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『Academia : School Simulator』長所を伸ばし短所を減らす理想的な続編制作【インディーゲームレビュー】

同一のゲームエンジンをベースに、テーマやメカニクスを変え、新しいゲーム体験を生み出す。FPSを筆頭に、海外ではこうした展開が良くみられる。学校経営シミュレーター『Academia : School Simulator』(以下『Academia』)もその一つで、アーリーアクセス版ながら、今後に期待が持てる内容だ。


『Prison』のアーティストが独立して制作

あるゲームの開発にたずさわったクリエイターが独立し、元のゲームのエンジンをベースに新作を開発する……。ゲームエンジンやミドルウェアの概念が日本より先行している海外のインディーゲームシーンでは、しばしばこうした展開が見られる。オリジナルの大学を作り上げ、ランキング1位をめざす学校経営シミュレーター『Academia : School Simulator』もその一つだ。開発・販売はSqueaky Wheel Studioで、フィリピンのインディーとなる。

本作のベースは本連載でも過去に紹介した、刑務所経営シミュレーター『Prison Architect』(以下『Prison』)だ。両者を見比べると、グラフィックやゲーム内容の相似性がわかるだろう。それもそのはずで、同社でCEOとリードアーティストをつとめるRyan Sumo氏は、『Prison』の開発にフリーランスのアーティストとして参加していた経歴の持ち主だ。『Academia』の開発においても、『Prison』の開発元であるIntroversion Softwareから多大なサポートを得ているという。

ゲームを進めながらさまざまな研究を行い、アンロックしていく

ゲーム中にさまざまな目的が提示され、成功するとお金がもらえる

画面は拡大縮小でき、キャラクター単位で行動を追いかけられる

学校をテーマに据えたことで広がった可能性

本作のポイントは「前作のストレスを減らし、長所を伸ばす」ことを丁寧にやっている点だ。『Academia』のゲーム展開は、さまざまな研究開発と目的遂行を並行して進めながら、徐々に施設を拡充していくというもので、『Prison』と同じだと言っていい。その一方で『Academia』では『Prison』でストレスに感じられた点が改善されている。具体的には水道管の施設と電気の配線が省略されている点だ。『Prison』では、これらのメンテナンスが煩雑だったため、この変更はありがたい。

また『Academia』では学校をテーマにしたことで、新たに「年度ごとに学生が入れ替わる」という要素が加わった。これにより年度ごとに学生の成績でランキングが変動するメカニクスが追加され、プレイヤーの目的意識を維持させやすくなっているのだ。助成金頼みだった『Prison』と違い、主な収入源を学生の授業料とした点も(収入が学生または犯罪者の受け入れ人数に比例する点は同じでも)、より経営シムらしさを強める要素となっている。

もっとも、ゲームの続編制作にはもう一つ重要な要素がある。それが「前作よりボリュームを増やす」という点だ。これについては、本作はまだアーリーアクセス版ということもあり、発展途上の段階だ。設置できるオブジェクトも基本的なものに留まっており、チュートリアルも味気ない(必要十分ではあるが)。実際、現段階では約3時間程度でやれることがなくなってしまうほどだ。本作が『Prison』の精神的な続編になるか、それとも姉妹版に留まるかは、今後の開発次第だろう。

生徒や教師は個別に管理され、行動やパラメータを確認できる

優秀な教員は複数の科目を教えられるが、給料も高い

学校らしく時間割も細かく調整できる

当初から日本市場を念頭において開発

こうした要素は今後のアップデートにともなって、どんどん追加されていくことが予想される。にもかかわらず今回紹介したのは、すでに現状の段階で十分おもしろいものに仕上がっているからだ。フィリピンのデベロッパーは大手パブリッシャーの受注に留まる例が多かったが、本作を遊んでいると、すでにそうした段階は過ぎ去り、十分ゲーム開発のノウハウが蓄積されていることが感じられる。英語圏であることから、海外展開も容易であるため、さらなるタイトルの登場が期待される。

また、本作のもう一つ重要な要素は、日本語ローカライズが非常に丁寧にされていることだ。Sumo氏によると日本は重要な市場で、当初から日本のユーザーに遊んでもらうことを念頭に開発したという。4月に秋葉原で開催されたインディーゲームイベント「Tokyo Sandbox 2019」に出展したのも、こうした考え方からだ。インディーゲームが国境を越えて世界中で遊ばれる中、彼らのゲームを作るだけでなく、より多くのプレイヤーに遊んでもらおうとする姿勢は、日本の開発者も見習うべきだろう。

■関連リンク
Steam『Academia : School Simulator』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/672630/Academia__School_Simulator/
『Academia : School Simulator』公式サイト
http://www.academiagame.com/
Squeaky Wheel Studio 公式サイト
http://www.squeakywheel.ph/
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー