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『OPUS: The Day We Found Earth』真のゲーム体験を提供するのは誰か【インディーゲームレビュー 第3回】

 

その台詞回しは「生きて」いるか?

「ネームを……変える。(中略)もっと自分の身を絞って出す一滴の……血のような………痛々しいくらいの肉声が出せないのか、いつもそう思っていたんだ。」
「…お言葉ですが……マンボ先生が後で見て、あの……クレームとかどうゆう……なんかそのご立腹あそばすとか…」
「もちろん承知の上だ。いいんだよ、やらせろ! マンガは作家だけのもんじゃねえよ。」
引用元:『編集王(1)』土田世紀(小学館)

『OPUS: The Day We Found Earth』(以下OPUS)をプレイして思い出したのが、漫画『編集王(1)』のこのシーンだ。主人公のカンパチは漫画雑誌の編集アルバイトで、業界の大御所、マンボ好塚の原稿にダメ出しする。その心意気に感じたマネージャーの仙台は、生原稿に書かれた台詞を自分流に書き直す。完成した原稿は絵やストーリーは同じでも、格段にクオリティがアップしていた……というわけだ。OPUSも同様で、良質なローカライズ版になったことで、日本でも高評価を受けることになった。

ゲームの舞台は人類が宇宙に進出して100万年が経過し、種としての限界に直面しつつある未来世界。プレイヤーは小型ロボットOP1414-エムとなり、汎用第三型人工知能-リサのサポートを受けつつ、今や神話となった「地球」探しを進めていく。ストーリーモードは宇宙船の望遠鏡を操作して惑星を探索するシーンと、ストーリーを進めるイベントシーンの繰り返しで進行し、90~120分程度で終了する。

もっとも、プレイ時間が短いからつまらないわけではない。評価は逆で、クリア後はさながらレイ・ブラッドベリの短編SF小説を読了した気分になれるだろう。モニターに広がる宇宙空間は美しく、惑星解析のアニメーションと合わさって、平板になりがちな探索シーンに心地よいリズム感を刻んでいる。絵本の1シーンを思わせる宇宙船内のグラフィックや、キャラクターの豊かなアニメーションもノスタルジックで心地良い。環境音楽的なサウンドも良質だ。

ゲームは望遠鏡での惑星探しと、船内のイベントシーンの繰り返しで進行する

豊かなアニメーションと台詞がキャラクターに命を吹き込む

翻訳の善し悪しでゲーム体験は大きく変化する

もっとも、リリース直後の評価は日本では低かった。台湾のインディーゲーム開発者の作品だが、日本語翻訳のクオリティが低かったからだ。キーパーソンとなったのが、翻訳監修を担当した島崎諒氏の存在。台湾在住の日本語教師で、たまたま開発チームの一人が生徒だったことから、本作をプレイする機会に恵まれた。これが契機で日本語版の監修に携わることになったという。その結果、本作は「生まれ変わった」のだ。

島崎氏いわく「オリジナル版は話し方の統一がされていなかった。使用語彙も全体的に漢語が多く、やや固い印象を受けた」という。日本語は「わたし」「オレ」「僕」「拙者」・・・と、一人称名詞だけで数多くの種類があり、話し手によって変化する。しかし、英語ではすべて「I」、中国語も「我(wo)」だ。オノマトペ(擬音語・擬態語)が豊かな点も特徴で、これらが全体となって文章に意味をもたらす。その結果、最初から翻訳をやり直すことになったという。

ヒントを参考にしながら惑星を探していく

ストーリーはほぼ一直線で進行し、豊富なヒントでスムーズに進められる

クオリティが低いとはいえ、事前に日本語版で一通りゲームをプレイできていた点も幸運だった。ゲームのシナリオは小説や映画と異なり、時系列に沿って執筆できない。翻訳者にもエクセルデータで渡されることが一般的だ。一方、同じ台詞でも話し手が男性か女性か、はたまた人間かロボットかで、日本語では書き分けが必要になる。そのため、事前にゲームを遊んでいるか否かで、作業効率が大きく変化することは想像に難くないだろう。

ゲームシナリオは漫画のように台詞の連続で構成され、小説の「地の文」や映画のト書きが存在しない。そのため、台詞の持つ力がゲームのプレイ体験に大きく影響する。開発チームは本作の開発にあたり、ゲームメカニクスと物語体験の融合をテーマに掲げ、シナリオを4回も書き直したという。その努力がローカライズによって海外、すなわち日本のユーザーにしっかりと伝わった。それを支えたのが人と人とのつながりであり、それは本作にとって、非常に幸運なことだと思うのだ。

■関連リンク
SIGONO(TEAM SIGNAL)
http://www.sigono.com/
『OPUS: The Day We Found Earth』
http://opus.sigono.com/
SENCE OF WONDER NIGHT 2016 クリエイターメッセージ
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【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー