続けて、リアルな人間の挙動に近い。かっこいいポーズで止まっている時間が少なく、フレームレートは同じ60fpsでも、アニメーションの作りが漫画的ではなく、滑らかな動きですから、その軌跡をしっかり見せることが重要です。

なので暗い色は避けるのがセオリーで、さらに、手の大きさや足の大きさがリアルだとまったく映えないので少しスケールをかけて大きくする必要があります。

今回の『鉄拳7』では時代も変化し、プレイヤーの皆様もそれなりに良いディスプレイを使うようになって、個々の環境で色の階調とかには問題が起きにくくなってきました。そういう時代背景もあって、ライティングとかを極端にやるようにしましたね。キャラクターの筋肉にあたっている光とか、場所によってハレーションを起こして飛ばしたりですね。

あと、先ほど触れた黒色ですが、今回は色々なキャラに黒をちゃんと使ってみてます。当然黒は調整がすごく難しいんですが、割と頑張ってデザイナーが調整してくれています。

余談ですが、だから有機ELは危険なんです。調整しなくても黒が良く出て「これで良いじゃん」になってしまいます。最も黒い部分がしっかり引き締まって見えるので、黒でもしっかり諧調が出てくれます。それによって背景の深度も一気に上がったように見えるんですね。背景に使っている岩の感じとか。普通の液晶だとここまでのディテールに見えません。僕らが一番苦労している黒が勝手に良い具合に演出されてしまいます(笑)。

逆に有機ELだけを見て開発したら、他の液晶ディスプレイなどで表示した場合は全然黒が調整されていなくて、あまり良くない絵になりますね。逆に言えば、仮にもし世の中が全部有機ELになれば、もっと恐れず黒を使えるかもしれません。

新作『鉄拳7』の注目点とは?

――最後に『鉄拳7』はどんなゲームでしょうか?アピールポイントを教えてください。

原田氏:ポイントはいっぱいありますが、まず発信しておきたいのは、今まで『鉄拳』シリーズをプレイしてきている人も、そうでない人も楽しめるという点です。
 
「7」と聞くと「今さら俺は入れないのでは?」と思うかも知れませんが、ゲームシステムとストーリー、どちらの面でも大丈夫です。他のゲームでは作を追うごとにゲームシステムが難しくなったりもしますが、『鉄拳7』では、ゲームシステムをシンプルに作り直しています。
例えば「ダウンしたまま起き上がれない」とか「壁に追いつめられたまま何もできない」とかはありません。立ち会いの勝負が割と容易にできて、そこに新システムを入れることで、より駆け引きがわかりやすくなっていて、端から見ていても面白いと感じてもらえるようにしています。

ここがゲームのポイントだってわかりやすくなっているのと、見てる人とプレイしてる人が一緒に盛り上がれるっていう一体感が出るように意識して作ってあります。

例えば、KO直前にお互いの体力が少なくなって、クロスカウンターになったりすると、スーパースローの演出を入れたりというのがあります。これはプレイヤーも見ている側も「どっちだ!?」と盛り上がります。しかも気が抜けないのは、その間の駆け引きもコマンドも全部別系統で受け付けているし、そもそも互いの技が届かなかったりするケースもあって、実はそれで決着が付かないこともあるんですよ。または、カウンターの数値が足りなくて生き残っちゃったとか。そうすると元のゲームスピードに戻るので、気が抜けない。かなりスリリングですね。

これは今まで色々なゲームショウで見せてきましたが、ものすごい歓声が起きるんですよ。この演出の部分だけでYouTubeで特集が組まれるぐらい盛り上がってます。それくらい見てる人との一体感をゲーム的に意識しています。

今回の家庭用に関しては、今までプレイしてきた人も今回が初めての人も、同じ体験になるような流れにしています。

例えば「三島平八と三島一八は何故こんなに仲が悪くなったのか?どうして戦うことになり、どういう決着になるのか?」って、これは今までの鉄拳ファンも知らない事だらけなんですよ。「そういえば、なんであいつらこんなに争ってるの?なんで一八はあんなに親父のこと嫌いなの?」「親父はなんで一八を殺そうとしてるんだろう?」「なんで谷に落としたんだろう?」「谷に落としたら死ぬって鉄拳初期の頃からあったけど、そういえばなんで?」って。そういう三島家の謎も含めて、初代『鉄拳』からそれ以前の話も全部追っていくんですよ。

そして、その決着は誰も知りません。そういう意味でいうと、『鉄拳7』から入る人もベテランの鉄拳プレイヤーも等しく同じ体験をします。

『鉄拳』ってもともと、格闘ゲームで最もストーリーを重点的に見せるタイトルなのですが、これが格闘ゲームでもプレイヤーの層が広い所以なんです。

ちょっと手前味噌の話になりますけど、家庭用のシリーズ累計の販売本数は4,400万枚にもなります。対戦格闘ゲームというジャンルではこれはトップの実績です。では、なぜ売れているかというと、格闘ゲームとして競技でガリガリと遊ぶって人よりも、単純にゲームとして楽しむカジュアルな人が7割くらい居るからです。昔から思ったよりもストーリーとか、CGムービーに注目して楽しみにしている人が凄く多いですね。

今回はそれに応えられるように、ストーリーには力を入れています。「ストーリーモード」というのがありますが、今までのようにキャラクターを操作するシーンとストーリー的な演出やムービーが分かれているのでは無く、シームレスに繋がっています。なので、ムービーだと思ってボーッと見ていたら、実はもうプレイモードに入っていたとかもあります。

他にも、銃を持った兵士に囲まれたところから急に始まって、倒し終わったらそのままリアルタイムに演出に入り、ムービーに戻る、などが繰り返し出てきます。今まではOPムービー見て、CPUを倒して、EDムービー見て「よし!1個終わり」って感じでしたが、

今回は、1本のストーリーをドラマチックな流れで追体験していくような流れになっています。これは『鉄拳』シリーズでも初めてなので注目ポイントだと思います。


また、格闘ゲームが上手くない人でもこのストーリーモードを楽しめるように、操作の難易度を何段階にも分けています。

例えば『鉄拳』シリーズでは全て攻撃ボタンを押し分けたりしますが、それが難しいという人にはL1ボタン4つが4種類の必殺技になるような設定、左、右、左みたいに押してくとそれが勝手に空中コンボになったりするような機能を、このストーリーモード向けに用意しています。

さらには、それすら難しいという人向けの機能もあります。逆に難易度が高いモードをプレイできる人には、ゲーム内の称号が貰えるようになっています。 ちなみに、一番高い難易度は僕でさえまだクリアできてないレベルです(笑)。最近、ちょっと腕が鈍ってしまったようで。そういう意味で高いスキルを持っているプレイヤーにもやり応えのあるものとなっています。

さらに、過去の『鉄拳』シリーズのOPやEDなどのムービーをギャラリーモードに全部収録しています。それを見るだけでも相当時間が掛かりますよ。今回のムービーも加えると、とんでもない長さです。

加えて、今まで色々な『鉄拳』の名がついた商品の数々のムービーも入っています。日本版だけは、パチンコやパチスロの映像とかまで入れてあります。「あっ、これ見たことなかった」っていう映像も結構入ってると思います。もうゲームの付属というよりは、別コンテンツで出せるレベルです。Blu-rayの映像作品とかにして単体で出せるくらいの量を全部入れてあります。2層のBlu-rayディスクの容量の限界いっぱいまで入っています。なので「過去の鉄拳でしか見られない部分」は、ほぼ無いと言っていいぐらいです。

今回もRPGか何か?というぐらいカスタマイズが充実していますし、友達と内輪でオンライントーナメントをやれるモードも実装しています。そういう意味でも『鉄拳7』は『鉄拳』シリーズの決定版と言ってもいいですね。

『鉄拳7』は、2017年7月14日〜16日にアメリカ・ラスベガスで開催される「EVO 2017」にも競技ゲームとして選ばれています。カジュアルにもコアにも楽しめる『鉄拳7』ですが、今後も面白い事を沢山仕掛けていこうと思っていますので、今後の展開にもご期待ください。

ヨーロッパのみで販売される限定パッケージには三島平八と三島一八が激突するフィギュアが付属している

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バンダイナムコエンターテインメント
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原田勝弘氏のTwitter
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