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『Forager』大目標が消えた時代で生まれたコミュニティベースゲーム【インディーゲームレビュー】

ゲームには大目標・中目標・小目標が存在する。ゲームデザインの基本的な要素の一つだ。しかし『マインクラフト』以降、大目標が消失したゲームが人気を集めている。なぜ大目標がなくても人は遊び続けられるのか。そこには本作ならではの開発経緯がある。


ゲームデザインにおける大・中・小目標の関係とは

ゲームには目標と手段が存在する。目標は大・中・小に分けられ、プレイヤーは大目標をめざして、小目標と中目標を繰り返しながら進めていく。RPGを例にとると、魔王を倒して世界を救うために(大目標)、モンスターを倒して成長し(小目標)、次の街をめざす(中目標)といった具合だ。この時、大目標がなければプレイヤーはゲームを続けるうちに飽きてしまう。マラソンも42.195km先にゴールがあるから走り続けられる。ゴールがないのに走り続けることができないのは、あきらかだろう。

しかし『マインクラフト』以降、この常識がゆらいでいる。ゲームがネットワーク化され、プレイヤーの自己承認欲求がネット上で手軽に得られるようになったことで、大目標の重要性が低下してきたのだ。それにかわって浮上してきたのが中目標で、『マインクラフト』では自由に好きな建築物を作ることが相当する。ポイントは中目標をプレイヤーが自由に設定できることと、設定に多様性があることだ。この点でブロック遊びをモチーフとした『マインクラフト』の優位性は明らかだろう。

本作『Forager』もまた、『マインクラフト』に連なる箱庭系ゲームだ。公式サイトでは『Stardew Valley』『テラリア』『マインクラフト』そして『ゼルダの伝説』シリーズに影響を受けた2Dオープンワールドゲームだと説明されている。そして、他のゲームと同じく、本作にも小目標と中目標の巧みな関連性がみられる。「一度はじめるとやめられない」という本作の謳い文句も、ここがしっかりしている点が大きい。その上で本作には大目標がない。ここが本作をレビューする上で大きなポイントになる。

ドット絵で描かれた温かみのある世界観が広がる


大目標は存在せず、中目標も中途半端だが……

具体的にゲームの展開をみていこう。プレイヤーは主人公を操作して島を探索し、食料や素材を集めてアイテムや施設を作り、島を開拓しながら、世界を探索していく。ゲームはアクションRPGの要領で進み、操作性も良好だ(キーボードでも遊べるが、コントローラーでの操作をオススメする)。素材を集めると経験点が入り、一定数がたまるとレベルアップして、新たなスキルが得られる。スキルを得ると素材を集めたり、施設を作ったりしやすくなる。お金を貯めれば新たな島を購入し、世界を拡張することも可能だ。

ゲームの展開もプレイヤー次第で、素材を集めたり、野菜を育てたり、アイテムを売買したり、世界に4つあるとされるダンジョンを探索したり、効率的な生産拠点をデザインしたりできる。このように本作では「素材を集める」ことが小目標で、「レベルアップする」「施設を作る」「新たなスキルを得る」「土地を購入する」などが中目標に相当する。特に決められたミッションやストーリーは存在せず、このポジティブフィードバックループだけでゲームは進んでいく。

もっとも前述のとおり、本作には明確な大目標が存在しない。『マインクラフト』と異なり、ブロック遊びのような自由度の高さがあるわけでもない。ゲームバランスも甘めで、ゲームを進めるうちにプレイヤーの能力がインフレ気味になっていき、何もしなくてもどんどんアイテムがたまっていく、いわゆる放置ゲーのプレイ感覚に近くなっていく。公式サイトには総プレイ時間が15時間程度と明記されているが、そこに達する途中で、物足りなさを感じてしまうプレイヤーもいるだろう。

アイテムを作ることがゲームの展開につながる

レベルアップのたびにスキルがアンロックされ、展開が効率化される

コインを貯めて新たな土地を購入するのも中目標の一つだ

ファン創作によるメタ要素を意識してとりこむ

それでは、なぜ本作は高い評価を得ているのだろうか(原稿執筆時でSteamの評価は2871件中88%が好評)。これには本作の出自が大きいと思われる。開発元のHopFrogはアルゼンチンのデベロッパーで、本作のベースは学校を中退した個人制作者によって、ゲームジャム用に2週間で作られたデモだ。YoYo Games主催のGameMaker Studio 2 ゲームジャムで制作され、準優勝に輝いたことでHumble Bundleがパブリッシャーにつき、本制作の開発に繋がった経緯がある。

このように本作は『Minit』と同じく、ゲームジャムから生まれたゲーム界のシンデレラストーリーのひとつだ。その経緯はゲーム内で公開されており、本作を進めるうちにアンロックされ、次第にプレイヤーに開示されていく。それ以外にもファンによるコミックやイラストなどがゲームに内包されており、これらを読み進めていくことがゲームの魅力となっている。つまり本作はゲームの外側に設定資料などを意識的に埋め込むことで、メタゲーム的な楽しさを提供しているといえるだろう。

ポイントは、こうしたメタゲーム的な要素がファンコミュニティによって提供されていることだ。つまり本作はファンを糾合するためのプラットフォームとして位置づけられている。だからこそゲーム単体では少々物足りなさが感じられても、高い評価を保っているというわけだ。これは同人作家のコミュニティに近い。そして、これを可能にしているのが高性能なゲームエンジン(本作ではGameMaker Studio 2)の普及だといえる。まさに現代的なゲームのあり方だろう。

ゲームの起動画面にファンアートが表示される

作者の半生を振り返りつつ進むゲーム開発秘話

ファンによるコミックも掲載

本作に限らず、ゲームはますます個人的なものになっていく。AAAゲームとインディーゲームの二極化はますます進行し、ゲームを一人で作る時代が当たり前になっていくのだ。もっとも、すべてのゲーマーがクリエイターになるわけではない。そこで自然発生的に生まれてくるのがクリエイターとファンのコミュニティだ。我々は、そのモデルを、すでにコミックマーケットなどで体験している。懸念点があるとすれば、本作のように日本の企業はゲーム作家をすくい上げることができるかという点だ。これからが正念場だろう。

■関連リンク
Steam『Forager』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/751780/Forager/
HopFrog 公式サイト
https://hopfrogsa.net/
itch.io 『Forager』(デモ)版
https://hopfrog.itch.io/forager-demo
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー