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成長を遂げた2019年の「LJL」、さらなる発展のために運営、チーム、ファンにできること【スイニャンが見た韓国eスポーツとLJL】

目次
  1. 広くなった試合会場とチケットの有料化
  2. 2部リーグ廃止、1部リーグ8チーム制
  3. ファンミーティングと観戦中の応援文化
  4. 2年ぶりに大規模会場で開催された「LJL」ファイナル
今から10年以上前の2007年ごろ。韓国に住んでいた私は「eスポーツ観戦」という当時の日本ではあまりなじみのなかった文化に触れ、その楽しさにすっかり魅了されてしまいました。

最初は『StarCraft』。その後プロシーンが『StarCraft2』に移行し、やがて人気の中心が『League of Legends』(LoL)に移り変わっても、そして『Overwatch』や『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(PUBG)など使用タイトルが多様化されても、どの韓国eスポーツを見ても、常に『StarCraft』時代に培ったノウハウが根底にあると感じます。

韓国『StarCraft』のプロリーグ「SHINHAN BANK ProLeague 10-11」の様子

そんな韓国のeスポーツシーンを長年楽しみつつ、「いつか日本にもこういう文化が根づいたらいいなぁ」と思い続けてきた「いちファン」として、最近の日本のeスポーツシーンの成長はとても喜ばしく思っています。とくに感慨深いのが、『LoL』の日本公式プロリーグ「LJL」。私は公式通訳・ライターとして携わる一方で、「いちファン」としてもかなり楽しんでいるほうだと自負しています。

そこで今回は、私が魅せられた韓国のeスポーツ文化に「LJL」が今年どれだけ近づけたのかということを振り返りつつ、今後さらなる発展のために運営やチーム側ができること、ファンの皆さんができることについて考えていきたいと思います。

広くなった試合会場とチケットの有料化

ヨシモト∞(無限大)ホールの様子、試合はDetonatioN FocusMe 対 Rascal Jester

今年からの一番の大きな変化と言えば、やはり会場がヨシモト∞(無限大)ホールになったことでしょう。定員は282名とのことで、2018年の収容人数150名の約2倍。今年韓国の『LoL』プロリーグ「LoL Champions Korea」(LCK)が開催されたLoL Parkが450席ですから、それほど引けをとらないと言えます。

しかも韓国でも最近増えてきたすり鉢型のホールで、選手たちの姿がより見やすい印象です。中央の巨大スクリーンに加え、両脇に小モニターが完備。試合中は真ん中にメインのゲーム画面、左右にミニマップの拡大図が映し出されています。選手たちの声もよく聞こえ、観戦にのめり込める環境が整っていると思います。

会場が若者の街・渋谷というのも、意味があると言って良いでしょう。eスポーツに興味を持っている層は、やはり若者が中心。韓国ではいろいろな街に専用競技場ができてはなくなるということを繰り返してきましたが、その昔ショッピングモールの中に常設されていたこともありました。通りすがりの買い物客が、自然に覗いて行くんです。ヨシモト∞(無限大)ホールも通りから中の様子が見えますから、それに近い状況と言えるでしょう。

韓国の「LCK」が行われていた会場、写真は「LoL KeSPA CUP 2016」の様子

チケットが有料化されたのも、大きな変化です。かつての韓国は、入場無料でした。そのせいか、週末になると小学生男子の集団がかなりいたのを覚えています。有料化された後もチケットはそれほど高くなく、制服姿の子たちは男女ともにかなりの数を見かけました。

ちなみに現在の「LCK」は一番高くても1500円程度とのこと。それを思うと「LJL」の学割適用で2800円というのは、大学生には良くても高校生以下にとっては少し高めな印象も。たとえばALIENWAREが実施していた協賛キャンペーンのような方式で学生の招待枠を設けるなど、運営やチーム側で何かもう少し工夫があってもいいかもしれません。

2部リーグ廃止、1部リーグ8チーム制

試合の準備をするUnsold Stuff Gaming

私が追っかけをしていたころの韓国『StarCraft』のプロリーグは、一番多いときで12チーム。現在の「LCK」も1部リーグが10チームですから、「LJL」が6チームから8チームになったのは妥当だと考えています。

ただ、それであればプレーオフ進出チームも「LCK」のように半分に増やしてほしかったというのが本音です。そうすれば消化試合も減り、観戦の楽しみもぐっと増えるのではないでしょうか。

入れ替え戦の有無は、リーグ全体を考えるとあったほうが面白味も増して盛り上がるでしょう。でももしも自分の応援しているチームが降格したら……と思うと気が気ではないし、2部に落ちてしまったらチームが解散なんてことにもなりかねません。「LCK」では実際に、1部に上がれず解散してしまったチームもありました。そういう意味で、安心して好きなチームを応援できる環境を提供してくれていると感じます。

試合中のCrest Gaming Actの選手たち

チームとしても安定した運営ができるようになったからか、若い世代のサブや練習生を加入させて育てようという取り組みが各チームで見られました。今年から新たに始まった人材発掘のための選考会「Scouting Grounds」の影響もあると思います。基本的には消化試合などで経験を積ませるために出場させたパターンが多かったですが、さまざまな事情と相まってスターターとして起用したチームも。「LJL」の将来を支えるであろう若い選手たちの存在は、長くリーグを楽しみたいファンとしても心強いものがあります。

ファンミーティングと観戦中の応援文化

Sengoku Gamingのファンミーティングの様子

韓国では『StarCraft』のころからずっと、チームが負けた場合、基本的にファンミーティングはやりません。「LJL」も昨年まではこの形式でしたが、今年からは勝敗にかかわらず全チームでファンミーティングを実施しました。

正直、私は負けたチームのファンミーティングには反対派でしたが、選手たちから「負けても来てくれるファンに元気づけられた」という話をたびたび耳にするようになってから、少し意見が変わりました。ただやっぱり敗戦直後というのは、選手たちにとってはつらいもの。実施の可否はチームにゆだねられているそうですが、無理に顔を出す必要はないと今でも思っています。どうしてもやるのであれば、韓国でも敗戦チームがたまに行う「短い挨拶」程度がちょうどいいのかもしれません。

ファンミーティングに参加しているファンの様子を見ると、『LoL』というゲームが好きなだけでなく、チームや選手を応援する気持ちを持っている人が増えたという印象を抱きます。ところがそれが、観戦中にはなかなか見えてこないんです。

韓国は昔から応援合戦がとにかくすごくて、旗や鳴り物、横断幕、応援パネルなどをチームまたはリーグ運営が準備するのが一般的です。さらに個人で応援グッズを作って持参する人もいますから、観客席は非常に華やか。楽しそうに見えることは、いっしょに盛り上がる仲間を増やしたいときにも非常に有効的な手段であり、意外に大事なことなのです。

韓国の『LoL』プロリーグ「LCK」の参加チームSK Telecom T1を応援するファン

韓国ではどこの会場でもかならず用意されている手書き用の応援ボード

それに関連して、これは昔から何度も訴え続けているんですが、ぜひ欲しいのが「手書き用の応援ボード」。韓国ではどのゲームタイトルの大会においても会場に用意されていないことはなかったと断言してもいいぐらい、昔から当たり前のように定着している文化です。私は残念ながら絵心がなく応援グッズを作る器用さも持ち合わせていないので、すぐに応援を表現できる手軽さが非常に重宝します。私のような人は多いと思うので、リーグ運営の皆さん、これだけは本当に来シーズンからぜひお願いします!

2年ぶりに大規模会場で開催された「LJL」ファイナル

2015年の「LCK Summer Final」の会場「高麗大学・化汀(ファジョン)体育館」

2019年の「LJL 2019 Summer Finals」の会場「アリーナ立川立飛」

最後に少しだけ、先日アリーナ立川立飛で開催された「LJL」ファイナルについて触れさせてください。試合会場を見て驚いたのが、4年前に取材した「LCK」ファイナルの風景とそっくりであることでした。とは言っても今年夏の「LCK」ファイナルは約4000席で少ないと不満が出ていましたが、約3000人収容の会場はファイナルの規模として韓国と比べてもそれほど遜色がないということになるでしょう。

ただし、その中身を見ると、韓国と日本で決定的に違う部分があることに気づきます。

ファイナルを戦ったDetonatioN FocusMeとV3 Esportsの選手たち

それはやっぱり「応援」なんです。今回ステージ向かって左側がDFM、右側がV3の競技席でしたが、観客席に座っているファンはごちゃ混ぜでした。購入時にどちらがどのチームサイドかわからなかったので仕方がなかったですし、それを意識しているファンの方も韓国に比べると少なめな印象です。韓国では好きなチームや選手側のサイドにファンが固まって、応援グッズを手に声を出しながら応援を届けるのが一般的です。とくにアリーナ席は、熱心なファンが多い傾向にあります。昔からそういう派手な応援を見ているので、「LJL」では正直物足りなさを感じてしまったのも事実です。

しかし「LJL」には、韓国にない素晴らしい点があるんです。それはズバリ、チームブースの設置です。はっきり言って最高です!ほとんどのチームが物販をやっているのもとても良いことだと思いますし、何より選手たちに直接会うことができるのはファンにとっても非常に嬉しいサービスです。今後も絶対に続けてほしいですし、むしろ「LCK」も「LJL」を見習ってチームブースの設置を採用してもらいたいぐらいです。

ブースでファンミーティングに応じるAXIZの選手たち

物販の売り子としても頑張るBurning Coreの選手たち

今回はいくつかの項目に絞ってまとめてみましたが、上記以外にもたとえば実況解説陣が増えたことで組み合わせごとの個性を楽しめるようになったのも、今年からの大きな変化でした。また、公式以外にもいろいろな外部メディアが試合内容や選手インタビューなどを取り上げてくれるようになったおかげで、試合のない日でもコンテンツを楽しめる機会は増えたと感じます。もちろん韓国にはたくさんの実況解説者の方がいらっしゃいますし、昔から複数のeスポーツ専門メディアが日々新しい記事を届けてくれています。

「LJL 2019 Summer Finals」の試合の様子

というわけで、個人的な肌感として、「LJL」は韓国のeスポーツ文化にかなり近づいていると言えると思います。ただし繰り返しになりますが、日本ではファンが「応援を表現すること」が圧倒的に足りていないとも感じます。運営やチーム側にはファンがもっと応援しやすい環境づくりに努めてもらえることを願いつつ、わたしにできることがあれば協力していく所存です。そして「いちファン」として、選手への応援をもっと届けていくことについて考えていきたいです。皆さんも心のなかにある応援の気持ちを、少しでも表現していくことを意識してみませんか。

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