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『Pikuniku(ピクニック)』にみるゲームと物語のユニークな関係性【インディーゲームレビュー 第50回】

ミニマルでフラットなアートデザインがかわいらしいパズルアドベンチャー『Pikuniku(ピクニック)』。パズルを解きながらストーリーを進めていく本作には、ゲームと物語の抜きがたい関係性が秘められている。


多くのゲームに見られる「ゲーム要素」と「物語要素」

以前レビューした『CHUCHEL』のように、アドベンチャーゲームはゲームの持つ「再挑戦性」と、物語のもつ「一回性」を巧みに融合させたジャンルだ。

もっとも、両者の関係性は多くのゲームで観察される。アクションゲームは好例で、主人公の能力やエネミーとの関係性は、アイテムなどで変化することはあっても、一定の規則性を持つ。これに対してクリエイターは自由にレベルデザインを行うことができる。なかでも『スーパーマリオブラザーズ』は適例で、草原に、地底に、水中にと、収録ステージは多岐にわたり、プレイヤーの予想をいい意味で裏切ってくれる。

その一方で各ステージは綿密に計算されており、一例を挙げればワールド1-1はハリウッド脚本で有名な「三幕形式」の影響が見受けられる(縦穴によって3つのエリアに分かれる、中央には無敵アイテムが配置されるなど)。このように横スクロール形式のアクションゲームでは、ゲーム世界の時間はプレイヤーが左から右に移動することで進み、レベルデザインを通してゲームならではの物語が紡ぎ出されていく。

▲『スーパーマリオブラザーズ』のワールド1-1(筆者作成)

今回レビューするパズルアドベンチャー『ピクニック』も、ゲームと物語をうまく絡ませた秀作だ。プレイヤーはひょこひょこと歩く「バケモノ」を操作して、さまざまなパズルを解きつつ、頼まれごとをクリアしていく。その過程で巨大企業サンシャイン社が進める世界的な陰謀に巻き込まれていき……というストーリー。画面からは想像もつかないが、映画『007』シリーズばりの壮大な展開が楽しめる。



▲日本語ローカライズのクオリティは非常に高く、国産ゲームと変わらないノリで楽しめる

物語があるからこそ、ゲームが楽しめる。その逆もまた同様。

「バケモノ」の操作はシンプルで、コントローラーの左スティックで左右移動、Aボタンでジャンプ、Bボタンで足を引っ込め、丸くなって回転、Xボタンで足を伸ばしてキックしたり、フックに足をひっかけてスイングしたり、扉を開閉したりといった、さまざまなアクションができる。最後にYボタンで会話だ。ステージのあちこちに物理エンジンを用いたパズルが存在し、ミニゲームやトロフィー探索などの遊びもある。

グラフィックはくすみのないフラットなアートワークで描かれており、絵本のようにほのぼのとした世界観が広がる。「bo en」として知られるミュージシャン、Calum Bowenの作曲による、かわいらしい音楽も世界観を広げてくれる。

他方で、世界のあちこちに監視カメラが配置され、サンシャイン社は商品もないのに、世界にコインをばらまいている。ユートピアの皮をかぶったディストピアが進行中というわけだ。

パズルやアクションはそれほど難しくなく、のんびりプレイしても3~4時間程度でクリアできるだろう(パズルゲームやアドベンチャーゲームで必ず謎につまる筆者でもノーヒントでクリアできた)。しかし、ミニゲームはかなり歯ごたえがあり、すべてのトロフィーを集めようとするとかなり時間がかかる。また、2人で遊べるマルチプレイモードもあり、こちらのパズルは難易度が高めとなっている。

つまり本作は、物語という「先の見えない要素」があるからこそ、プレイヤーはシンプルなパズルやアクションにも夢中になれる、といえる(このことは物語要素がないミニゲームやマルチプレイモードとの違いからも、明らかだ)。ただしプロットは単純明快で、物語的な深みはない。それでも両者が組み合わせられることで、本作はプレイヤーに対して「自分だけの物語体験」を提示することに成功しているのだ。

▲バケモノとして阻害される主人公が世界を救うという王道ストーリー

主人公のアクションをベースにすべてをデザイン

このように本作は「ゲーム的な要素」と「物語的な要素」が巧みに融合している。そして両者はともに、単体ではシンプルだが、両者を組み合わせることで深みが増している。このことはゲームデザインにおける「単純な遊びでも複数を組み合わせると、途端に深みを増す」という原則に相通じるものがある(落とし穴をジャンプしつつ、エネミーを倒すなど。詳細は『CUPHEAD』レビューを参照)。

もう一つ本作で興味深いのは、スコアの概念が巧みに隠されていることだ。本作をクリアすると、プレイ内容にもとづいてスコアに該当する指数が表示される。しかし、これがいいのか悪いのか、何点満点なのかといった情報は表示されない。その上で気になる人がいれば、何度も遊んでみてほしいという建てつけになっている。ここから『Opus Magnum』レビューで論じた、遊びの本質を想起することは容易だろう。

とはいえ、本作でもっとも特筆すべきは、主人公の「バケモノ」の歩行アニメーションだ。ひょこひょこと長い足を交差させながら歩く様は見ているだけで楽しく、さまざまな場所を歩かせたくなる。その上ですべての要素がこの移動アクションのもとに、綿密に計算されて作り上げられていることがわかる。だからこそ本作は多くの人にとって楽しめるゲームになっているのだ。

▲ゲーム中で楽しめるミニゲームの一つ。足でボールを蹴ってゴールに入れ、点数を競う

▲マルチプレイモードで楽しめるミニゲームの一つで、2人で協力してパズルを解いていく

▲こちらは2人対戦のレースゲーム。このようにマルチプレイでは協力ゲームと対戦ゲームの両方が楽しめる

■関連リンク
Steam『Pikuniku(ピクニック)』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/572890/Pikuniku/
『Pikuniku(ピクニック)』公式サイト
https://pikuniku.net/
bo en 公式サイト
https://bo-en.info/
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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