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『Hyper Light Drifter』ユーザーをグループに分類し、それぞれに適した施策を提供する……【インディーゲームレビュー 第5回】

 
2Dピクセルアートの見下ろし型2Dアクション『Hyper Light Drifter』は、ゲームならではのナラティブ(物語体験)を提示しようとした、意欲的な作品だ。もっともゲームとストーリーは似て非なるもので、多くのゲーム開発者がこの融合に苦心してきた。本作が提示した、インディーならではの解決策とは何か?

ゲームとストーリー、その似て非なるもの

ゲーム最大の特徴はインタラクティブ性にあり、これがストーリーゲームを作る上で大きな障害となる。映画や小説がそうであるように、ストーリーは作り手が最初から最後まで情報をリニアに提示していくことで成立するからだ。これに対してゲームでは、プレイヤーがどのように物語を進めていくか予想できない。ゲームとストーリーは本質的に水と油であり、これをどのようになじませるかに、多くのゲームクリエイターが知恵を絞ってきた。

孤高の戦いを挑み続けるゲームクリエイターの援軍となったのが技術の進化だ。コンピューティングパワーの増大は、それまで不可能だった数多くのアイディアを実現に導き、ゲームならではの物語体験を可能にしてきた。こうして生まれてきたのが「ナラティブ(物語体験)ゲーム」で、実は本連載でも気がついてみれば、過去すべての記事でナラティブゲームを取り上げてきたことになる。本作『Hyper Light Drifter』もユニークな試みを行っているタイトルだ。

*なお、本稿の内容は開発者に取材したものではなく、筆者独自の論考であることをあらかじめお断りしておく。

ゲーム開始直後のイベントシーンで巨神兵のような巨大ロボットが描かれる

ノスタルジックな世界観を持つ2Dアクション

ゲームは見下ろし型のアクションゲームで、プレイヤーは近接戦闘・遠距離射撃・高速移動が可能な「青い肌の放浪者」だ。東西南北に広がる4つのエリアを探索し、モジュールを見つけ出してエリアを開放させつつ、ボス敵に挑んでいくのが主な流れ。銃器の残弾が乏しい一方で、敵を斬撃すると充填されるため、遠距離から射撃して敵の体力を奪い、高速移動で一気に間合いを詰めて斬撃。そこから瞬時に離れて銃弾をたたき込むという、ヒット&アウェイ型のゲーム展開が中心となる。

世界は中間色が多用され、コントラストが浅めの色彩で彩られており、粗めのピクセルと相まって、荒廃しつつもノスタルジックな世界観を醸し出している。ゲーム中にテキストが表示されず、会話シーンが存在しない反面、特定のキャラクターに話しかけると、紙芝居のようなビジュアルが表示され、世界観や主人公の存在意義が暗示される点も特徴だ。もっとも、すべてを語ることなくゲームが終了するため、食い足りなさを覚えたゲーマーなら二度三度と遊びたくなるだろう。

何度もコンティニューを繰り返しながら攻略していく正統派の作りだ

均質な物語体験を「提示する」呪縛からの脱却

このように本作は一見すると、すべてのプレイヤーに完璧な物語体験を提供することを、最初から放棄しているように見える。しかし、それは後退ではなく、プレイヤーを趣味嗜好に応じて分類し、それぞれに適切な物語体験を提供しようとする、デザイン面での挑戦だと考えられるだろう。ここで便宜的にプレイヤーを「アクションゲームが得意/苦手」「世界観や物語に興味がある/興味が乏しい」という二軸で分けると、合計4種類に分類できる。各層にはどのような施策が有効だろうか。

  • a)アクションが得意で世界観や物語に興味がある
  • b)アクションが苦手で世界観や物語に興味が乏しい
  • c)アクションが得意で世界観や物語に興味が乏しい
  • d)アクションが苦手で世界観や物語に興味がある

aグループはガチゲーマーだ。ゲームの隅々まで遊び尽くし、入手した情報をウェブで共有して、隠された謎を解き明かそうとするだろう。実際、本作はそれに耐えうるように、あえて情報が断片化され、適当に欠落させた上で、フィールドに散りばめられている。逆にbグループにはゲームの達成感を楽しめるように、最低限のルートでクリアできるようになっている。レベルデザインも良好で、できるだけ多くのプレイヤーをゴールまで導こうとする姿勢が感じられる。

cグループは純粋にアクションゲームを楽しみたい層で、やり込み要素で対応すれば良い。ではdグループに対してはどうか。ここで作り手側は「aグループが作成した攻略サイトなどを見て、自分なりの想像を膨らませて欲しい」と投げ出した(ように見える)。そうした行為も含めてゲームの物語体験なのだと。インディーゲームの多くがインターネットのレビューや口コミで広がる中、こうした手法は確かに有効だろう。実際に日本でも熱心な考察サイトがあり、人気を支える一助になっている。

1990年代のPCゲームを彷彿とさせるピクセルアート

ゲームの難易度を段階的に設計する一方で、迂回ルートややり込み要素を設定し、さまざまなスキルのプレイヤーに対応する。「間口が広く、奥深いゲーム」を作る上で基本となる考え方だ。しかしストーリー面では長く、すべてのプレイヤーに「均質な物語体験」を提供しようとする試みが続けられてきた。その呪縛から脱却することで、ゲームならではの物語体験が提示できる……。近年のナラティブゲームには、そうした思想が見え隠れする。今後もインディーゲームならではの自由なアイディアが期待される。

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■関連リンク
Heart Machine
http://www.heart-machine.com/
Steam『Hyper Light Drifter』のページ
http://store.steampowered.com/app/257850/?l=japanese
kengo700のナレッジベース「『Hyper Light Drifter』の攻略情報とストーリー考察の翻訳」
http://kengo700.hatenablog.com/entry/2017/01/07/070000
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー